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入沢の滝|国内でも珍しい裏見の滝及び特殊な不動明王が安置される群馬の秘境滝!

関東の秘境と言われる群馬県の西上州は奥秩父、八ヶ岳、浅間山などの名だたる名山に囲まれた場所に位置し、標高の低い山が連なる奥深い山岳エリアです。

特段目立つ山は無いものの、見る人を圧倒するような岩山が多く、かつては多くの修験者が行に励んでいたであろうと思える岩場や滝場の形跡も多く見られ、更に大日如来の化身である不動明王が多数安置されている事から、西上州一帯が一大の山岳修験の道場となっています。

過去に多くの不動明王が祀られている山や寺を訪れ、今回もまた西上州の不動明王信仰の一つである入沢ノ滝という場所を訪れました。

滝は滝でも一般的な景勝地という滝でなく、いかにも修行の為に存在する風貌の滝で、そこには神秘的なお不動様も祀られていました。

なので、今回は山奥にひっそりと流れる入沢の滝の姿とその場で感じ取った出来事等をお伝えしたいと思います。

お不動の山、御荷鉾山の真下に位置する入沢の滝とは?

入沢の滝は神流川沿いの柏木という集落から分岐した入沢川を上流方面へ登った所にあり、川を遡るに連れ幽谷さが増し、暫くすると巨大な岩壁から落差40mを誇る滝が出現します。

滝の麓にはお堂のような小屋が建てられ、中は護摩壇が設置されている事から護摩堂を兼ねた堂宇だと思われます。

滝をよく見てみると、岩壁に鎖状のスロープが確認でき、どうやら滝の裏側を歩くことができる滝になっており、滝の下部には滝へ続く道も整備されているので、自由に近づくことが可能になっています。

さて、この入沢の滝ですが、何が凄いのかと言うと、

・国内でも珍しい裏見の滝が見られる

・もはや原形が分からない神秘的な身けずり不動

・お不動の力?翌日恐ろしいほど清々しくなった!?

の3つのポイントが挙げられます。

実は下調べの段階でこの滝はいわゆる、観光のための滝ではなく、修験者や山伏たちの行場の面が強い滝であると事は理解していました。

しかし、毎度西上州の山に登っては、いかにも行場の趣を感じる岩窟や滝に遭遇しているので、大体の様子は分かっていたつもりでしたが、実際に訪れてみると肌でこの滝は他の滝とは違う!という感情が瞬時に芽生え、まさに霊場である事を感じました。

観光としての滝ではない神秘的な入沢の滝を3つのポイント毎に見てみましょう。

国内でも珍しい?裏見の滝

入沢の滝は全国でも珍しい裏見の滝の一つです。

裏見の滝とは読んで字の如く、滝の裏側に廻れ裏から滝を眺める事のできる滝の事を言います。

全国でも数少ない裏見の滝は主に岩窟の前を流れ落ちる滝が多く、滝の裏には窪みがあり、ちょうど人が通れる形が条件になります。

正面から見ると分かりづらいですが、横から眺めると裏見の滝である事が分かるので、そちらまで行ってみましょう。

秘境感溢れる滝ですが、遊歩道はしっかりしていて、歩きやすいです。

滝に近づくと、そこには石灯篭が置かれています。

奥にもありますが、手前には3基の石灯篭があります。

よく見てみると、常夜灯と書かれ、一晩中明かりを灯す為のものですが、寺社に置かれている常夜灯は信仰の対象として置かれているそうです。

これらは明治43年に奉納されたらしく、100年以上前のものですが、かなり新しく見えますね。

常夜灯のすぐ先には、おや?滝がもう目の前に現れています!

写真を見れば分かりますが、滝の裏側には道が続いていますね。

もちろん人工的に作られたのではなく自然にできた道ですが、こうも見事に裏に行ける道があるなんて、偶然とは言え不思議です。

近づくと流れ落ちる滝に接近します。

もう目と鼻の先に滝があるなんて、こんな光景はめったに見れません!

ギリギリ当たらないようになっていますが、滝の目の前を通ると若干濡れ、下も滑りやすくなっているので、ここを通過する時は注意しましょう。

ご覧の通り手を伸ばせば直に滝に触れる事が出来ます。

水量もそこまで多くないので、触り心地はちょうどよかったです!

恐らくこの場で僧侶たちが水垢離などを行っていたに違いありません。

振り返るとこんな感じ

滝の裏側に道が続き、すぐ横には止まる事の無い滝が流れ落ちています。

まさに「裏見の滝」という名に相応しい滝ですね。

まるで水のカーテンのようだ。

見上げて眺めるとその迫力さが伝わると思います。

この光景も裏見の滝ならではの光景であり、全国で探してもなかなか見られる光景ではないので、貴重な体験だと言えます。

裏見の滝の先には身けずり不動があり、そこから眺めると護摩堂と、先ほど歩いた道が見えます。滝から流れ落ちた水は入沢川、そして麓の神流川へと合流します。

西上州には滝も多く、それぞれの村や町ごとに三名瀑布が名付けられたり、観光スポットとして紹介されています。

その中には実際に滝行に使用された滝も多く、西上州の不動明王信仰で有名な黒瀧不動と威怒牟畿不動には入沢の滝と同じく「裏見の滝」が存在します。

どちらも巨大な岩壁から流れ落ち、滝周辺は石仏や祠などの跡や岩窟もあり、何と言っても異空間というか霊界への入口のような怖れを感じられる場所です。

滝の大きさや規模は威怒牟畿不動の滝の方が上ですが、水量は入沢の滝の方が多いので、まさに裏見の滝だ!という実感が湧きます。

最後に動画↓

 

日本で唯一?身けずり不動とは

先ほどの滝の写真の中にも写っていた通り、入沢の滝には常夜灯、滝の先には不動明王が祀られ、ここが修験者たちの滝行の場である事が分かると思います。

滝の下にはご覧のような建物があります。

扉は開きませんでしたが、中を覗くとはっきりと護摩壇がありました。

護摩壇の先には小さいながらも不動明王が祀られ、ここで護摩が行われていただろうと想像できます。

しかし、護摩壇と言えば煌びやかな形式のイメージでしたが、この護摩壇は木製で質素な形式の護摩壇でした。

更に護摩壇の周りには何故か紙垂が取り付けられている事から、独自の護摩を焚いていたのではないかと思われます。

確かに建物も堂宇には見えず、どちらかと言えば社のように見えなくもありません。

しかも、正面には注連縄とここにも紙垂が取り付けられていました。

いつの時代からここが霊場になっていたかは分かりませんが、昭和初期までは西上州一帯で参詣者が多かったそうです。

ただ、護摩壇にはお供えがされていたので、今でも麓の方がここへ来られているのではないかと感じます。

さて、先ほど紹介した裏見の滝の先には身けずり不動が祀られています。

身けずり不動は岩壁の最奥に位置し、そこは若干の岩窟になっており、いかにも神聖な雰囲気を醸し出す場所に安置されていました。

身けずり不動の周囲には石垣が組まれ、その上に玉垣が敷かれ、その中に不動明王が安置されていました。

これが身けずり不動ですが、ご覧の通り原形を留めておらず、更に不動明王の姿もよく分からない状態になっていますが、この不動明王の身を削り、削られた粉を身に付けると万病に効くと信じられた為に、修験者たちが少しずつ身を削って今の姿になったそうです。

元々修験者や山伏は急峻な山や岩場、滝、岩窟など危険を伴う場所で修業し、その山で得られた”験力”という力で村人たちの病気や病を治したり、薬を処方するなど、人々を救済する存在であります。

恐らくここに祀られた不動明王の前で幾度も修行を行い、その際に不動明王の一部を削り麓の人々達へ届けて不動明王の力を分かち合ったのでしょう。

また、身けずり不動と呼ばれるのもこの風習から来ていると思われます。

それにしても削られ方が生々しく、どれほどの大きさであったかも分からない形で存在し、妙に神秘性を感じます。

写真で見ると壊されたのではないか?と思うかも知れませんが、実際にこの不動明王を前に立つと、とんでもない!寧ろ物凄いエネルギーを感じ、見た瞬間手を合わせ、頭を下げている自分がいました。

削られた面を少し触ってみましたが、物凄く滑らかで、いかに丁重に削られていた事がはっきりと分かります。

原型をとどめていないからこそ神聖さが漂い、今まで山の中で見てきた不動明王よりも怖れを感じてしまいました。

身けずり不動の後ろには鉄剣が奉納され、よく見ると原型をとどめない鉄剣も確認でき、かつては夥しい数の奉納がなされていた事と、この不動明王への篤い崇敬を感じます。

不動明王は他にも祀られ、玉垣の隣のも安置されていました。

こちらははっきり不動明王と分かり、更に隣には巨大な鉄剣も奉納されています。

巨大な鉄剣は二本奉納され、一つはこの不動尊である御滝(山)不動ともう一つは御荷鉾山不動と書かれ、これは入沢の滝のすぐ真上に聳えるお不動の山、御荷鉾山を指しています。

現在はスーパー林道という道路が作られ、山の所々が削られていたり荒れている箇所も見られますが、御荷鉾山と書かれた鉄剣が奉納されている事から、ひょっとしたらかつてはこの御滝不動から愛宕山、御荷鉾山まで繋がっていたのではないかと想像する事もできますね。

今までに不動明王が祀られている山はいくつも登ってきましたが、このような形の不動明王は初めてでした。

不動明王の一部を削り、その削られた粉を麓の人々に分かち合うという独特な信仰はこの村の修験者たちの風習のように感じ、いかに実践的な信仰であることも理解できますね。

身けずり不動の効果とは

さて、入沢の滝の珍しさや身けずり不動の神聖な姿について語りましたが、実はこの日は笠丸山を登った後の帰りがてらこの滝を訪れ、そのまま家に帰りました。

すると翌日、起き上がったと同時に妙に清々しいというか物凄くスッキリとした感じで目覚める事ができました。

まぁ大概登山や旅の翌日は、自然と触れ合った為か体が軽くスッキリしているという体験は何度もあり、登山が趣味の方々に聞いてみてもやはり同じような現象が起こっているみたいです。

しかし、今までの登山以上に体がスッキリしているのは滝に触れ合ったからなのか?或いは身けずり不動を触った事によるものかは分かりませんが、いずれにせよこの入沢の滝の霊気溢れる場と実際に滝に触れ合った事で自然と水垢離という修験道の禊が行われていた為にこのような現象が表れたのだと思います。

かつての僧侶たちも深山幽谷な場所で自然と触れ合う事でこのような現象が起こり、身も心もスッキリした状態がいわゆる”験力を得た”状態であり、この身軽さにより物凄い行動力を得た僧侶たちの姿がまるで神のような存在に見え、村人たちはこのような僧侶たちを怖れ敬ったのではないかと考えられます。

また、滝だけでなく、やはりこの滝を見守るかのように佇み、神聖な雰囲気を醸し出す身けずり不動の存在も大きいと思います。

入沢の滝までの道のり、駐車場

さて、ここで入沢の滝までの道のりをサクッと見て行きましょう。

まず、国道462号の柏木という集落にある神流町ガイドマップの所を矢印の方向に進みます。

暫く林道を進むとこのような分岐点に到着し、看板の通り入沢の滝方面へ進みます。

ここから先はコンクリートではなく、砂利道が主流で、所々落石や道も細くなるので注意が必要です。

途中の急坂で運悪くスタックしてしまったので、車は途中に停めました。

車は滝のギリギリまで進める事は可能ですが、車種によっては危険を伴う為、そこは自己判断でお願いします。

ちなみに途中にはこのような車を停められるスペースがあるのでご安心を。

私が停めた所はこの辺ですね。

国道の入口から半分以上進んだので、ここから歩いてもさほどかかりません。

ここからは急な坂道が続いていきますが、特段危険箇所はありませんので、落石に注意しながら進みましょう。

するとまた分岐点に到着します。

いよいよここから入沢の滝への入口となり、看板には20分と書かれていますが、実際は歩いて5~10分くらいで滝に到着します。

ちなみに反対側の道は御荷鉾山の投げ石峠へ続いているそうですが…

ご覧の通り巨大な岩が転がっていて、進むのは困難かと思います。

復旧されるのかどうか分からないので、先に進むのはどうかと少し迷いますね。

ここから先もいつ落石の被害に会うか分かりませんが、今のところはしっかりとした道になっていたのでご安心ください。

また、意外にもコンクリートの道になっていて、ここら辺は車でも余裕で走れそうです。

私の足では先ほどの分岐点から5分で到着しました。

ゆっくりめに歩いたので、まぁ20分はかからないと思います。

ちなみにここにも車を停められるスペースは十分あるので、車でここまで来られる方は滝直前まで車を走らせた方が良いかもしれません。

意外かもしれませんが、トイレが完備されています。

しかし、水洗式ではないので入る時は注意しましょう。(紙もありました)

入沢の滝のアクセス

 

関越自動車道、本庄児玉ICから462号を神流湖を目指し、柏木という集落から入沢川沿いの林道を登り、看板に沿って進むと滝直下に到着します。

公共交通機関の場合はJR高崎線新町駅から日本中央バスの万場、上野村ふれあい館方面行のバスに乗り、「柏木」で下車。

バスの時刻表はこちらから↓

mb.jorudan.co.jp

最後に

西上州は不動明王の信仰が色濃く伝わる地域であり、今回紹介した入沢の滝は神流町(旧万場町)を代表する修験道場の一つです。

道場となる滝は国内でも珍しい裏に廻れる滝や日本で唯一の身けずり不動と呼ばれる独特の不動明王が祀られ、今までに見た事のない光景を目の当たりにする事ができます。

全国に存在する滝場は基本立入り禁止が多く厳しい規制がありますが、入沢の滝は実際に修行が行われた滝場を直に行き来でき、更に観光がてら必然的に修行もされるという、まさに一石二鳥の体験が可能な滝なので、ぜひ神流町を訪れたら立ち寄ってみてはいかがでしょうか。