素晴らしき日本の景色たち

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鍬柄岳登山|群馬県富岡市の秘峰!丸ごと岩山の鎖場天国、鍬柄岳(石尊山)とは?

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4月のある日、群馬県富岡市に位置する鍬柄岳(くわがらだけ)に登りました。

富岡市と言えばやはり世界遺産の富岡製糸場が有名でしょうか。

世界遺産に登録されてから毎年多くの観光客で賑わっていると思います。(以前訪れたとき、閉館間際にも関わらず多くの観光客が見られました。)

富岡市は平地の割合が多く、登れる山はごく一部であり、観光スポットもほとんどが平地に占めています。

鍬柄岳は数少ない富岡市の山の一つで、山頂からは360度の大パノラマが楽しめ、途中には連続100mの鎖場が続くスリル満点の知る人ぞ知る隠れ名山です。

今回はそんな謎に満ちた鍬柄岳を紹介したいと思います。

鍬柄岳の場所、アクセス

下仁田インターからの場合は、インターを降り南蛇井駅方面へ向かい、南蛇井駅の踏み切りを越え最初の信号を左に曲がり川沿いの道を走ります。 しばらく走るとT字にあたるのでそこを左に曲がれば(下の写真を参考に)鍬柄岳登山口と駐車場が見えてきます。

電車の場合は最寄りの駅は千平駅になり、歩いて20分くらいで鍬柄岳登山口に到着します。

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大桁山に行く場合は右ですが、鍬柄岳に行きたい場合は左に曲がって下さい。

正面の案内標識の左は千平駅と記されていますが、そちらで合っています。

駐車場

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地図上では3台しか停めれれないようですが、うまくいけばもっと停められそうな駐車場です。

鍬柄岳とは?

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鍬柄岳は石尊山(せきそんやま)とも呼ばれています。

この石尊とは読んで字の如く石を尊ぶとの事で、石を御神体として祀られた山を指し、石尊山の多くは山頂に巨岩を祀り信仰登山が行われていたそうです。

登山道の途中に鍬柄嶽阿夫利大神という神社がありますが、この阿夫利とは神奈川県の大山阿夫利神社のことです。

大山山頂には巨大な岩があり、そこに神が宿るとして石尊と名付けられ、明治以前は大山山頂には石尊大権現の名として鎮座されていました。

江戸時代には大山信仰を庶民に広めるべく、大山講を形成し御師たちが各地を巡り布教し、関東一円に信仰を広め、そしてここ群馬にも伝わったそうです。

鍬柄岳は見ての通り山全体が超巨大な石で形成された山で、御師たちはこの山こそ石尊大権現にふさわしい山だと感じたのではないでしょうか。

また、阿夫利とは雨降りとも捉えられ、大山は古くから雨乞いの神としての信仰もある事から、地元の農民は豊作の雨をこの鍬柄岳に願っていたのではないかと思われます。

鍬柄岳登山口~社殿

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登山道の入り口です。

入り口には注連縄が張られ、いかにも信仰の山である事が分かります。

気を引き締めて登りましょう。

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しばらくすると、杉並木の向こうに社殿が見えてきます。

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阿夫利大神と書かれているので、大山との関係がある山だと分かります。

この社を通して奥に聳える石尊大権現を拝んでいたと考えられます。

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中は広く正面に案が置かれているだけでした。

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社殿の中にはこんなものが…

中を拝見すると、登った日付や登山者の住所、感想が綴られていました。

氏子以外の方に来年度のご案内状を差し上げる参考にしたいとの事です。

下山後、私も感想を書きました。

社殿~鎖場入り口

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さて、ここから本格的な登山道へ差しかかります。

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いきなり急な坂道が現れます。

ここは焦らずゆっくり進みましょう。

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趣のある杉並木の登山道に差しかかります。

修験者たちは「ザンゲザンゲ!」と唱えながら一歩一歩登っていたのでしょうね。

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杉並木を抜けると程良い休憩スペースが現れます。

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ちょうどピンク色のアカヤシオが咲き誇っていました。

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アカヤシオはつつじの一種で、西上州では“ひとつばな”と呼ばれています。

四月中旬から五月の上旬が見頃です。

鍬柄岳の連続100m鎖場

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休息スペースからすぐに巨大な岩が見えてきます。

核心部に近づいてきた証拠です。

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ここからいよいよ連続100mの鎖場が始まります。

事前調査によると、難易度はさほど高くないとの事ですが、ナイフブリッジやトラバースの箇所があるそうなので、油断は出来ない鎖場だそうです。

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右側は断崖なので注意が必要ですが、難しい鎖ではないので、すんなり進めます。

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下を覗くとそれなりに高度感があります。

鎖場は登りの際は下を見ず上だけ見るように心がけた方が楽です。

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途中、ふと岩を眺めました。

とんでもない所を登っているのだなと実感がわいてきます。

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山頂に近づいても鎖場は止まりません。

徐々に道も細くなってくるので、細心の注意を払いながら慎重に進みましょう。

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恐らくここが一番の難所であろう、トラバース!

左側は崖なので落ちないように、しっかり鎖を握って進みましょう。

鍬柄岳山頂

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598mの低山とは思えないスリル満点の鎖場を越えると山頂に到着します。

山頂には石祠があり、先ほどの神社の奥の院として鎮座されています。

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長い竹も立てられています。

恐らく例祭の日に幟を揚げるための竹だと思われます。

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鍬柄岳と書かれた標識が添えられているこの石祠の正面には右から石尊大権現と薄く書かれています。(拡大すると分かると思います)

厳しい岩場を乗り越え、素晴らし景色を仰ぎながら石尊大権現にお会いしたんですね。

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大山の山頂には石尊大権現の他、大天狗と小天狗が祀られていたそうで、

鍬柄岳も同じように祀られていたと考えると、この祠も恐らく大天狗、小天狗だと思われます。

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山頂からは西上州を代表とする山々を眺める事ができます。

こぶが二つの鹿岳がよく見えます。

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山に囲まれた下仁田町も見えます。

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東方面は富岡市の町が広がります。

この日は晴れでしたが、春特有のもやがかかっていたので景色は微妙でした。

空気が澄んでいればもっと良い景色を楽しめます。

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お隣には大桁山が聳えています。

群馬百名山に選ばれており、妙義山や榛名山が良く見える山だそうです。

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ふと下を見れば断崖であることが分かります。

一歩間違えれば一気に下まで落っこちかねないので、山頂を散策する際には注意が必要です。

周辺のおすすめスポット

南蛇井駅

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南蛇井駅(なんじゃいえき)は上信電鉄の下仁田駅から二つ目の駅です。

駅周辺はのどかな山村が広がり、日本の原風景を感じることが出来ます。

withnews.jp

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駅のすぐ隣に観光マップがありますので、周辺の観光の役に立つと思います。

最興寺

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南蛇井駅から歩いてすぐに最興寺という寺院があります。

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この山門は文久三年(1863)の建築と記され、破損個所も少なく貴重なため、富岡市の指定重要文化財に選ばれています。

桜の満開の頃にはご覧の通り見事な光景を目の当たりにする事が出来ます。

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道の駅しもにた

鍬柄岳は富岡市の山ですが、最寄りのインターは下仁田です。

道の駅しもにたは、平成30年1月にリニューアルオープンし、群馬の特産品が多数販売され食事のメニューも豊富です。

観光の帰りにお土産をお買い求めの方には是非立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

下仁田町ホームページ : 道の駅しもにた

下仁田温泉

一番近くておすすめの温泉はやはりここ、下仁田温泉清流荘です。

ひっそりとした山奥に位置する温泉で、特に露天風呂は素晴らしいです。

www.narisuba.com

最後に

鍬柄岳は群馬百名山に選ばれておらず、更に読み方も難しくほとんど知られていない山ですが、山頂からは富岡市や下仁田町、西上州の山々が一望でき、低山とは思えないほどの高度感や鎖場のスリルを味わえ、登りがいのある山だと思います。

また、山全体が岩で形成され登頂に不安を煽る山容ですが、数少ない権現という神仏習合の面影を残し、低山ながら日本の伝統精神に触れる事の出来る貴重な山でもあります。

神奈川の大山から石尊信仰が伝わり、今もなお農村の人々から石尊様と親しまれ、門番の如く山村を見守り続ける鍬柄岳に登ってみてはいかがでしょうか。