西上州の山は妙義山を筆頭に危険を有する山々が存在する山岳エリアです。
標高は1000m前後と、標高だけで考えれば特に危険な山というイメージは湧かないと思いますが、山容を眺めると岩山が多く、その峨ヶたる峰は人を寄せ付けないオーラを放ち、時には神聖さを感じるような独特の姿を見せてくれます。
地図を見ると所々危険マークが付けられ、低山ながら油断のできない登山であることが分かると思います。
そんな危険マークの目立つ山岳エリアの中で今回登った碧岩・大岩も標高が1100m程の低山にも関わらず、ランクは上級に指定され、南牧村の登山の中で最もスリルを味わえる山です。
特に核心部の碧岩のロープ場はかなりの危険を伴い、更に途中は道迷いの危険性もあるルートなので慎重に進んで行く必要があります。
今回は南牧村のトップクラスの山行を味わえる碧岩・大岩の登山ルート及び注意事項と山頂からの絶景をお伝えしたいと思います。
碧岩・大岩のアクセス、駐車場
アクセス
車の場合は上信越自動車道下仁田ICより、国道254号、県道45,93号を南牧村方面へ向かいます。電車の場合は下仁田駅から南牧バス40分「勧能」下車、徒歩20分で登山口に到着。
駐車場、トイレ
道路から三段の滝入口の標識を入ります。
入ってすぐに駐車場があります。
十台程度停められる無料駐車場です。
駐車場にトイレ有り。
小便器と和式が一つある小さなトイレ。
ペーパーは完備されていました。
碧岩・大岩登山口~三段の滝
碧岩・大岩は南牧村の中でも奥まった場所に位置し、途中の道路から突如天を指すように現れる姿から西上州のマッターホルンとも呼ばれています。
マッターホルンと呼ばれるからにはそれなりの山ではないかと思いますが、まさにその通り!西上州の山の中でもトップクラスの岩峰です。
ほぼ南牧村の最奥なので道路も細く、集落も見当たらない心寂しい登山口になっています。
登山口から少し離れた道路から見上げるとこんな感じです。
近くで見てもやはり相当の威圧感を感じますね…
今からあれを登るとなると、やはり覚悟は必要。。。
登山口から三段の滝までは川沿いを歩きます。
橋はご覧の通り脆く、崩れるのではないかと思うほど心配になりますが、ここは慎重に歩きましょう。
地図上ではバリエーションルートにはなっていませんが、途中分かりづらい箇所や荒れている場所があるので、注意が必要です。
人もあまり通らないのか、ルートが消えかかっている箇所も見られます。
ピンクのテープはあちこちに確認できたので、恐らく迷うような道ではありませんね。
しかし、人があまり通らないからこそありのままの自然を感じる事ができる。ここを訪れる度にそう感じる。
川を渡ったり、ボロボロなハシゴを渡らなければなりませんが、川を見ると水が澄んでいて太陽の光に照らされると見事なエメラルドグリーンに輝きます。川沿いは本当に清々しい気分になりますね。
途中こんなハシゴも登場します。
少々不安定なハシゴですぐ横が小さな滝になっているので注意が必要です。特に岩が濡れている時は慎重に登りましょう。
ハシゴを登りきると橋も現れます。
以前は真っすぐになっていましたが、今回はご覧の通り橋が歪んでいます…
不安に感じたので橋を渡らず下の岩場を通過しました。
不安な橋を過ぎると目の前に巨大な滝が現れます。
名前は三段の滝と言う、その名の通り滝が三段に分かれて流れる滝になっています。
落差は50mで、流れる勢いはそれほどでもありませんが、見上げるほど高く巨大な滝です。三段の滝は南牧村三名瀑の一つに数えられ、この滝を見る為に訪れる人もいるそうです。もう二つの滝も以前訪れたので気になる方はこの記事をどうぞ↓
三段の滝~碧岩の核心部
さて、ここからが地図ではバリエーションルートになり、道も不明慮になります。
三段の滝の横を登りますが、ここでロープが登場します。
決して難しいロープではありませんが、岩が濡れているのでここは慎重に行きたい。
間近に三段の滝を眺める事ができます。
岩を滑るように流れ、まるでウォータースライダーのようになっていますね。
流れる音も穏やかでつい眺め続けてしまう滝です。
三段の滝を登った後も引き続き沢登が続きます。分かりにくいルートですがとりあえず川を上る感じで大丈夫です。しかもこの辺りはピンクのテープがきちんと付いているので迷うことは無いでしょう。
暫く進むと巨大な岩々が出現します。看板に従いピンクのテープを探しながら進みましょう。さすがバリエーションルート。この辺はあまり人が歩かないのか、よそ見をすると迷ってしまいそうです…
上流になるにつれ、川が細くなってきます。
そして険しさも増し、倒木や巨岩を跨ぎながら進んで行きます。
沢登の終わりに近づき、この標識から先は急登地獄の始まりです…
気を引き締めて参りましょう!
先程の標識からほんの数分歩いたところに分かりづらいテープがあります。
ここから右上の急斜面へ登る分岐点となっています。
実は初めて登った時、このテープを見逃して直進してしまい、とんでもない所へ行ってしまった覚えがあります。あの時は怖かった…
地図にもこの辺りが道迷いに注意と書かれているので、ここは慎重に右斜めを見上げるとテープが続いているので確認しましょう。
できればここに碧岩こちら→みたいな看板を設置してほしいですね…
分岐テープから先は急斜面を登るコースです。
テープが付けられているのでよそ見をしなければ迷いませんが、道も細く下山の人とかち合ったら最悪です…最後の方はかなり急で、油断すると滑る登山道です。いかにも無理やり登山道を作った感じですね。
急斜面を登り終えるとようやくまともなルートに差し掛かります。先ほどまでとは違い、太陽の光が行き届いた登山道です。バリエーションルートですがここから先は割としっかりした登山道です。
途中から何やら巨大な岩が出現します!そう、これが碧岩なのです!
今からあのてっぺんに登るとなると、余計に緊張しますね…
果たしてうまく登る事が出来るのか…不安だけが募る光景です。
暫く進むと碧岩への分岐点に到着します。
さあ、ここからが本番です!
恐怖!碧岩の核心部とは?
分岐点から先は少し下りが続きます。
徐々に岩場が増え、核心部が迫ってくる感があります。
進むにつれ歩も慎重になります…
そして核心部の二段ロープに到着です。
碧岩のてっぺんに登るにはロープ場を2回登らなければなりません。
写真は第一のロープ場です。
垂直の岩にローぷが垂れ下がっただけですが、意外に腕力を有するロープ場です。
けれどここは特に恐怖を感じるほどでもなく、サクッと登れます。
腕力を温存したい方は右側の岩を使い、ロープをサポート代わりに使うことをおすすめします。いわゆる、三点支持ってやつですね!こっちの方がいいかもしれない。
第一はそこまで難しくないですが…本当の恐怖はこちらです!
第二のロープ場!
核心部の中でもこれがラスボスと言っても過言ではない。
何が凄いのかと言うと、まずこのロープが取り付けられているのは斜めに傾いた木にくくられているだけで、いつか切れるのではないかという恐怖。
次に岩は垂直まではいかないが、意外に足をかけるホールドが乏しく、見極めながら進む必要がある。 特に岩が濡れている時は滑りやすいかもしれません。
そして何と言ってもこのロープの右側は完全崖になっていて、下を覗くとどこまで落ちるか分からない程スパッと切れている。写真では分かりづらいが、実際に現場に立つと物凄い恐怖心が湧きます。
ロープも揺れるし、足場を確保するのに一苦労、そして最大の恐怖はやはり右側の崖ですね。崖の方は見ないで下さい。
隣の大岩から拡大すると恐らくここが第二のロープだと思います(木にロープが付いています)そう、こんな場所を登っているのです!
写真でも分かるように、スパッと切れていて、落ちたら確実にアウト!
難易度ですが、私個人的には妙義山の鷹戻しより全然上だと確信しております。
第二のロープを登り終えて振り返る。
余りの恐怖に近くで撮る事が出来ず、少し離れたところで撮影。
先の木に括りつけているロープがロープ場の終点。
撮影している場所もかなり急な場所なので、落ち着きません。帰りにまたあのロープを下るとなると足が進みません…
しかし、せっかくここまで来たんだ!最後まで行きましょう!!
ロープ場から先は特に危険箇所はありませんが、すぐ横が崖になり、道もかなり細いのでやたら緊張感の漂う登山道です。
もうすぐ山頂です。
あまり人が歩いていないのか、道も曖昧な状態になっています。そして、相変わらず両サイドは崖!
碧岩山頂
そして碧岩山頂に到着です。
山頂は狭く、先がどこも断崖になっているので注意が必要です。
展望はご覧の通り穏やかな山々を見渡せます。
西の方はは長野方面の山です。特に有名な山が見えるわけでなく、静かな光景が広がるだけです。
視線を少しずらすと浅間山方面の山々が見えます。
正面奥に浅間山の山頂部が見えますね。その手前のは荒船山の経塚山、更に立岩の絶壁も確認できます。
上の写真は浅間山の拡大
前回春に登った時は真っ白な姿を見せてくれました。
下は立岩の絶壁
ここから眺めるとまた違った形に見えます。それにしても凄い断崖ですね。
下界を眺めてみると、南牧村の集落が見えますね。
この碧岩付近は特に奥まった場所なので、秘境感溢れる集落です。
手を振ったら誰か気づいてくれるのではないか?って思いますw
特に注目していただきたいのは写真にも写っている碧岩の影です。
どうですか、見事な影になっていますね!登った者しか味わうことの出来ない貴重な写真です。
碧岩は雨乞いの岩山として信仰されていた山だったらしく、それはつまり禁足地の岩山なので、ここに立つのも実は恐れ多いんですよね…
ここに降り立った神様はこのように集落を見下ろしていたんだなぁってしみじみと感じます。
さて、お次はお隣の大岩へ向かいましょう!
しかし、またあの恐怖のロープを下るとなると物凄く憂鬱な気分です。
碧岩~大岩
恐怖のロープを無事に下り、次は大岩方面へ参りましょう。
最初は緩やかな登山道が続き、本当にバリエーションルートなのかと思うほど歩きやすい道が続きます。
暫くすると岩交じりの登山道に差し掛かります。
いよいよここから本格的なバリエーションルートって感じがしますね!
大岩山頂まで鎖やロープは無く、ひたすら岩陵を歩くコースになっています。
特に技術を有するコースではありませんが、両サイドがスパッと切れているコースなので、よそ見をせず注意しながら登れば特に問題はありません。しっかりと岩を見極め、三点支持を守ればそれほど難しいコースではありません。
どちらかというと、大岩は適度なスリルを味わえるので、案外楽しいです。
先程の碧岩の恐怖から解放された事もあり、益々岩陵歩を楽しめますね。
大岩の岩陵歩きは石鎚山の弥山から天狗岳へ向かうコースに近い感覚だと思います。
スケールは断然石鎚山の方が凄いですが、断崖絶壁すれすれ道とピンクのテープが付いた安心に渡れるルートに分かれているところが似ていると感じます。
楽しい岩陵歩きを終え、二つ目のピークである大岩山頂に到着です。
展望は先程の碧岩とあまり変わりませんが、こちらの方が視界も広く、山頂部も広いので落ち着いて楽しめると思います。手前には天に聳える立派な碧岩を眺めることが出来ます。
展望は先程の碧岩とあまり変わりませんが、こちらの方が視界も広く落ち着いて楽しめると思います。
違う光景はこれですね。
穏やかな山々の中に突如現れた岩山。
確かに神が降り立つ岩と言っても納得の出来る姿ですね。
ついさっきあのてっぺんにいたとなると、本当にとんでもない所を登ったものだと納得できます。やはりシンボルのように見えますね。
すぐ近くに奇妙な岩も確認できます。
あれは二子岩でしょうか?
仲良く並んでいます。
集落も確認できます。
拡大レンズで覗くと村の様子が分かるかも知れませんね。
さぁそろそろ下界へ向かいますかぁ
西上州のおすすめ登山
西上州は奇峰が多く適度なスリルを味わえる山が多数あり、更に歩く距離も短いので登山と観光を日帰りで楽しむことも可能です。
私が以前登った西上州のおすすめ登山を少し紹介しますので、西上州を訪れた時の参考になれば幸いです。
南牧村の詳しい情報は公式サイトをご覧ください
最後に
今回は南牧村の碧岩・大岩を紹介しました。
どちらも山登りではなく岩登りという感じで、危険度もそれなりに高い山行になると思います。登山道も途中不明慮な箇所も見られますが、人もほとんどいないので、一人静かに楽しみたい、スリルを味わいたい方にはおすすめです。
山行時間もそこまで長くならないと思うので、下山後は南牧村を見学することも可能です。ぜひ、西上州のマッターホルンこと碧岩・大岩を登ってみてはいかがでしょうか。