今年初の四国入りは4度目の石鎚山登山と高知観光の旅になりました。
実は高知県を訪れるのも初めてで、2泊3日の内、最初の2日間は高知県を巡るドライブ旅でした。
高知県は四国一大きい県であり、瀬戸内海の島々の光景と打って変わって、湾曲の海岸線が美しく、島一つもない雄大な太平洋を望め、山間部は美しい自然や田園、史跡など、見どころの多い場所です。
さて、そんな見どころ満載な高知県は初めて訪れたので、主に定番の観光地を巡りましたが、山間部の果てしない林道の中に、気になる場所があったので、今回レポートする事になりました。
その気になるスポットは、林道の奥深い所に位置する地主神社という名の神社で、その鳥居がなんと人工物ではなく100%杉の木でできた鳥居なのです!
今までに珍しい鳥居を多数見てきましたが、今回のは唯一自然の力で作られた鳥居であり、感動間違いない!と思いその姿をカメラに収めましたので、早速その神秘的な光景を紹介したいと思います。
地主神社とは
さて、鳥居の前に少し地主神と地主神社のお話を…
地主とは読んで字のごとくその土地の主という意味で、普段の会話でもここの地主さんはね~など、誰もが聞いたことのある言葉だと思います。
また、地主にはその土地の守り神という意味もあり、地神や土地神とも呼ばれています。
この地主神は現在では民間信仰の一部に捉えられ、特に地鎮祭などで神主が降神の儀という儀式の中で大地主神(おおとこぬしのかみ)を呼び、祝詞の中でもその土地の神である大地主神を必ず唱えているので、機会があれば耳を傾けて聞いてみるのもよいでしょう。
つまり、地主神は私たちの馴染みのある神様であり、農村地帯においては田の神や荒神などの性質も備えられるようになり、ひっそりとした山奥や林、小高い丘など様々な場所に祀られている事が多いです。
この桑の川地主神社も地図で見れば分かるように、山奥のひっそりとした所に社殿が設けられています。詳しい由緒は書かれていませんが、地元の方の篤い信仰を感じられる神社です。
日本で唯一?生きた鳥居と呼ばれる鳥居杉の全貌
南国市から県道33、268号を進み、穴内川ダムの近くに鎮守する地主神社にその鳥居はあります。
社殿は駐車スペースからも確認でき、その手前に人工の鳥居とその奥に杉鳥居が構えているのも確認できます。
神社周囲は一面木々で覆われ、社殿以外の人工物は一切無い、まさに静寂の中に鎮守するお社である。
杉の木全体は大きく、高さは40mもあり、杉の木全体を撮る事は難しいです。
以前京都で珍しい鳥居のある神社を紹介した時にも書きましたが、鳥居には様々な由来や説があるそうで、大まかに言えば神域と俗世界の境界を意味し、鳥居から先が神様の住み家という事になります。
鳥居の形は地図記号で表示されているマーク⛩が主流ですが、信仰によって多少違うデザインの鳥居も存在しています。
しかし、鳥居はあくまで建造物で人間の都合によって建てられたシンボルであり、社殿と同時に神様の通り道の入口として”造られたもの”であります。
京都にある三柱鳥居の記事はこちら
改めて今回紹介する鳥居を見てみると、誰がどう見ても人工物ではなく、自然そのものである事が一目で分かりますね!
しかもその鳥居の先にちょうど社殿が建てられ、いかにもこの神社への入口という感じがします。
手前の人口の鳥居を潜り、例の鳥居に近づきました。
杉鳥居は見上げる程大きく、高さは大きい方が40mと書かれていますが、全体を把握する事ができません。
鳥居杉の他にも周囲には杉の木が生えていますが、この二本だけ異様に大きく、目の前に立った瞬間思わず立ち止まってしまい、その存在感にただ圧倒されるだけです。
片方の杉の木から枝が伸び、隣の杉の木に連結してこのような光景が生まれたのだろうと想像できると思いますが、実際眺めてみると、神秘的な光景にも関わらず何故こうなった?という疑問しか思い浮かばない…
連結した杉の木は手を繋いでいるようにも見え、何だかほっこりとします。
どれだけの時間をかけて連結したのかは分かりませんが、一本の枝で結ばれた日本の杉の木は運命共同体のような、互いに支え合うかけがえのない存在のようにも見えます。
このような光景から縁結びのご利益があると言われ、誰がどう見ても納得する姿ではないだろうか。
さて、それでは鳥居杉をじっくり見てみましょう。
接続部分はこんな感じです。
ついこういうのを見ると、本当は誰かがくっ付けたんじゃないの?と疑いから入ってしまう…


だがしかし!よく見ると、どうやら片方の木から伸びてもう片方の木に接続された形になっているではないか!
恐らく正面から向かって左の木から伸びた枝が右の木に接続されたのだと思います。
伸びた枝が貫いたり飲み込もうとせず、明らかに隣の木に馴染もうとし、本当にこの二本の木が意識して一体になろうという気持ちがはっきりと伝わってきます。
水分や養分はこれで共有されるのか、疑問に思いますがどうでしょうね?
あと、完全に一体化しているのか、それともあくまで表面だけなのか気になるところです…
接続部より上は無数の枝が交差しています。
よく見ると枝はそれほど太くなく、ごく一般的な感じになっています。
さて、杉鳥居を潜ると地主神社の社殿があります。
山奥にひっそりと鎮座するお社は自然に溶け込み、静寂の中ただひっそりと参拝者を待ち続ける趣のある神社ですね。
注連縄や紙垂も綺麗にされ、お榊も供えられているので、定期的に管理されているのが分かります。
振り返ると大きな鳥居杉、その奥に人工鳥居が見えます。
地主神社の神様はここを行き来しているんですね。
全国には二本の木が寄り添うような木が多数あり、それを御神木や夫婦木など、御利益のある木として信仰されています。この鳥居杉もそれらの部類に当てはまると思いますが、やはりこのような姿は類を見ない、まさに奇跡の光景と言っても過言ではないでしょうか。
更に接続部も丁度よい高さとなり、門としての機能を果たしている事も偶然なのか考えどころ…神様がそのように作ったのではないかとさえ思える鳥居です。
美しい、映える鳥居と言えば全国に多数あり、例えば京都の伏見稲荷の千本鳥居などが挙げられますが、それはあくまで人間によって作られた光景であり、確かに素晴らしいと思う。
しかし、この鳥居杉は自然そのものであり、常識では考えられないような、しかも果てしない年月をかけて作られた、たった一つの光景であり、感動というか神秘性を感じざるを得ない。
見学と参拝を終え、振り返ってもやはり自然で作られた鳥居の存在は大きいと肌で感じます。
何度もその姿を目に焼き付けてしまい、これぞ神域って感じが何度も湧いてきます。
駐車場の横には道が続いています。
どこまで行くのか分からないので先には進みませんでしたが、歩きたくなるような道です。
県道33号、267号のおすすめ立ち寄りスポット
南国インターを降り国道23号から県道33号に入ると永遠の山道となり、向かいの国道439号までかなりの時間を有するドライブになります。
この旅では鳥居杉を目的に車を走らせ、見学後はそのまま向かいの国道439号まで永遠と林道を走りました。その中で思わず車を停めて立ち寄ったポイントがあったのでサクッと紹介したいと思います。
県道33号の一瞬展望が開けた場所
グーグルマップのストリートビューを見れば分かるように、県道33号は見渡す限りどこを走っても密林で、まず展望は期待できない道路であると思われますが、唯一素晴らしい景色の広がるポイントがあり、それがこの写真。
そこは南国市と更に室戸岬方面まで見渡せるなかなかの絶景ポイント。
周囲に登山可能な山は無く、もし登山可能の山があればこのような素晴らしい光景が目の当たりにできるのに何か勿体ないですね。
一応その場所を載せますが、残念ながら車を停めれそうな場所はありません。
穴内川
鳥居杉を越えるとすぐに川沿いの道となり、次第に川幅が広くなります。暫く進むと橋があり、そこから穴内川をじっくり眺められるポイントに到着します。
川と言うよりも湖のようになっている様子が確認できます。
どうやら穴内川ダムの貯水池の一部のようで、人工的に造られた湖だと思います。
それにしても水が綺麗過ぎて見事なエメラルドグリーンになっています。
橋の手前に一時停止してじっくり眺める事もできるので、ここは立ち寄りスポットとして十分機能を果たしています。
吉延の棚田
穴内川から北へ車を走らせ、国道439号の手前に視界の開ける場所があります。
黄金色に輝いている事から田んぼである事は瞬時に分かりましたが、山の斜面上に造られているのでこれらは棚田ですね。
この棚田は吉延の棚田と呼ばれ、残念ながら日本の棚田百選には選ばれていませんが、まるで芸術のような見事な棚田アートを堪能する事ができます。
路駐して撮影をしたのであまり写真はありませんが、棚田全体を眺める展望台があり、そちらの方がより美しい棚田を撮影できるそうなので、ぜひ行かれてみてはいかがでしょうか。
桑の川の鳥居杉のアクセス及び行き方
桑の川鳥居杉のアクセス
南国インターから国道32号を北上し、途中県道33号の細い林道を進み約30分で到着します。
桑の川鳥居杉までの道のり
県道33号から鳥居杉までの道のり
写真の数は少ないですがご参考までに。
意外にも案内の看板は新しく親切でした。


最後の案内看板から先はデコボコ道
道も細く、ナビにも反映されていないので注意しながら進みましょう。
ここまでの道は細く狭い道のりでしたが、駐車場は広く余裕をもって停める事が可能です。
最後に
四国の奥深い山に鎮座する地主神社までの道のりは決して楽ではありませんが、木々の隙間から照らされる僅かな日の光が降り注ぐ奥まった境内はまさに”鎮守の森”に相応しく、静かな参拝のできる神社でした。
この神社の注目である鳥居杉は2本の杉の木が1本の枝で繋がり、見事に鳥居の姿を成している事に誰もが感動するでしょう。
その姿から地元では”生きた鳥居”とも呼ばれ、まさにその名の通りの鳥居でした。
恐らく全国を探してもこれほどの鳥居は出会えないと思うので、ぜひみなさんもその奇跡の鳥居を目の当たりにしてみてはいかがでしょうか。