素晴らしき日本の景色たち

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恐山観光|地獄と極楽が共存する日本三大霊場の一つ、恐山とは?

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7月26、27日は東北地方へ旅に出ました。

向かった先は日本三大霊山の一つである恐山と波の浸食により神秘的な奇景群で知られる仏ヶ浦を見学し、翌日は吾妻連峰の”魔女の瞳”で有名な一切経山を登りました。

両日天候に恵まれ素晴らしい景色を堪能する事ができ、有意義な二日間を過ごす事が出来ました。

それではまず、本州の果ての霊場恐山を紹介したいと思います。

 恐山のアクセス、駐車場

 

国道279号はまなすラインを北上し国道4号を恐山方面へ向かい、しばらく山道を走ると宇曽利山湖が見え、三途の川を越えると恐山菩提寺の駐車場に到着します。

駐車場

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かなり広めで満車になる事はなさそうです。

反対側にも駐車場はあり、そちらはバス専用だと思います。

恐山とは?

恐山は比叡山、高野山と並び日本三大霊山と呼ばれ、本州最北の修験道の地とされています。

美しい宇曽利山湖を中心とした八峰の総称を恐山とされ、火山ガスにより硫黄臭漂う荒涼とした岩場を地獄と、コバルトブルーのカルデラ湖と綺麗な砂浜を極楽とそれぞれ見なされ、地獄と極楽が一体となった、まさに死後の世界そのものを表したのが恐山の特徴です。

恐山の開山

恐山は平安時代初期に慈覚大師円仁によって開山され、中世までは天台宗の蓮華寺が恐山を管理していましたが、

やがて曹洞宗の円通寺との間で支配権争いが勃発し、敗れた蓮華寺は衰退し今現在まで曹洞宗の円通寺が恐山を管理しています。

恐山といえばイタコ

恐山と聞くとやはりイタコを思い浮かべる事が多いと思います。

イタコとは死者の霊を自らの体に死者を憑依させ、死者の思いや伝えたい事を生者に伝える霊媒を行う宗教者であり巫女でもあります。

ここで巫女と出ましたが、巫女とは本来神がかりして神霊の意を確かめ託宣する、呪術的能力を有する宗教者であり、現在は神社で神職の補助的な存在となっています。

つまり、イタコは巫女本来の意味を果たしている貴重な存在であることが分かります。

また、このイタコの口寄せは恐山の大祭(7月20日~24日)に境内周辺に行われ、全国から多くの方が死者の声を聞こうと境内は賑わっているそうです。

広々とした境内 総門~本尊安置地蔵殿

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総門の横には大きな六大地蔵が祀られています。

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ここで入山料を払い総門を潜りいよいよ境内に入ります。

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本殿安置地蔵殿へ続く長い参道。

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立派な山門

霊場恐山と記されています。

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参道と燈籠の間を見てみると硫黄を含む川が流れています。

ここからも硫黄臭が漂い、火山の中にいるという自覚が湧いてきます。

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参道の両脇には永代常夜燈が立ち並んでいます。

地蔵堂まで続き、迷える死者の魂を導くかのように連なっています。

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無漏館

誰でも自由に休憩出来るとの事です。

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中は広々として寛げそうですね。

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山門を越えすぐ右には薬師の湯という温泉が湧いています。

入山料を払えば誰でも入る事のできる温泉です。

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男女別に分かれており、入ってすぐに脱衣所、奥に湯船があります。

タオルは貸出していませんので、入られる方はタオルを持参しましょう。

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色鮮やかな温泉

霊山で温泉に入るのも何だか新鮮な気分を味わえます。

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恐山の中心となる地蔵殿

本尊の地蔵菩薩は慈覚円仁が自ら彫って作られたそうです。

本尊が地蔵菩薩ということで下北半島は地蔵信仰が盛んな地域である事が分かります。

地蔵菩薩は釈迦入滅後、弥勒菩薩の出現まで全ての人を救う存在として広がり、死者の集まるこの恐山において、地獄の苦しみを救ってくださる地蔵菩薩は多くの人の信仰の対象になったに違いありません。

地獄と極楽の世界を体験できる霊場巡り

入り口~大師堂

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さて、地蔵殿の左に進むといよいよ地獄と極楽の一体となった霊場が現れるので入ってみましょう。

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入り口から大師堂までは荒涼とした地獄や供養のための慰霊碑や塔が建てられています。

そして相変わらず岩からはガスが噴き出しています。

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大師堂

開山の慈覚大師が祀られています。

賽の河原の意味

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途中、石が積み重なった賽の河原に到着します。

賽の河原は幼くして亡くなられた子供の霊が石を積んで塔を作り、布施行を行う場所と言われています。

幼くして亡くなった子供たちは善行をする事無くあの世へ向かうので、この河原で石を積み塔を作らされるそうです。

仏教において幼くして亡くなるというのは親を悲しませ、何より子孫を残せないという最大の罪を犯した事により、賽の河原で苦しむ事になってしまいます。

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そこでこの苦しみを救って下さるのがお地蔵様です。

身近な存在であるお地蔵様は人間界だけでなく、地獄で苦しむ者を救ってくださる存在とされ、子供たちも救ってくれる意味があるそうです。

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なので、賽の河原周辺にはお地蔵様が多数祀られています。

様々な形で供養される霊場

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様々な形で亡くなられた人たちの為に祀られた仏様やお地蔵様が見られます。

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奥に何やら白いタオルのような物が掛けられています。

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同時にわらじも置かれています。

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これらは風車と同様に供養のための品々で亡くなられた方に思いを込めて掛けたり置いたりされています。

お地蔵さまにも多く掛けられていました。

心の洗濯 極楽への旅

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ここからは極楽の旅へ向かいます。

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様々な地獄や石仏を抜けると、目の前には綺麗なカルデラの宇曽利山湖に到着します。

綺麗な三角の形をした大尽山が聳え、その周りに穏やかな山が連なっています。

先ほどの恐ろしい光景と打って変わって心が洗われる様な場所です。

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ベンチもあるのでゆっくり眺めるのも良いですね。

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極楽浜には震災慰霊塔が建てられています。

自然災害により亡くなられた人たちが無事に極楽浄土へ向かえるように建てられた塔だと思います。

後ろに聳える穏やかな山並みと色鮮やかな湖が魂を慰めているように感じます。

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極楽浜は美しく綺麗なのにどこか寂しさを感じてしまう不思議な場所です。

重い地獄再び

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極楽浜を越え、ここから先は重い地獄巡りに差し掛かります。

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胎内くぐり

胎内くぐりとは修験者や行者が行う修行の一つで、犯してしまった罪を祓い、純粋な心を持った自分に生まれ変わる事を目的とされています。

この地獄の入口に胎内くぐりがあるという事は犯してしまった事を懺悔し、次に生まれてくる時は心の綺麗な人であってほしいという意味が込められているのではないかと感じました。

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霊場の一番高い所には延命地蔵が祀られています。

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本尊が安置されている地蔵殿の方を向き、全ての魂を見守っているように見えます。

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地獄と極楽巡りを終え後ろを振り返ると、大尽山が大きく聳えこちらを見ていました。

食事処及びお土産屋

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受付の左にはお土産屋と食事処がございます。

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恐山に来たら是非食べて欲しいのがこれ、霊場アイス

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バニラ、ヨモギ、ブルーベリーの三種類あり、私は欲張って3種類のミックスをいただきました。

味は薄めですが、ヨモギはしっかりと味が効いていて、後味もすっきり!

不思議と体がヒヤっと涼しく感じました。

恐山周辺のおすすめスポット

三途の川

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三途の川は境内ではなく、恐山の少し手前にあります。

三途の川を渡った先に地獄と極楽浜がある事から、これを渡ればあの世という意味です。

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現在は橋を渡れない状態でした。

修復中でしょうか?

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境内に入らなくても十分な景色を堪能出来ます。

恐山冷水

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国道4号沿い(恐山へ向かう場合は左手に)には恐山冷水という湧水があります。

1杯飲めば10年、2杯飲めば20年、3杯飲めば死ぬまで若返るという有難いお水で、不老不死の意味が込められているそうです。

恐山展望台

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国道4号から途中、展望台の案内があったので行ってみました。

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しばらくすると展望台に到着します。

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先ほど訪れた恐山の宇曽利山湖全体を見渡せます。

仏ヶ浦

恐山から決して近いとは言えませんが、時間に余裕のある方には是非訪れて欲しいのが仏ヶ浦。

長い年月により波で浸食された海岸にたたずむ奇景群は誰でも感動するに違いありませんので、行かれる事をおすすめします。

www.narisuba.com

最後に

恐山は硫黄臭漂う不気味な岩場と宇曽利山湖の美しい光景を死後の世界である地獄と極楽で表現し、死者の魂が集まる霊場とされています。

地獄や極楽の世界とはいえ、多くの方がこの場で死者に思いを馳せている光景は日本人本来の祖先崇拝が今も受け継がれている霊場だと感じる事が出来ました。

人が死ねばお山に行くという素朴な信仰からこの地方一帯は生と死との境界線がほとんど無く、死も身近な存在である事がよく分かりました。

是非自然が生んだ地獄と極楽の世界に足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。