素晴らしき日本の景色たち

主に日本全国の山や景勝地、観光スポットを紹介します

岩木山神社|岩木山の歴史と信仰及び岩木山神社の様子をお伝えします

f:id:nobuburi:20181130174521j:plain

岩木山は古来よりお岩木山、お岩木様と呼ばれ、津軽平野の中に一際美しい裾を広げるその姿は山そのものを御神体と仰ぎ、農海産物の守護神や祖霊の鎮まる山と信じられ、人々に恵みや慈しみを与え続けてきた山です。

山頂に社殿が創建されてから今に至るまで1200年以上の歴史を誇り、素朴な自然崇拝や祖霊の鎮まる山として、更に修験の山として歴史を歩んできた山でもあります。

今回は古来より人々に親しまれてきた岩木山の信仰や神社についてお話したいと思います。

岩木山神社のアクセス

 

東北道大鰐弘前インターから車で約40分、バスの場合は弘前駅より弘南バスで約40分

バスの情報は弘南バス株式会社よりご参考下さい。

岩木山の三つの峰

f:id:nobuburi:20181130180743j:plain

岩木山は津軽富士とも呼ばれ、富士山のようになだらかな裾を伸ばして優美な姿をしていますが、山頂付近を眺めると三つのピークから成り立っている事がわかると思います。

現在は落ち着いた山となっていますが、江戸時代までは火山活動が行われていた山として記録され、鳥海山の火口や巌鬼山の荒々しい姿から火山である事を物語っています。

岩木山の山頂は中央に岩木山、南に鳥海山、北に巌鬼山から成り立っています。

山頂が三つの峰を形成するために、神仏習合時代には熊野信仰の伝播により、熊野三所権現にちなんで中央の岩木山の本地仏を阿弥陀如来、鳥海山の本地仏を薬師如来、巌鬼山の本地仏を十一面観音とされ、三つの峰を岩木山三所権現とし、岩木修験の霊場として発展されたそうです。

様々な伝承を持つ岩木山

岩木山の伝説の中で最も有名なのが山椒太夫の「安寿と厨子王」の物語です。

大まかな内容は…

筑紫国へ流されてしまった父を追うために、母と共に京へ向かう途中、安寿姫は丹後由良の山椒太夫に買われ奴隷として酷使されてしまい、弟の厨子王を逃がし自分はとどまったが、ついに安寿姫は殺されてしまい、やがて安寿姫の霊は岩木山に登り岩木山の神となった。

一方弟の厨子王は都に逃げ、寺僧に助けられ、讒言によって一族が貶められた事を朝廷に話し誤解が認められ再び奥州五十六郡の太守として復活し、無事に岩城一族の復興を果たした。

やがて厨子王は丹後・越後・佐渡の領主となり、姉である安寿姫を死に至らした山椒太夫を処刑した。

このような伝説より安寿姫を殺した山椒太夫は丹後の人である事から、丹後の者が津軽へ入ると、安寿姫の怨念のためか悪天候が続き、この現象を「丹後日和」と言われたそうで、実際に江戸時代には悪天候になると、丹後の者が入ってきてはいないか調査があったそうです。

いずれにしても、丹後出身の人にとって岩木山は登りづらい山という事になります…

その他にも顕國魂神(大国主命)が岩木山に降臨し竜女の国安珠姫と結婚し、姫は岩木山の神になった伝説などもあります。

これらの伝承のように、岩木山は女神と考えられていますが、元々岩木山は人々に水や食料など、生きていく上で必要な糧を与えてくれる恵みの根源として崇められ、つまり、万物を生み出す事から岩木山は女神として考えられ、伝説で語られた神も女神として語られたのではないかと思われます。

岩木山神社の成り立ち

f:id:nobuburi:20181130183918j:plain

岩木山神社の創建は780年に山頂に社殿を設けられ、その後坂上田村麻呂によって社殿を再建し、岩木山北麓に下居宮を建て、後の神託により現在の岩木山神社の位置に下居宮を遷したと伝えられています。

明治以前は神仏習合により、下居宮は独立で建てられたのではなく、別当寺である百沢寺と共に営まれていました。

その後神仏分離令により百沢寺は廃寺となり、下居宮は岩木山神社と改称され現在は岩木山神社の境内地として鎮座されています。

岩木山神社の境内

長い参道

f:id:nobuburi:20181130183358j:plain

正面の鳥居を含めて鳥居は三基あります。

奥を見上げると岩木山の山頂部がよく見えます。

楼門

f:id:nobuburi:20181130214746j:plain

明治以前は百沢寺の山門として構え、かつては仏像が安置されていたそうです。

f:id:nobuburi:20181130214922j:plain

現在は楼門に変えられ、重要文化財に指定されています。

中門・拝殿

f:id:nobuburi:20181130215205j:plain

拝殿、本殿の入口となる中門

極彩色の彫刻が立派な門構えです。

f:id:nobuburi:20181130215459j:plain

楼門と同様、大きな拝殿です。

神仏習合時代は大堂として機能し、三仏(阿弥陀、薬師、観音)が安置されていたそうです。

f:id:nobuburi:20181130215707j:plain

注連縄の上をよく見ると、御幣のついた米俵が取り付けられています。

古くから農耕神として信仰されていた為でしょうか?

本殿

f:id:nobuburi:20181130215831j:plain

日光東照宮のような色鮮やかに装飾されています。

行きそびれましたが、拝殿の横を通って本殿前まで行けるそうです。

岩木山神社の不思議な狛犬

f:id:nobuburi:20181130220219j:plain

f:id:nobuburi:20181130220253j:plain

狛犬は神社の入口に置かれ、左右二匹で一対とし、阿吽の口で表現されているその姿は神域を護る結界の役割を果たしています。

ところが、一般的な狛犬と違い岩木山の狛犬はご覧の通り不思議な格好をしています。

まるで這いつくばっているように見える狛犬ですが、口元はどうやら一般的な狛犬と同じようです。

なぜこのような形で作られたのかは分かりませんが、岩木山は山岳信仰の山として、多くの人々が山に登り祈りを捧げ、そして山を下っていた事から狛犬にも山を登り、山を下るという行為を表現したのではないかと、想像ですがそのように考えてしまいます。

末社白雲神社

f:id:nobuburi:20181130220935j:plain

本殿の横には末社の白雲神社が鎮座しています。

f:id:nobuburi:20181130221124j:plain

龍神様へのお供えでしょうか?

卵がお供えされています。

f:id:nobuburi:20181130221249j:plain

不思議な事に、白雲神社の池は白く濁っていました。

末社稲荷神社

f:id:nobuburi:20181130221443j:plain

お稲荷様も祀られています。

岩木山神社の奥宮

f:id:nobuburi:20181130231531j:plain

岩木山山頂には創建から今に至るまで社殿が設けられています。

f:id:nobuburi:20181201202928j:plain

岩木山は山そのものを神と仰ぐ神体山であり、神は天空より降臨すると考えられていた為に、奥宮は神を迎え入れる最も重要な社とされ、本来は素朴な自然神として豊作の願いや村の平穏無事を感謝するために設けられた社だと思われます。

f:id:nobuburi:20181201203352j:plain

奥宮の全体です。

かつてはここに三体の仏像が安置されていましたが、それは恐らく岩木三所権現だと思われます。

現在は御幣と御鏡と手前に狛犬が置かれ、神様のみを祀るお社となっています。

お社の前には多数のお供え物があり、今も篤く信仰されている様子が分かります。

f:id:nobuburi:20181201205351j:plain

山頂から津軽平野を見渡せば一面田圃や農場が広がる様子が分かると思います。

古来よりお岩木様と呼ばれ親しまれていたことから、麓の人々にとって岩木山は恵みをもたらす母親のような存在であったに違いありません。

f:id:nobuburi:20181201205849j:plain

北側を眺めると津軽半島及び日本海が見渡せます。

海からも岩木山の姿がはっきり見え、漁師たちは岩木山を目印に漁に励んでいたと思われます。

岩木山山頂からの絶景をご覧になりたい方はこちらの記事をどうぞ↓

www.narisuba.com

岩木山伝統の登拝、奥宮神賑祭

岩木山は毎年の旧八月朔日に五穀豊穣と家内安全の祈りと感謝をこめ、村落毎に団体を組み奥宮まで登拝する行事が古くから伝わっています。

各村で精進潔斎を済ませ御幣、幟等を携えて村を出発し、下居宮(岩木山神社)に集結して登拝安全祈願を受け、ご来光前に山頂を目指しながら集団で登拝する流れを三日かけて行われています。

この登拝はご来光の光を仰ぐ事により、神様によって生かされている事に感謝し、同時に五穀豊穣や各村の安泰を祈念する意味が込められています。

また、懺悔懺悔 六根懺悔(さいぎさいぎ どっこいさいぎ)と唱えながら登られる事から古来の素朴な自然崇拝と修験道の面影を兼ね備えた今に生きる伝統行事である事を分からせてくれるお祭りだと思われます。

最後に

岩木山神社は山頂に社殿が建てられた事から始まり、津軽富士である岩木山を御神体とし、自然崇拝を原点として歴史を歩んできた神社です。

神仏習合時代から受け継がれてきた楼門を始め、荘厳な社殿は北門鎮護に相応しい姿を醸し出しています。

また、山頂の奥宮からの景色は素晴らしく、まさに神が降り立つ山と感じる事が出来ます。

奥宮に行かれる際は麓の岩木山神社から登る事をおすすめしますが、今はスカイラインとリフトを使用すれば1時間未満で山頂に到着出来るので、気軽に山頂の奥宮を参拝する事が可能です。

ぜひ、秀麗な姿である岩木山の御神威に触れてみてはいかがでしょうか。