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【黒瀧山不動寺】群馬県南牧村に位置する西上州三大不動の一つを紹介します!

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秋の深まる11月の中頃、今年も紅葉を楽しむために西上州の南牧村を訪れました。

群馬県の南西部に位置する南牧村は埼玉の秩父と長野の佐久の境に接する山村地帯で、深い山に囲まれ、今もなお美しい山里が垣間見れる、いわば日本の原風景を味わえる村です。

また、美しい集落とは裏腹に周囲は人を寄せ付けない急峻な山々が連なり、独特な山容から多くの岩場も見られるので、山岳信仰の場としての山も数多く見られます。

このような環境から至るところに石仏や祠などが祀られ、かつては修験者や山伏が集い信仰登山が盛んであった事が想像できます。

今回訪れた黒瀧山不動寺は黄檗宗黒瀧派の根本道場として開かれ、更に西上州三大不動の一つに数えられている、いかにも山岳信仰の修行の地としての雰囲気が漂う古刹です。

南牧村の観光の際に必ずおすすめされる黒瀧山不動寺は秋の紅葉が素晴らしいとの事で、今回はちょうど見頃の時期を狙って訪れたので、境内の様子や美しい紅葉を交えながらお伝えしたいと思います。

黒瀧山不動尊寺までのアクセス、駐車場

アクセス

 

上信越自動車道下仁田ICから車で約20分

駐車場

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本堂の少し手前に無料駐車場とトイレがあります。

駐車場から本堂まで数分歩きます。

【外部リンク】

南牧村のHPにも情報が書かれているのでそちらもご参考に

www.nanmoku.ne.jp

駐車場から黒瀧山不動寺までの道

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駐車場からすぐに登拝口という手書きで書かれた看板があるので、そちらに進みましょう。しばらく整備された道路を登っていきます。

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ふと見上げるといい感じに色付いています!

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軽く坂を登り終えると寺務所に到着します。

この入口の奥が境内になっています。

寺務所は宿坊も兼ねており、座禅体験や研修、宿泊も可能との事です。

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寺務所のすぐ隣には鐘楼があります。

鐘楼は景色の良い所に設置され、まさに山のお寺という感じがしますね。

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ちなみにこの鐘、実は戦艦陸奥の羅針盤が合鋳されていて、世界平和及び災害の無い世の中の願いが込めらて造られた鐘です。

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鐘楼からの景色はこんな感じです。

集落が見えない程奥深い山奥に建てられたお寺であると実感できます。

ちょうど夕暮れ時に鐘を鳴らしたら、夕焼け小焼けの歌に出てくる、や~まのお寺の鐘が鳴る~♪の部分がまさにこの光景だ!と思えてなりません。

深山幽谷な黒瀧山不動寺の境内

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大量の幟幡が奉納された先には趣のある山門が現れます。

現在の山門は寛政十年(1798年)に再建されたもので、二百年以上もこの寺の山門として建ち続けている由緒ある門です。

ちなみに門の正面には「東海禅窟」と書かれた扁額が掲げられていますが、これはこの山を開いた潮音動海禅師によって揮毫されたものです。

禅窟と称されている事から、この地がまさに禅を行うのに最適な場所だと感じ取ったのでしょうか?

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黒瀧山不動寺は黄檗宗の寺院として延宝三年(1675年)潮音道海禅師によって開山されました。黄檗宗は臨済宗、曹洞宗と同じ禅宗の一つで明から招かれた隠元を開祖とする宗派。仏教十三宗の中で最も新しい宗派であり、中国の僧が開祖なので中国式の濃い禅が特徴との事です。

禅宗の特徴は特定の経典はなく、本尊も特に決まっていないとの事で、ただひたすら禅を行う事で悟りを得るそうです。

難しい教義や経典、厳しい修行や説法ではなく、ただ静かに禅を行う事で己自身を見つめる行法は瞑想のようで簡単そうですが、シンプル故に奥深い教えだと思う。

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山門をくぐり色付いた紅葉たちにお出迎えされると、最初に不動堂が現れます。

不動堂の中には本尊であり秘仏の金躰不動明王と釈迦如来(釈迦三尊仏)が祀られています。本尊が不動明王なので最初は真言宗か天台宗の山岳信仰系のお寺ではないかと思っていました。

宗派によれば特定の本尊は立てていないそうなので、恐らく南牧村周辺は奇峰の連なる山々から山岳信仰が著しく発展した地域なので、それに感化されて不動明王が祀られたのではないかと思います。

あるいは、黄檗宗であるこの寺が開かれる以前の山岳信仰の霊場を受け継ぎながら寺を運営されたのか、はっきりと分かりませんが色々考える事が出来ますね。

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不動堂からは見事な紅葉を眺める事ができます。

写真では分かりませんが不動堂の裏は大きな岩壁があり、寺全体を覆うような形になっています。静かな南牧村の集落から少し離れた山奥にこんな素晴らしいお寺があるなんて、ここはまさに穴場ですね。

人もほとんどいないので、ゆっくりじっくり紅葉を堪能しましょう。

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中国的な彩が強い宗派との事ですが、建造物自体は特段中国色のようには感じられません。寧ろ山奥にある日本の古寺感が漂う雰囲気になっています

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不動堂から本堂へ向かう途中にある臥龍橋

左奥の龍神の滝から流れる流水の上を架ける橋になっています。

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臥龍橋を渡るとその先に本堂があります。

本堂に本尊が祀られている訳ではないんですね。こちらは扉が閉められていて、中の様子が分かりません。先ほどの不動堂と比べても常に人が出入りしている様子も感じられません。こちらで行や禅は行われないのでしょうか?

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本堂の先は広場になっていて、こちらも紅葉が綺麗でした。

目の前にある建物は公衆トイレです。

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トイレの前方には巨大な岩が聳えています。

案内図には開山堂近くの岩は日東岩という名前が書かれていましたが、これがそうなのでしょうか?西上州にはこのような類の岩はあちこち見られるので特に驚きませんが、初めて見る人にとっては衝撃な光景に見えるかも知れませんね!

まさかあの岩に登る修行はありませんよね…

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閑話休題

さて、一番奥にある開山堂へ向かいましょう。

広場の左にある階段を登っていきます。

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階段を登りきると門が構えています。

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振り返るとこれまた素晴らしい紅葉が待っていました!

ベストシーズンとなると史跡探訪よりもこちらに気を取られてしまう…

先程の山門より開山堂付近の紅葉が一番綺麗でした。

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門のすぐ隣には歴代塔が建てられています。

歴代とは住職の事でしょうか?

しかし、これはお墓なのかどうかは微妙なところです。

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この階段を登ると一番最奥の開山堂に到着します。

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開山堂に到着しました。

写真では分かりませんが、奥には巨大な岩が聳え少し薄暗い場所に建てられています。

本堂と同様に扉は全て閉じられ、必要な時以外は常にこのような状態ではないかと思われます。

この開山堂は名前の通り開山である潮音道海禅師の寿像、開基の像とこの寺の縁の人物の位牌が安置されています。なるほど、位牌が安置されているので境内の奥に建てられている事にも納得です。

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開山堂の裏にはこのような門と階段が続いています。

これは一体何でしょう?

巨岩に囲まれ厳粛な空気の漂う空間で、足を踏み入れるのに躊躇してしまうような場所です。

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巨岩の正面に人工的に削られた窓のようなものがありますね。

花が添えられているのでお墓なのでしょうか?それともこの中に仏像か何か特別な物が保管されているのか?謎は深まるばかり…

雨乞い伝説が伝わる龍神の滝

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さて、開山堂から再び不動堂の方へ戻りましょう。

不動堂の裏には龍神の滝と言う行場があるのでそちらを紹介しましょう。

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先程の不動堂の真裏はこのように不動堂を飲み込むかのように巨大な岩が聳えています。水量は少ないですがパラパラと水が滴り落ちています。滝の中央には不動明王が安置されていますね。

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伝説によると、この滝壺には龍神が住んでいて、気に入らないと時を選ばず暴れだし、大雨を降らして里人たちを困らせていたと伝えられています。開山の潮音禅師は龍神の悪行を抑えるべく、滝壺に大日如来の梵字を刻んだ石碑を建て、やっとの思いで龍神に鎮まってもらったそうです。

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また、晴天が続いたことにより、龍神を怒らせて雨を降らそうと大日如来の書かれた石碑をわざと倒し、雨降らせたまえ、雨降らせたまえ!と叫んだところ、大雨が降ったとも伝えられ、それ以降は雨乞い祈祷もこの場所で行われたそうです。

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しかし冒頭でお話したように、ここは黄檗宗のお寺で、黄檗宗はひたすら禅を行う事で悟りを得る修行でしたね。しかも不動明王は空海によって広められた真言密教によるものなので、明らかに山岳信仰の濃い場所である事が分かります。

滝壺には大日如来の石碑が建てられたと先ほど言いましたが、真言宗の本尊は大日如来であり、その使者または化身を不動明王と説いています。

修験者や山伏たちは荒行を重ねることで大日如来と一体化する事を目指し山に籠って修行し、不動明王の力を獲得して人々を救う事を目的とされたそうです。

写真でも分かるように、不動明王は恐ろしい顔をしている。

大日如来の使者として、厳しく𠮟りながら良い方向へ導く為にこのような表情になっています。不動明王の表情は様々だそうで、この龍神の滝の不動明王の表情は、厳しい滝行に耐えて、耐えて!大日如来と一体になって人々を救いたい!という思いが滲み出ているように思えるのですが…いかがでしょうか?

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岩壁は洞窟状になっていて、ご覧の通り岩壁が削られています。

岩壁の所々に石仏が安置されています。

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一番奥は不自然にえぐられ、ぽっかりと空いた空間になっています。

物凄く圧迫感のある岩窟です。

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岩窟には弁財天が祀られています。

かつてこの場所は真言密教の修行の場だったらしく、多くの修験者が滝行や山に入り修行を行っていたそうです。弁財天は貞享五年(1688)潮音禅師によって祀られ、この場所を天女窟と名付けました。

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天女窟から外を眺めるとこんな感じ

まるで洞窟の入口のように丸くなっていて、少し薄暗い感じですね。

かつては多くの行者たちがこの岩窟に籠って日々修行に励んでいた事を想像できます。

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岩壁には弘法大師像も祀られていました。

黄檗宗として開山される前はやはり真言密教の修行の場だったようですね。

更に岩窟の岩肌には空海が爪で彫ったとされる「爪彫り不動」と言う魔崖仏が見逃してしまいましたがあるそうです。

山岳霊場が広がる黒滝山

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黒滝山不動寺という名前からすぐ隣には黒滝山があります。

馬ノ背や観音岩、九十九谷など様々な石仏や行場が残され、山岳修験者が日々歩いていたであろう岩陵や鎖場を体験する事ができます。

難易度は高めなので、ある程度岩場や鎖場を経験してから登られた方が良いかと思います。

黒滝山の登山道の様子はこちらの記事をご覧ください↓

www.narisuba.com

更に南牧村の自然や観光スポットについて知りたい方はこちらをどうぞ↓

www.narisuba.com

最後に

黒滝山不動寺は南牧村の山奥にひっそりと建てられた静寂幽玄な山寺です。

中国式の濃い黄檗宗の寺ですが、実際は雄大な自然と見事に一体化した日本独特の雰囲気を醸し出した寺である事を感じられます。

11月中旬頃には境内が染まり一段と見ごたえのある山寺へ変わるので、秋に訪れる事をおすすめします。

また、寺の横には登山道が続き、登山を行いたい方は合わせて黒滝山の自然を味わってみてはいかがでしょうか。