伊豆半島はジオパークに登録され、いくつもの自然が造り出した光景があり、見る人を圧倒させるスポットが多く、今回の伊豆半島巡りもほとんどジオスポット巡りの旅になりました。
さて、そんな数々のジオスポットを巡るドライブ中、海沿いにひと際目立つ岩山を発見し気になったところ、どうやらジオスポットの一つらしく、せっかくなので見学しようと思ったのが、西伊豆町の隣の松崎町にある烏帽子山です。
天を指すように聳えるその岩山は姿形から烏帽子山と呼ばれ、そこに鎮座する雲見浅間神社は麓から急な階段を登った山頂に位置する神社です。
標高は162mと高い山ではありませんが、山頂に至るまでの過酷な参道、更に本殿の鎮座する山頂には足がすくむ程恐ろしい恐怖の展望台が設置され、ふらっと訪れたはずが、なかなかのとんでもないスポットに訪れたみたいでした。
なので、今回は雲見浅間神社が鎮座する海沿いに聳える烏帽子山の登山道及び山頂の恐怖の展望台と絶景を紹介したいと思います。
- 登山口~拝殿(石段130段)
- 危険な石段320段の先には中之宮
- 中之宮~本殿
- 本殿奥の恐怖の展望台からの絶景
- 烏帽子山周辺のおすすめビュースポット
- 烏帽子山浅間神社(雲見神社)のアクセス、駐車場
- 最後に
登山口~拝殿(石段130段)
登山口にやってきました。
この鳥居から山頂まで一直線の参道を歩いていきます。
遠くから眺めたらかなり急な山道になりそうな予感しかありません…
鳥居を潜ると案内看板があります。
拝殿の先に本殿があり本殿が山頂にある事から、山全体が信仰の対象となる神体山である事も想像できますね。
トータル450段の階段や山道と書かれているので、一筋縄ではいかなそうな気がこの段階でも分かると思います。
図で見ると時間がかかりそうですが、約15分で山頂に到着できるそうです。
鳥居を潜ると石灯籠がずらりと並んでいます。
この辺りの階段は特に急ではなく、登りやすいです。
あらまぁ~2分で拝殿に到着しちゃいました!
ここから先は階段と山道だけなので、やはりそこまで時間はかからないと思います。
拝殿の扁額には雲見神社と書かれています。
ここは拝殿の為、中に神様は祀られておらず、山頂に祀られている神を拝むために設けられた建物です。
ここから先はかなり急な階段と岩混じりの山道を登らなければならないので、山頂に行かれない方はここで拝むのだろう。
それにしても、拝殿は比較的新しいく、後から建てられたのではないかと思われます。
拝殿の横には祠が祀られています。
その隣の小屋のようなものは分かりませんが、倉庫か何かでしょうか?
祠の先には少し展望が開けた場所があり、天気が良ければ松の木の間から富士山が見えますが、この日というか、初日の夕方と翌日の朝の実は2回訪れましたが、2回とも富士山が見えず…
というのも、この神社の神様は浅間神社の中でも珍しい、磐長姫命を祀られています。
磐長姫とは全国の浅間神社に祀られている木花咲耶姫の姉で、山の神である大山津見神の娘です。
この二柱の女神は古事記の上巻で語られており、詳しくお話しませんが、磐長姫は岩のように険しく醜い姿の女神で、妹の木花咲耶姫のような美しさを持っていませんが、岩のように永遠性を表す神であり、永遠の命の象徴でもあります。
神話の中で、天孫のニニギノミコトは妹の木花咲耶姫に恋をしプロポーズをしたところ、親である大山津見神は大変喜ばれ、妹だけではなく、姉の磐長姫も差し出しました。ところが、やはり容姿が醜く、ニニギノミコトは二人の女神の内、容姿の美しい木花咲耶姫だけ選び、磐長姫は妻として受け入れず、大山津見神に引き返したと語られています。
その為、この看板に書かれている通り磐長姫は嫉妬深い神と考えられたそうです。
この烏帽子山は外見が完全なる岩山で、まさに岩そのものであり、残念ながら華やかな姿には程遠く、御祭神も磐長姫である事が納得できると思う。
伊豆にはこのような磐長姫と木花咲耶姫の物語をモチーフにした伝説がいくつかあります。
例えば伊東市にある大室山の浅間神社も磐長姫が祀られ、更に下田にある下田富士は御祭神は木花咲耶姫ではあるものの、下田富士の伝説は明らかに磐長姫と木咲耶姫がモチーフとなり、岩山である下田富士が磐長姫として捉えていると思われます。
下田富士はこんな山です↓
余談ですが、この烏帽子山は初日の夕方に登り、あまりにも感動したので、翌日も登ろうと企み、更に富士山も撮ろうとしたのですが、不思議なことに翌日の天気は晴れ予報にも関わらず、登っている最中に急激に雲が発生し、突然富士山が見えなくなってしまいました…
これはあれか、磐長姫がひどく嫉妬した為に、おまえなんかに富士山は見せぬ!と私に伝えたのでしょうか?
それにしても天気が急変した事に少し怖れを感じてしまった…
帰りに階段から落とされるのではないか…と・・・
危険な石段320段の先には中之宮
帰りに磐長姫に落とされていしまうのではないかビビりながらもこの320段の急な階段を登らなければなりません。
見上げればご覧の通り先が見えません…
登山よりも永遠に階段を登り続ける方が辛いんですよねぇ~
それにしても、まるで壁を登るようなこの光景!
以前登った山梨の石割山もこんな感じの階段がありましたね~
無理やり急な階段を作ってやった感があります。
石割山はこんな山です↓
横を見るとこの階段の角度が分かると思います。
少し登って下を見るとこんな感じ
恐らく登りよりも下りの方が怖いんじゃないですかねぇ…
階段の幅も狭く、踏み外さないように前だけでなく下も見ながら進みましょう。
中之宮~本殿
そして中之宮に到着
ここには何が祀られているのかは書かれておらず、扉も開きませんでした。
御祭神と縁のある神様が祀られているのでしょうか?
しかし、この社のすぐ横は崖になっていて、真下には登山前に立ち寄った想い出岬が見えます。
ここからでも十分絶景ですが、山頂は360度の恐怖の絶景を味わえるのでここで満足はしないように。
さて、ここから先は登山っぽい道を進んで行きます。
しかし、標高も低いのでそんなに時間はかかりません。
とは言うものの、山頂まではそれなりの道になっており、途中岩の多い道も通過します。
中之宮からほんの十分程度で本殿が見えてきます。
この階段が最後です。
本殿に到着しました。
ここには立派な社殿が建てられ、正面は山々と町が見渡せます。
さて、この本殿は創祀は不明ですが、台風により海に落ち、明暦三年(1657)年に再建されたそうです。
台風で海に落っこちたというのは想像しただけで恐ろしいが、恐らく何度かそのようの事が起こったのではないかと思う。
現在は雲見浅間神社という名前の神社ですが、延喜式には伊波乃比咩命神社と書かれ、元々はこの名の神社だったのではないかとされています。
また、御祭神の磐長姫命(イワナガヒメ)と伊波乃比咩命(イハノヒメ)が同一視され、後に磐長姫になり、先ほどの木花咲耶姫と磐長姫の伝説も語られるようになったのではないかと思います。
まぁこの烏帽子山全体が岩山なので、御祭神が磐長姫の方がしっくりきますね。
本殿正面からはこのような景色です。
海と反対側なので山と集落しか見えません。
本殿奥の恐怖の展望台からの絶景
さてさて、本殿の奥には恐怖の展望台が待ち構えています。
さっきから恐怖恐怖と言っていますが、写真でもその恐ろしい展望台が分かると思うので早速見てみましょう。
写真の通り本殿左の巨岩には階段が取り付けられています。
そう、この先が展望台です。
なんか、嫌な予感しますね…
そして遂に恐怖の展望台に到着しました。
まずはその素晴らしい絶景をご覧下さい!
正面は広い駿河湾とすぐ下には荒々しい海岸線が見えますね!
海岸沿いには海底火山の噴出物である岩が奇景を成して海面に佇んでいます。
北側を向くとすぐ目の前に山頂付近の崖が見えます。
恐ろしいほど断崖で、海まで一直線な岩壁になっています。
下を覗くのが怖いです…
先ほどの本殿と、奥には堂ヶ島まで続く海岸が見えます。
しかし、こんな崖の上によく社殿を建てたものですね。真後ろが崖で、確かに台風が来て崩壊したら海にそのまま落っこちる形になっています。
南東方面はひたすら山が続きます。
さて、展望はある程度紹介しましたが、実はこの展望台とんでもない場所に設けてあり、なんと!断崖絶壁のてっぺんにあります。
ご覧の通り冊は1mも無く、大人であれば誰でも簡単に冊から身を乗り出すことができちゃいます。
幅もほんの50センチくらいでしょうか?
ちなみに真下を覗くとこんな感じで、落ちたら100%海にドボン!!です!
これを撮影した時は完全に身を乗り出して撮影しましたが、ほんと生きた心地がしませんでしたねぇ…
特に海側の冊付近に立つと恐怖しか湧きません…というかここに立っただけで落ち着かないです。
撮影や景色を楽しむときは厳重な注意が必要です!
しかし、まぁよくこんな展望所を作ったものですねぇ
ちなみに訪れたのは初日の夕方で、ご覧の通り太陽が駿河湾の向こうに沈みかかっていました。
西伊豆の数ある夕日スポットの中に、もちろんこの烏帽子山は含まれていませんが、ここからも素晴らしい夕日と染まりゆく奇景を堪能できます。
登山という辛い思いをしながらも、この雄大な景色を人込みに紛れず独り占めできるのはまさに、穴場スポットと言えるでしょう。
まぁさすがにここが混雑するような場所とは思えませんが…
実は烏帽子山を遠くから眺めると山の先端の飛び出た岩に手すりが見えるんですよ!
まさかあんな所に展望所があるなんて想像つかないと思いますね…
烏帽子山周辺のおすすめビュースポット
烏帽子山周辺は雲見海岸や温泉、旅館施設が多くエリア自体は小規模ですが山と海に囲まれ、静かな観光を楽しむ事ができます。
烏帽子山のすぐ隣は海水浴場となっていて、更に漁船も多く止まっていました。
烏帽子山を登る前にサクッとぶらついたので少し紹介しましょう。
漁船の止まる位置から海の方へ歩くと、想い出岬というポイントに到着します。
ここからは海に浮かぶ牛着岩や周囲には様々な奇岩を眺める事ができ、更に天気が良ければ遥か向こうに富士山を確認する事ができます。
また、左を向くとここからは烏帽子山全体を眺める事ができ、烏帽子山は完全なる岩山である事が分かります。
烏帽子山はかつて海底にあったマグマの通り道が地上に現れたものなので、荒々しい姿の岩山になっています。まさに、ジオスポットという事になりますね。
実は雲見海岸からは正面の牛着岩の後ろに富士山が見え、望遠レンズにより調節すれば牛着岩の真後ろにいい感じに富士山が写り込む写真が撮れます。
残念ながらこの日はモヤがかかって薄ら富士山しか見えませんでしたが、空気が澄んでいれば富士山の美しい裾野と一致する見事な写真も撮れますので、ぜひ眺めてみてはいかがでしょうか。(グーグルマップに写真有り)
烏帽子山浅間神社(雲見神社)のアクセス、駐車場
アクセス
沼津IC及び長泉沼津ICから車で1時間45分
駐車場
鳥居の横に参拝者用の駐車場有り
3,4台程停められます。
最後に
西伊豆方面は主に夕日スポットや夕日に関わらず多くのビュースポットが多数点在しています。
かつての海底火山が生んだ奇景や奇岩など、見る人を圧倒するような光景、まさに自然が造り出した芸術品の宝庫でもあり、海岸沿いのドライブ中にも楽しむ事ができます。
今回紹介した烏帽子山もその一つで、海岸に突如天を指すように聳える岩山は思わず止まって眺めてしまう程存在感があり、更に信仰の山としての歴史のあるジオスポットです。
山頂まではキツイ階段や登山のような道もありますが、山頂からの眺めは素晴らしく、観光情報にはあまり載っていないので、静かに西伊豆の絶景を独占する事も可能です。
更に数ある夕日スポットの中でもマイナーな方だと思うので、混雑せず日の入りの瞬間を一人で楽しむ事も可能だと思います。
烏帽子山の山頂で夕日を独占したい!と思う方は、登山時間を計算した上で訪れてみてはいかがでしょうか。