秋の深まる11月の初旬は本年最後の登山として、新潟県と山形県の県境に位置する、日本国という山を登りました。
山名が日本国という珍しさから興味が湧き、いつか登ろうと心の中で決め、ちょうど紅葉が綺麗であろうこの時期に訪れようと計画しましたが、どうしても今年に登らなければならない理由もあり、その理由は後述しようと思います。
当日は雨のち晴れという何とも微妙な天気でありましたが、秋の暖かな日差しに恵まれ、更に紅葉が素晴らしく、楽しいひと時を過ごせました。
今回は日本で唯一の国名が付けられた日本国の登山ルートや展望と麓の様子、更に登頂者のみに贈られるプレゼント等を紹介したいと思います。
- 日本国のアクセス、駐車場、トイレ情報
- 日本国とは
- 日本国に登ろうと思った理由
- 日本国の登山コース
- 小俣登山口~蛇逃峠
- 蛇逃峠~日本国山頂
- 日本国山頂の様子と景色
- 日本国山頂~蔵王堂口
- 明治以降の街並みを味わえる小俣集落
- 日本国登頂者のみに贈られる証明書を受けよう!
- 日本国トンネルで記念撮影を!
- 最後に
日本国のアクセス、駐車場、トイレ情報
車の場合
最寄りのインターは日本海東北自動車道最終の朝日まほろばIC
そこから国道7号を北へ海岸線沿いまで行き、岩崎という信号を右折(日本国の案内看板有り)し、そこから20分くらいで登山口に到着します。
インターから登山口まで50分~1時間くらいかかります。
また、山形方面からお越しの場合は、あつみ温泉ICが最短です。
住所(登山口休憩所):新潟県村上市小俣151-34
※ナビは上記の住所及び、個人的には日本国麓郵便局と入力するのがおすすめです。
電車の場合
電車の場合は、羽越本線府屋駅より勝木駅前発、雷行きバスに乗車し、約25分で日本国麓郵便局前に到着します。そこから歩いて3分くらいで登山口に到着します。
運賃は360円
府屋駅からのバスの時刻表は村上市のホームページをご覧ください。
【外部リンク】
駐車場
駐車場は登山口の目の前に位置し、無料で停められます。
奥の方にも停められ、約20台ほどの駐車スペースがあります。
トイレ情報
トイレは駐車場の横にある休憩舎の中に有ります。
男子、女子と一つずつ設置され、洋式(水洗)でペーパーも完備されています。
とても綺麗なトイレで、快適でした。
ちなみに、登山道及び山頂にトイレは無いので、登山前にここで済まされる事をおすすめします。
日本国とは
私たち日本人は自国を日本と呼んでいると思いますが、正式名称は「日本国」という名であります。
そんな日本の正式名称である「日本国」という名の山が新潟県村上市と山形県鶴岡市の境に聳え、登山好きの方もあまり知られていない、まさに知る人ぞ知る珍しい名の山であります。
また、標高は555mと5並びにちなみ、毎年5月5日に山開きイベントが行われています。
さてこの日本国というお山の由来ですが、様々な伝承があり、どれが正しいか定かではないそうです。
1つ目は、大和朝廷が東征の際、この付近の蝦夷を苦戦しながらも平定に成功し、ここまでが日本国であると宣言した説。
2つ目は、出羽三山の開祖である、崇峻天皇の皇子として生まれた蜂子皇子は、父の崇峻天皇が蘇我馬子により暗殺され、従兄である聖徳太子から出羽へ向かう事を進められ、出羽の途中に位置するこの山に登られた際に、「これより先は大和国」と言ったことから日本国と呼ばれるようになった説。
3つ目は、江戸時代後期に遠藤太郎次という狩りの名人が、この山で見事な鷹を捕え、当時の将軍である家治に献上したところ、将軍は大層喜ばれ、捕えられた山を日本国と名付けよと言われた説。
このように時代もばらばらで、どれが本当であるか分からない説ですが、いずれにせよ様々な由来や伝承が語られている事は地元の方々に親しまれている証拠であり、歴史とロマンが秘められた山である事は間違いないと思われます。
また、山名は「日本国」となっていますが、地元ではすり鉢を伏せたような山容から「石鉢山」とも呼ばれ、海からよく見える山なので地元の漁師たちはこの山を目印として漁に出ていた為に、純粋な山の神としても崇敬されていると思います。
日本国に登ろうと思った理由
日本国という珍しい山を知ったのは、”新潟県の山”という本を読んでいる時に発見し、低山ではありますがその珍しさに魅了され、いつか登ってみたいと思っていました。
話は突然変わりますが、日本人なら御承知の通り、本年は平成から令和へ元号が改められ、新帝陛下がご即位あそばされました。
5月1日に御即位を迎え、10月22日には皇位継承儀式の中で最も重要な儀式である即位礼正殿の儀が執り行われ、国内及び諸外国の代表が見守る中、新帝陛下は高御座に上がられ国内外に即位を高らかに宣言されました。
そして、11月14日、15日には御一代に一度の重儀である大嘗祭が大嘗宮にて斎行されます。
5月1日の皇位継承の儀式から令和の御大礼が続く中、私たち国民も一体となって新帝陛下の御即位のお祝いが行われており、今月は国民祭典や祝賀パレードが行われ、国民こぞってお祝いムードが漂っていました。
これらの儀式や祭典、祝賀パレードが11月に行われるので、私も個人的に何か出来る事はないのかと、考えに考えました。ご存知の方もいらっしゃると思いますが、陛下のご趣味は“登山”であり、登山歴も五十年を越える大ベテランなお方であります。
登山好きで山の歴史や信仰に関心のある天皇陛下という事で、ちょうど私も登山好きという共通点から、登山に関する事でお祝いしたいと思っており、日本国第126代天皇をお祝いする登山はこの歴史とロマンを秘めし山である「日本国」しかない!と瞬時に感じました。
そして、今回の登山は“天皇陛下御即位奉祝記念登山”と称し、日の丸旗が付いた富士山の金剛杖と共に日本国を登り、恐らく国内で唯一であろう、日本国の山頂で御即位の奉祝と皇室の繁栄及び日本の弥栄をお祈りしたいと思ったのが、日本国を登ろうと思ったきっかけです。
余談ですが、天皇陛下の誕生日は2月23日で、この日は富士山の日でもあり、富士山の金剛杖を持参したのも今回のポイントです。
日本国の登山コース
日本国は標高555mで、登山口は小俣口、蔵王堂口、中の俣口の3つのコースがあります。
今回登ったルートは、定番の小俣口から蔵王堂口に抜けるルートで、小俣口から山頂までは1時間半くらいかかるルートです。
小俣口からピストンで戻るのも良いですが、帰りに日本国登頂の証明書を受けたい方には蔵王堂口に抜ける事をおすすめします。
なぜなら、証明書の受付は小俣集落にあるので帰りがけに立ち寄る事ができ、更に明治以降の町並みも合わせて見学できるので、個人的には小俣口から蔵王堂口に抜ける周回コースを選択した方がよいかと思います。
ちなみに、中の俣口はH30の豪雨災害により登山道が通行止めになっています。
小俣登山口~蛇逃峠
駐車場の道路を挟んで向かいには注連縄が張られた日本国登山道入口という門が構えています。
いよいよここから登山が始まります。
と、その前に、地図にも記載されている登山口から日本国トンネル方面の道路沿いにラジウム清水という水飲み場があります。
うっかり水を汲み忘れた方はここで水をいただきましょう。
ちなみに、駐車場の横には休憩舎があり、中はいつでも利用可能なトイレと休憩スペースが設けてあります。
看板に「日本国を愛する会」と書いてありますが、これはそのまま我が国を愛する会に通じているように感じますね。
中はこんな感じです。
ある程度の人数が休憩できるスペースになっています。
また、中には日本国周辺の観光案内が書かれた紙が大量に置かれていたので、一枚いただきました。
周辺はさておき、登山へ参りましょう。
門を潜ると辺り一面は杉の木で覆われています。
登山道は綺麗に整備されているので、非常に歩きやすいです。
見事な杉林に魅了され、中々前に進めません。
11月に入ったにも関わらず、この日は寒いどころか非常に暖かく感じました。
まさに、小春日和です。
道路沿いにもありましたが、登山道にもラジウム清水というポイントがあります。
が、道路沿いと比べてほとんど水が出ていません…
たまたまなのでしょうか?
杉林を抜けても歩きやすい道が続きます。
登るにつれ、紅葉の色が綺麗になっていきます。
小春日和とはいえ、季節は着実に冬に向かっている事を感じますね。
登山道にはこのような数字が書かれたものが木に付けられています。
これは登山口から山頂までの道を27等分に分け、今どのあたりを登っている事が分かるように取り付けられたと思います。進むにつれて数字が増えていくのが確認出来ました。
これがあれば、残りどれくらいなのかおおよそ分かるので、非常にありがたいですね。
杉林の後はブナ林がお出迎え。
紅葉のトンネルを進んでいきます。
小俣口の登山道には途中、絶景ポイントがあります。
ここは沖見峠という場所で、ここからは日本海を一望できます。
山頂でも眺められますが、日本海の展望はこちらの方が良いと思います。
沖見峠から先は少し下り、再び登りになります。
写真は蛇逃峠手前の坂道で、ここの紅葉は特に綺麗でした。
しばらくすると東屋が見え、蛇逃峠に到着です。
蛇逃は「じゃのげ」と読み、その他にも「じゃんげ」と呼ばれることもあるそうです。
ここは蔵王堂口と小俣口との合流地点であり、ここからは同じルートを歩く事になります。
ここからの展望は素晴らしく、麓の小俣集落がよく見える場所でもあります。
北東方面に目を向けると…
真ん中奥に聳えるのは…月山でしょうか?
雪が若干降り積もっている様子が見え、方向や距離的にもたぶん月山だと思うのですが、自信は無いです。(スミマセン)
周辺は低山が連なり、紅葉とのコラボが素晴らしく、何枚も写真を撮ってしまいました。
ちなみに東屋ですが、何故か立ち入り禁止となっていて、トラロープが巻かれていました。
蛇逃峠~日本国山頂
さて、ここまで来たら山頂はもうすぐです。
緩い登りと下りを越え、10分くらいで山頂に到着します。
日本国山頂の様子と景色
登山口から約1時間で山頂に到着しました。
標準は1時間半なので、少し早目の登頂です。
そして富士山の金剛杖を持って登頂記念撮影(自撮り)
日本国の横に日の丸を掲げ、日本国の山頂で天皇陛下の御即位をお祝いしました。
山頂はご覧のように広々とした広場になっていて、ベンチやテーブルも多く設置されています。
ベンチ群の後ろには、休憩の小屋が建てられています。
中は麓の休憩所とほとんど同じ構造になっています。
冒頭でお伝えしましたが、日本国に登頂された方には登頂記念として登頂証明書が送られます。
証明書発行の際に、山頂の小屋で紙にスタンプを押し、押された紙を見せて発行の手続きが行われる仕組みになっています。(証明書発行代として500円かかります)
その紙とスタンプがこちらです。
赤の矢印に紙が大量に置かれているので、そこから一枚抜き台に置いてあるスタンプを押します。
こんな感じでスタンプを押し、無くさないようにザックにしまいましょう。
ちなみに、この紙に押されたスタンプはあくまで登頂の証明であり、証明書発行処で回収される事はなく、見せ終わったら記念に持ち帰ってもOKとの事でした。
休憩小屋の他にこのような展望台があります。
まるで公園の遊具のような形になっていて、正面には日本国と大きく書かれています。
ここで記念撮影するのもいいですね。
さて、展望台からの景色ですが、正直ここからの展望はあまりよくないです…
木々の影響によりご覧のような見え方です。
展望は下で楽しんだ方が良さそうです。
日本国山頂の展望は西にご覧のように日本海が眺められます。
海に浮かぶ島は粟島ですね。
運が良ければ左奥に佐渡島まで見えるそうです。
先ほどのベンチからも良く見えるので、のんびりとお茶を飲みながら、お弁当を食べながら眺めると最高ですね。
北方面の展望が一番よく、手前に温海岳、更に上手くいけば鳥海山まで見えるそうです。
ちなみに、左奥には日本海も眺められます。
山頂の奥の方にピンクのテープが付けられていますが、こちらは現在通行止めの中の俣に至るルートなので、近寄らないようにしましょう。
日本国山頂~蔵王堂口
帰りは小俣集落に立ち寄りたいので、蛇逃峠から蔵王堂口に向かいました。
分岐点である蛇逃峠には蔵王堂口へ向かう登山道が確認できます。
入口は狭く急な坂でしたが、紅葉が綺麗です。
こちらのルートは登山口までの距離は短いですが、道は狭く、小俣ルートに比べて急登が目立ちます。
けれども、道ははっきりとし、整備もされているようなので、迷う事はないと思います。
難易度も小俣ルートと同じくらいですね。
途中振り返ると、これまた紅葉が綺麗。
やはり秋登山の魅力は紅葉ですね。
暫くすると、小俣口のような杉林に突入します。
そろそろゴールが近いように感じます。
登山口付近には蔵王堂があります。
こちらの登山口の名前が蔵王堂口と呼ばれているのも、恐らくこの蔵王堂からきていると思います。
蔵王権現が祀られ、更にこの地が金峰山と呼ばれていた事から、恐らくこの山も元は山岳修験の山であったと思われます。
蔵王堂口の入口はこんな感じです。
こちらは鳥居が建てられ、やはり修験道を思い起こすような登山口になっていますね。
明治以降の街並みを味わえる小俣集落
蔵王堂口を下り、これから小俣集落へ向かいます。
さて、下山後は駐車場に帰りがてら小俣集落を見学しましょう。
看板には日本国の里
いい響きですね~
日本人の心の故郷を感じさせる街である事に期待が高まります。
小俣集落は出羽三山へ訪れる人が多く訪れ、出羽街道の宿場町として栄えたそうです。
明治時代には戊辰戦争により家々が焼き払われましたが、その後再建され、現在までその姿を残し、趣のある光景が広がっています。
家もご覧のように立派な造りになっています。
しばらく進むと、郵便局がありましたが、
その名前がなんと、日本国麓郵便局!
まるで我が国の郵便局の大本のようですね。
建物も立派で、名前もなぜかアピールしているように見えます。
駐車場のすぐ隣には日本国ふれあいパークがあります。
元々学校であったところを公園として使用されているそうで、奥には体育館と写真には写っていませんが、手前に校舎があります。
校舎です
昭和を思い起こすような造りになっています。
校舎の扉は閉められて入れませんでした(当然か)
日本国登頂者のみに贈られる証明書を受けよう!
記事の途中でも書きましたが、山頂でスタンプを押し、その紙を発行処に持っていくと発行の手続きが行われます。
ここで、日本国登頂証明書の発行手順を説明します。
先ほど山頂で紙に押したスタンプを麓にある、田宮彦作商店か田宮酒店のどちらかに立ち寄ります。
蔵王堂口から下りられた方は田宮彦作商店の方が近いです。
お店にはこのような看板が掲げられていますので、これを見つけたら中に入りましょう。
中はごく一般的なお店です。(おばちゃんがいました)
中で先ほどの登頂の証を見せ、発行料の500円を納めると、実際に贈られるハガキと入浴割引券が貰えるので、ハガキにはその場で表に住所氏名、裏に登頂日を記入します。
そして、記入を終えたら外にあるこのポストに投函します。
投函から家に届くまで1~2週間ほどかかるそうです。
ちなみに私は1週間と2日で家に届きました。
これが実際に貰える日本国登頂証明書です!
表には日本国オリジナルの切手と日本国麓の風景が描かれたオリジナル消印が押されます。
切手と消印の部分を拡大
日本国と書かれた切手には日本国が写っています。
切手マニアにはたまらない記念品ですね。
裏は本格的な証明書になっていて、日本国を愛する会の印が押されています。
更に嬉しい事に、この証明書には折れ曲がったり破れたりシミが付いたりするのを防ぐ為に、ラミネート加工が施され、いつまでも色褪せず思い出に残る記念品であるように工夫されています。
非常にありがたいですね。
証明書と同時に入浴の割引券も付いてきます。
これは手続きの段階で貰えます。
それにしても、手作り感満載な券になっています。
この割引券は「ゆり花会館」「交流の館 八幡」のどちらかで使えるそうです。
日本国トンネルで記念撮影を!
ほとんどおまけみたいで大変恐縮ですが、日本国登山口に到着する前に「日本国トンネル」というトンネルがあります。
まるでここから先が日本国だ!と、国境のようなトンネルで記念撮影をしてみてはいかがでしょうか。
最後に
今回は日本で唯一、国名の山である日本国をただ登るのではなく、天皇陛下の御即位を祝う記念登山として登らせていただきました。
日本国という珍しい山を日の丸の付いた金剛杖を突きながら登頂し、綺麗な紅葉の下、素晴らしい景色を仰ぎながら天皇陛下の御即位を祝福し、皇室のご繁栄並びに令和の御世の安寧を祈らせていただきました。
登山好きの陛下と言う事で、個人的に山に関わる事で御即位記念の計画を立て、御即位記念にちょうど良い山名である「日本国」を選び、その山頂でお祝いできた事が何よりでした。
日本国は新潟県と山形県のちょうど県境に位置し、標高は500m程の低山ではありますが、日本海や東北の名山などを眺められ、麓には趣のある集落が広がり、下山がてら見学する事も可能です。
片道1時間少々の短い登山になると思いますが、日本国という珍しい名前を持つ山の頂に立ち、ここが本当の日本の頂上だ!と感じてみてはいかがでしょうか。