8月15日は群馬県最大の火祭りである”火とぼし”を見学しに群馬県の南牧村を訪れました。
火とぼしは午後6時から開催されるお祭りなので、午前中は周辺の登山を楽しみ温泉に入った後会場へ向かいました。
そもそも南牧村とは群馬県の南西部に位置し、1000m前後の山々に囲まれ、美しい自然と共に在る山村です。
しかし近年人口の減少が著しく高齢化率日本一の自治体として、更に消滅する可能性が最も高い村とも言われています。
そんな中、年に一度の南牧村最大の祭りである火とぼしは毎年開催され、村人たちが一丸となって行われる伝統行事は感動ものです。
今回は15日に行われた火とぼしの様子をお伝えしたいと思います。
火とぼしってどんな祭り?
火とぼしは毎年8月14日、15日に行われる県内最大の火祭りです。
その由来は戦国時代、領主の小幡氏に苦しめられていた村民は上州に攻めて来た甲斐の武田勢を支援したことにより、領主を見事に打ち破る事に成功し、その勝利の喜びを火祭りの形で伝えた事からきているそうです。
近年は8月14日、15日に行われる事からお盆の先祖供養として行われるお祭りに変化し、14日が向かえ火、15日が送り火としての火祭りになっています。
かつては開始と同時に近くの山に大松明を子供が担ぎ、大松明に火を着けたら下山し、その火を振りまわす用の松明に火を移して、橋の上から振りまわす手順で行っていましたが、近年では子供も減少した為にここまでは行わず、橋の上でそのまま火を着けて振りまわしています。
また、現在は大日向地区のみ行われていますが、昔は村のいくつかの集落でも行われており、村全体で行う先祖供養のお祭りだったそうです。
参考:南牧村ホームページ
火とぼしの開催場所
現在は大日向地区のみで開催されています。
大日向は南牧村の中央よりやや東に位置する地区で、
火とぼしは安養寺の目の前にかかる橋で行われています。
車で来られた方は駐車場へ
村と言っても歩いて来るには遠い人もいるので、車で来られた人は南牧村活性化センターが当日の臨時駐車場となり、村人及びよその人が車で来られる際はここに駐車し、そこから無料のシャトルバスで現場に送られます。
当日はこのような看板が立っていますので、案内に従って活性化センターまで行きます。
駐車場は広く、恐らく満車になる事はないと思います。
その後、センターの中で受付(名前を聞かれるだけです)を済ませ、シャトルバスで現場へ向かう流れです。
このようなシャトルバスが何台も出ていますので、現場まで歩く必要はないです。
火とぼし開催前の準備と様子
開始は午後6時ですが村人に聞いたところ、場所取りで早く行かれる方が多いとの事で
私も慌てて現場へ向かいました。
実際に使用される麦藁が準備されています。
火とぼしの準備は7月から行われ、使用する麦藁は各戸で調達していましたが、農家が少なくなり、20年前からお隣の富山市から藁を購入されているそうです。
1時間以上前ですが、良い写真を撮ろうと場所取りに来られる方もいました。
私もカメラの準備完了です。
が、まだまだ時間があったので風景写真を撮って過ごしました。
安養寺の前にはこのようなテントが立てられ、
南牧村で作られたお菓子や軽食類も多数販売されています。
地元の中学生たちも一丸となってこのお祭りのお手伝いをされていました。
地元の人が作ったものでしょうか?
火とぼしのイラストが描かれたイラストやグッツもあります。
橋の上
この橋から火の付いた麦藁を振りまわし、綺麗な輪が描かれるのでしょうね。
それにしても開催が待ち遠しいです。
いよいよ火とぼしのお祭り開始
午後6時を向かえ、いよいよ火とぼしが始まりました。
まだ明るいですがみなさん、「待ってました~」と言わんばかりに橋を見つめていました。
基本このように3人同時に並び、麦藁が燃え尽きるまで円を描き続けます。
また、お祭りの最中は音楽が流れ続けていました。
おや?
橋の下にも何か燃えていますね。
なんと!
下でも火の付いた麦藁を振りまわしていました。
と同時に見物者も一斉に注目しています。
南牧村の元気なおじいちゃんも勢いよく振りまわしています。
そして、女の子も…
パワフルに振りまわしています!
この勇敢な姿に大きな拍手が送られていました。
橋の上と下で同時に振りまわされ、益々盛り上がりが見られました。
辺りも暗くなり、いよいよ火祭りも本番に突入します。
最後は多くの人たちで振りまわし、素晴らしい光景を目の当たりにする事が出来ます。
火とぼしのクライマックス、オネリとは?
火とぼしは約1時間程で終了となりますが、
橋の奥の方で何やら太鼓や笛の音が聞こえたので行ってみました。
行ってみると、灯籠を持った子供たちを先頭に列を組み安養寺へ入って行きました。
これはオネリといい、今日では15日のみ行われる行事です。
境内に入ると灯籠を持った子供たちと太鼓をたたく人たちがぐるぐると境内の中を周っていました。
子供を先頭に列を組み、安養寺の境内を3回まわり、先祖をあの世へ送り出す念仏を皆で唱え2日間の火とぼしは無事終了となるそうです。
火とぼしはお盆の迎え火と送り火の機能を果たしたお祭りである事がここでようやく理解出来ると思います。
交互に叩きながら、念仏を唱える様子。
この日は天気が不安定でいつ雨が降ってもおかしくない状況でしたが、
火祭りの際は雨に降られず、最後の念仏を唱える時だけ、サァーっと雨が降りました。
きっと南牧村のご先祖様たちも今を生きる村人たちと一緒にこの火とぼしを見たかったのではないかと心の中で感じました。
お寺の前には灯籠が置かれています。
子供たちが作ったのでしょうか?
どれも手作りでした。
最後に
かつて多くの人で賑わっていた南牧村も近年は過疎化が進み、村人も2000人を切る事態となり、この火祭りも今では1箇所のみと小規模になってしまいましたが、少ない人数ながら祭りの準備に取り掛かる姿や、橋の上から大きな円を描く村人の姿は、消滅する可能性のある村という悲しい現実を払拭するような力強さと、村人たちの思いが込められた大切なお祭りであると心に感じました。
私は初めてこの火祭りに参加しましたが、夕闇に浮かぶ大輪の火はとても幻想的で、いつまでも見続けたい気持ちと感動で満ち溢れ、末永くこの素晴らしい大自然の中で大輪の火を灯し続けられることを願うばかりでありました。
この火祭りは毎年8月14日、15日の2日間行われているので、南牧村の自然や伝統に触れてみたい人は是非、村人たちが大輪の火を振りまわす勇敢な姿を目に焼き付けてみてはいかがでしょうか。