群馬県南牧村の桜は首都圏に遅れること1週間後にちょうど見頃を迎え、今年も桜が見頃である4月上旬に南牧村を訪れました。
南牧村は群馬県の西上州に位置するひっそりとした村で、ほとんど人の手が付かない純粋な自然を満喫する事ができ、登山やキャンプにも適した観光地です。
村の周囲を見渡すと低山ながら奇景を有する岩山が多く、妙義山を始め個性的な山容の山々が連なる山岳エリアでもあります。
さて、歩行時間は少ないものの、適度なスリルを味わえる山岳エリアの西上州の南牧村で、今回は毛無岩という、南牧村の登山の中でも上級のランクに当たる山を登りました。
恐らく南牧村の山の中では碧岩・大岩に次ぐ上級ランクで、久々に緊張する登山となりました。
この日も晴天に恵まれ麓は桜満開となり、帰りに桜巡りを行い有意義な1日を過ごすことができました。それでは今回は南牧村らしい岩山の一つである毛無岩の登山道及び山頂からの大絶景の写真等を紹介したいと思います。
毛無岩のアクセス、駐車場
アクセス
上信越自動車道下仁田ICより車で約30分。
登山口に停められるスペース有。
駐車場
車は3~5台ほど停められるスペースが有ります。
トイレは無いので、途中の道の駅で済ませましょう。
南牧村の毛無岩とは?
群馬県南牧村は西上州の中でも特に西寄りで、長野県との県境に位置する村です。
今回登る毛無岩は南牧村の星尾地区という場所に存在する岩山で、”毛無岩”と呼ばれているように、山頂は草木が生えていない巨大な岩になっていて、まさに毛無の岩という、見たままの名前になっています。
地図を見れば分かりますが、すぐ隣には二百名山の荒船山があり、現在は繋がっていませんが、かつては荒船山まで繋がっていたのではないか?というような道が残っています。(現在、荒船山に至る道は掲載されていません)
標高は1300mと区切りが良く、南牧村の山の中では恐らく一番標高の高い山になっています。
コースは道場神社の登山口から登る尾根コースと、少し奥にある沢コース登山口の二ヶ所あります。
地図は全て破線の、いわゆるバリエーションルートとなり、この毛無岩は特に道が不明慮な所が多く、道迷いが起こりやすい山です。
特に沢コースは度重なる台風の被害により荒れていて、道迷いの発生しやすいコースなので、一般的には反対側の尾根コースをピストンします。
しかし、今回私は沢コースから挑戦し、帰りは尾根コースに向かう周回コースを選びました。
案の定沢コースは危険箇所は少ないものの、不明慮な箇所が多く、何度も立ち止まって考えながら進み、かなり苦労しました。一方、帰りの尾根コースは破線ルートでありながらもしっかりと明確な道になっていたので、こちらのコースを推奨している事がはっきりと分かりました。
南牧村の公式サイトから地図をコピーできるようになっているので、そちらもご参考ください。
沢コース登山口~相沢越
星尾地区の集落から更に道場川の上流方面に車を走らせ、道場神社を越えた所に沢コースの登山口があります。
ここには数台停められるスペースがあります。まぁ駐車場というより車の停められるスペースってところですね。
ちなみにトイレはありません。
さて、駐車スペースの横には登山口の看板があります。
折れ曲がって今にも倒れそうな看板ですが、ここで間違いないみたいですね。
でも、個人的にはこのようなひっそりとした登山口の雰囲気は好きです。
出だしから踏み跡の少ない道が続き、まさかの最初から、ん?ってなりました…
沢コース、これひょっとしたらかなりヤバいのではないか…と思わせる出だしです。
しかし、最初から諦めてはもったいないので、先に進みましょう!
沢コースと言うだけあって、見事に川沿いを進んで行くコースになっています。
途中、向こうに渡ったりする箇所があるので、少ないピンクテープを頼りに進んで行きましょう。
何てったって荒れ放題な沢コースです。
倒木はもちろん、岩もゴロゴロし放題で、思うように進めません。
難易度云々というよりも、いかに正しいルートを見つけて進んで行く事が試されている感ありますね。
途中、ロープ場もあります。
ここはトラバースしながら進んで行くロープ場で、雨上がりには渡りたくないルートです。
特に増水時には注意が必要かと思います。
沢を越えると、少し道らしい道が現れ一安心できますが、油断は禁物。
いつ不明慮になるか分からなので、ここも気を引き締めて歩きたいところ。
暫く進むと、木にペンキが塗られ、奥に続いていますがこれは間違いで、このペンキの跡を追わないように!!
まぁかなり急な斜面で明らかにコースではない事は分かると思うので、気にせず進みましょう。
今の赤ペンキがこの斜面にあります。
道はこの真っすぐ続いたルートが正解です。
くれぐれも、急斜面の赤ペンキを追わないように!
その先もこれまた分かりにくいですが、目をよく凝らすと斜面に細い道が浮き出ています。
最初この道に気づかず、あれ?間違えた?と思い暫く周囲を見渡したりしました。
さっきのペンキが正しいのか?と最初は思いましたが、あれは違う!と思っていたのでよく見てみたら細い道になんとか気づきました!
もしこの道に気づかなかったらどうしただろう…
しかし、ほとんどただの斜面にしか見えません…
恐怖の斜面を越えるとまた安心な道に差し掛かります。
いや~ずっとこんな感じの道がいいと願いながら歩いても…
また、沢ルートになります。
倒木や岩が道を遮り、歩きにくいルートがまた続いてしまいます。
しかし、ここらへんはピンクのリボンがきちんと付けられているので迷う事は無いと思います。
その後も落ち着いた道や沢ルートを繰り返しながら進んで行きます。
途中のピンクリボンやケルンなどを見落とさないように行きましょう。
そして、久しぶりに山遊会さんの看板が現れました。
この看板を見つけると、正解だと分かるので非常に安心します。
先に進んで、ふと見上げると…
なんだこれ!?と思うような巨大な岩が聳えているではないか!
どうやらこれはイデミという岩で、全て岩でできた岩山ですね。
果たしてこれは登る事ができるのでしょうか?
しかし、恐ろしいほど存在感のある岩で、まさに西上州!って感じです。
イデミを越えると造林小屋が見えてきます。
ここに来て人工物を見ると安心する。
中を確認しようとしましたが、先が気になるので立ち寄りはしませんでした。
その後も相変わらず沢や巨岩が続きます。
小屋を越えてからは矢印や看板が少し目立つようになりました。
しかし、設置されてから長い年月が経っているように感じますね。
沢ルートを終えると雑木林に差し掛かります。
ここから先は多少歩きやすくなるものの、道迷いが起きやすいルートになるので注意が必要です。
ご覧の通りどれが道?っていう感じのルートが多発します。
そして、一番厄介な場所がここ。
この場所は分岐点みたいになっていて右の方が正解っぽくなっていますが、ここは左に進んで行きます。
右に行くとあれ?ってなるので絶対に右に入らないように。
そう、こちらの薄暗く道がはっきりとしない方が正解なんです。
これ、木に丸印じゃなくて矢印⇚を書いた方がいいと思う。
相沢峠へのラストスパートは不明慮な雑木林ゾーン!
なんと、先ほどの黄色い丸印のポイントからリボンや丸印が消え、自分でルートを判別しなければなりません。
沢ルートは辛うじてリボンや印が残っていましたが、ここからは全くと言っていいほどヒントがありません…
一見簡単な道に見えますが、実際どちらへ進んでよいか分からなくなった瞬間パニックに陥ります。が、幸いにもGPS付きのアプリを見ながら何とか正解の道を探し当ててここは進みました…
いや~アプリが無かったら本当に危なかったかも知れませんね(汗
しかし、恐ろしいほどヒントが無く、ルートもほぼ消えつつあるので、ここは慎重に行きましょう。
相沢越~毛無岩山頂
そして遂に念願の相沢越に到着!!ですが…
!?
何という事だ!標識が完全に壊れているではないかぁぁぁぁ!!!!
最早ここが相沢越なのかも分からない状態になってるw
ただ、よ~く見てみると「相」という文字が何とか確認できるので、ここが相沢越である事は間違いないみたいですね!
しかし、誰かが破壊したような光景ですが、もちろん自然にこうなったんですよね?
僕は名探偵でもコナン君でもないので真実は分かりませんが、毛無岩へ向かいましょう!
ここから先もバリエーションルートである事には変わりませんが、先ほどの沢ルート程不明慮では無いので、安心まではいきませんが迷う事はないと思います。
相沢越から数分で分岐点の到着します。
地図によると矢印の方に進めば毛無岩へ到着できます。
もう一つは別ルートで恐らく迂回ルートではないかと思います。
しかし標識を見ると、荒船山、黒滝山と書いてあり、かつては荒船山から黒滝山まで繋がっていた事を思い知らされますね。
現在の地図に記載されていないのは、やはりほとんど人が歩かなくなったからでしょうか?
分岐点から暫くは登りに差し掛かり、かなり狭い登山道になります。
狭いですが、きちんと道である事は確認できました。
そして、やっと安心して通れるルートに出ました。
展望は望めませんが、一本道で迷う事はなく安心して進めます。
しかし、忘れてはならないのはここもバリエーションルート。
両サイドは高度感があり、落ちたらかなりヤバい箇所なので、慎重に。
暫く歩くとおや?何やら立派な岩が見えてきましたね!
どうやらあれが毛無岩で、名前の通り毛の無い岩です。
しかし岩はそれほど大きくなく、山の山頂部にちょこんと乗っかっている感じの岩です。
山頂が見えたので、もう少し。
幅も狭く所により急な岩場もあるので慌てずに進みましょう。
おっ!あれが毛無岩の本体です。
近くに来るとやはり大きいですね。
さて、どんな難所が待ち構えているのでしょうか?
いよいよ核心部である毛無岩本体に登ります。
立ち止まって見上げると、右がスパッと切れていて、左も崖になっています。
えっ!?ここを登るの?と思い周辺を見渡しましたが、どうやらここを登るみたい…
なんか、かなりヤバい気がするのですが…
まぁここまで来たらやるしかない!と思い登りました。
しかしこの崖、意外にもろく、途中崩れて一瞬バランス崩し、心臓止まるかと思った😨
一番幅が狭い所で靴一足分ですかねぇ。
両サイドとんでもない崖で下を覗くことができない…
ここは無心になって前だけ見て登った方が良いかもしれません。
毛無岩山頂の絶景
そして遂に、恐らく南牧村の最高峰である毛無岩の山頂に到着です。
山頂は狭く、まさに断崖絶壁の場所なので落ち着きません…
山頂の様子は後でお見せするので、先に雄大な絶景をご覧あれ!
まず、目に飛び込んでくるのはやはり浅間山ですね。
先ほど歩いてきた道の後ろに聳える秀麗な山。
ちょうど前日に強い雨が降ったらしく、山は大雪となったのでご覧の通り真っ白で神々しい姿になっています。
左手前にはこれもユニークな姿である日本のテーブルマウンテンこと荒船山がはっきりと見えますね。
本当に恐ろしいほどまっ平な山頂です。
西を向くと真っ先に目に飛び込んでくるのが、立岩です。
星尾集落から眺める立岩とはまた違う姿です。
このような姿の立岩は初めてで、全体的に複雑な形になっているんですね!
その奥にこちらも神々しく聳えるのはそう、八ヶ岳です。
八ヶ岳だけでなく、右の方に目を向けると蓼科山まで確認する事ができました。
少し拡大すると赤岳もはっきり分かりますね!
南牧村と八ヶ岳って、地図を見れば分かるように、意外に近いんですね。
しかし、どの山からも八ヶ岳がはっきり見えないんです。
お隣の立岩や烏帽子岳、シラケ山からも山頂部だけちょこんと見えるだけなので、南牧村の山だとこの毛無岩のみはっきりと八ヶ岳を眺める事ができます。
立岩の真下には星尾集落が見えますね。
こうして見ると、とんでもない山奥に位置している事が分かります。
八ヶ岳の左側にも雪が降り積もった山々が確認できますが、これらは奥秩父の山々でしょうか?
恐らく甲武信ヶ岳や瑞牆山、金峰山なども眺められる最高の展望です。
この日は特に浅間山がカッコよかった!
まるで富士山のような風貌で、どの山よりも真っ白でした。
北方面は妙義山の姿が確認できます。
表妙義、その後ろに裏妙義が連なり、相変わらずギザギザの山容が恐ろしいですね。
ちなみに手前にはメンべ岩も見えますね。
さて、ここで山頂を紹介
見ての通り山頂は断崖絶壁になっており、落ちたら怪我じゃ済まないかなり危険な場所になっています。
全体的に細長く、何故かナイフリッジ状になっている箇所もあり、渡るのが少し怖いです。
特にここが怖い…
覗くには勇気が必要。
何故か山頂に着いた途端に風が強くなり、写真を撮るのもかなり怖かったです。
というか、落ち着かない山頂です。
毛無岩山頂~道場神社
さて、後は下るだけ。
ここからは尾根コースへ向かう事にします。
分岐点までは暫く岩場の続く道なので、慎重に渡る必要があります。
こちらもかなり狭い箇所があり、暫くは緊張する道になりますが、印などがあるので迷わずに進めると思います。
そして分岐点である毛無岩東のコルに到着しましたが…
またしても破壊され、文字も読めないw
どうやら看板は2つ立てられていたらしく、1つは斜めになりながらも立っていますが読めず、もう片方は完全にノックアウトです…
ノックアウトの方の写真に記した矢印の方に進めば道場神社の方に出ます。
この分岐点を真っすぐにトヤ山方面に進んでしまうと、分岐点はあるものの大回りになってしまうのでここは間違わないようにしましょう。
さて、ここからは尾根コースになります。
こちらのコースは広く不明慮な箇所はほとんど無く、安心して進めるコースです。
行きに体験した沢コースに比べ、安定した道が続いています。
ほとんどぼけーっとしていても迷う事の無い道ですね。
やはり尾根コースが主流となると思います。
途中、毛無岩の展望所に到着します。
見上げるとそこには立派な岩が聳えています。
先ほどあのてっぺんにいたんですね。
落ちたらひとたまりもない事がはっきり分かる光景です。
けど、不思議なことに、毛無岩って本当にこの部分だけ岩になっている山なんですよね。
しかも麓からも確認する事はできず、まさに秘境の岩山って感じです。
その後も安定した道は続きますが、途中ロープ場があるので注意しましょう。
とは言え、難易度の高いロープ場ではないので、サクッと進めます。
危険箇所もほとんどないので、特に言う事もありませんが、時折西上州らしい岩場も登場します。
この先もテープが多数有り、迷うことなく進めます。
そして林道に差し掛かり、ゴールが近づいてきました。
尾根コースですが、最初の方は沢コースと同じような登山道になっています。
しかし、こちらの方が道もしっかりしており、多少歩きにくいものの不明慮ではないので安心して歩けます。
途中立ち止まって写真を撮るほど余裕があります!
やはり尾根コースが主流である事がここまで来て納得します。
沢を下り、林道を進んで行くと広い道に出ます。
目の前の川の向こうに見えるのは道場神社です。あそこまで行けばスタート地点も近いです。
と、この写真には奇妙な光景が写っているのですが、お分かりでしょうか?
そう、この川は先程歩いてきた川なんですが、流れがここで止まっています!
ここでせき止められているのか?或いは地下に流れているのか分かりません…
少し石をどかしましたが、仕組みが分かりませんでした。
しかし、せき止められた先に行ってみると再び流れていいたので、恐らく地下に水を通しているんだと思います。
さて、向こう岸に到着するとそこには道場神社が鎮座しています。
社殿正面には巨大な木が聳えています。
恐らく御神木でしょうか?
近づくと根の部分が大きく、どっしりとした木である事が確認できます。
鎖が付けられているのは何でしょう?
倒木防止の為でしょうか。
よく見てみると木魂と書かれ、いかにも神霊の宿りそうな風貌の御神木でした。
道場山神宮は毛無岩登山口に鎮座し、恐らくこの集落の守り神のような存在であると思うが、道場と書かれているので、かつては修験者たちの道場の役割を果たしていたのではないかと感じます。
境内は綺麗で、社殿も最近新しくされたような感じになっていて、いかにも集落の人々たちが大切に管理している事が分かります。
特にこの言葉はありがたいというか心に刺さる。
助けてくれると書かれていますが、何でもかんでも助けてくれるのではなく、しっかりと自分の置かれた状況や状態をしっかり受け入れた上で助けてくれるという意味で、優しさと厳しさが交じり合った、まさに日本の神様らしさが溢れています。
さぁ、後はこの道を進み駐車場へ向かうだけです。
周囲を見渡すとのどかな風景が広がります。
南牧村は石垣が特徴な村で、村の至る所に石垣が見られます。
途中何度も足を止めて、日本の原風景を肌で感じ取る事もできますね。
南牧村のおすすめ登山
秘境南牧村は山、川、と言った自然豊かな村で、集落は今でも日本の原風景を感じられる光景を目の当たりにすることができます。
そんな身を置くだけで癒しを感じられる南牧村には登山可能な山も多数あり、今まで登った南牧村の山を紹介しますので、興味のある方は訪れてみてはいかがでしょうか。
最後に
毛無岩は荒船山のすぐ近くにひっそりと聳える南牧村最高峰の岩山で、麓からは確認する事はできませんが、山頂の岩は堂々たる姿になっています。
今回登った毛無岩は南牧村の登山の中でも難易度が高く、特に道迷いに気を付けなければならない山です。
しかし、南牧村最高峰だけあって景色は素晴らしく浅間山を始め、南牧村の山で唯一八ヶ岳がはっきり見える山頂で、非常に登り応えのある山だと思います。
また、毛無岩の麓の星尾地区は荒船山方面に至る道路沿いに桜の木が多く、桜シーズンには素晴らしい光景を目の当たりにする事ができ、更に秋は紅葉も素晴らしく、登山だけでなく、散策も楽しめる地区になっているので、ぜひ立ち寄ってみてはいかがでしょうか。