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岩手山登山|ジオスポットマニア必見!焼走り登山口から日帰り登山

五月晴れが続く5月の下旬、ここ最近は5月でも暑さを感じる陽気が続き、雪解けの速度も早まっている為、思い切って東北の山を目指し、岩手の名峰岩手山を登りました。

約7、8年ぶりの岩手山を訪れ、前回は定番の柳沢コースを登ったので、今回は北東方面の焼走り登山口から山頂を目指してみようと思いました。

登山口の名前にもなっている「焼走り」とは、熔岩が走るように流れ落ちる光景から付けられたそうで、噴火も約二百数十年前と比較的最近の噴火であり、実際に熔岩の流れる姿を目撃した人はさぞかし恐ろしい光景だったのではないかと思われます。

今回登った焼走りコースは未だに熔岩の流れた跡が生々しく残り、樹木の発生も許されない荒涼たる景観を成し、噴火の恐ろしさを思い知らせるコースで、ジオスポットが好きな人にとっては非常におすすめです。

歩行距離は柳沢コースより若干長くなりますが、日帰りでも十分に可能なので、今回はダイナミックな噴火跡を間近に見られる焼走りコースを紹介したいと思います。

岩手山のアクセス、駐車場(焼走り登山口)

 

東北自動車道西根ICから車で約15分で到着。

登山口には公衆トイレ付きの巨大な無料駐車場が完備されています。

駐車場はこんな感じで広々としており、駐車場からは岩手山がよく見えます。

ちなみにトイレは24時間利用可能で、水洗の様式でした。

焼走り登山口~第2、第1噴出口跡

広い駐車場からすぐの所に焼走り登山口があります。

ここで注意していただきたいのは、間違えて熔岩流の自然観測路に入らないように注意しましょう。

私は最初間違えてこちらの自然観測路の方に進み、暫く熔岩流を歩いてしまいました。

真っ黒で今で生々しい姿を見られる不思議な空間です。

しかし、ここから登山道には繋がっていないので、岩手山を登る方は登山口に進みましょう。

さて、ここから山頂まで一気に登りましょう!

最初は気持ちのいい森林浴を浴びながら進んでいきます。

5月の半ば過ぎなのでそこまで寒くはなく、むしろこの辺りは暑いくらいでした。

暫くは平坦ですが、徐々に角度も上がってきます。

しかし、まだまだ辛いという感覚は無く、むしろ清々しい登山を味わえる道です。

この辺りの木はカエデでしょうか?

よく見ると紅葉のようですが、やはりカエデのようですね。

先に進むと、小さい岩から少し大きな岩も見られるようになりました。

恐らくこの石たちは熔岩で、実はこの登山道のすぐ隣には熔岩流が広がっています。

なので、この登山道は溶岩とちょうど境目あたりになります。

最初のポイントである第2噴出口跡に近づくにつれ、道も急になってきます。

この階段が意外に長く少ししんどい所です…

途中、セミを発見しました。

5月なのにセミ?と思いますが、どうやらこれはハルゼミという種類らしく、この時期から鳴き始めるそうです。

夏には嫌というほど鳴き声や姿を見ますが、この時期に出会うと珍しく思えしまいますね。

セミはさておき、遂に第2噴出跡に到着しました。

ここからはダイナミックな噴出跡を見る事ができるので、早速進みましょう。

ここが第2噴出跡です。

地面は真っ黒で、奥に流れた跡が見えますね。

先端は崖になっていて危ないので注意しましょう。

しかし、眺めはよく、麓の黒い部分は流れ着いた溶岩が生々しく残っています。

噴火当時は真っ赤だったのでしょうか。

右奥の綺麗な山容は姫神山ですね。

左右の景色も開けています。

山頂まではまだまだ時間がかかりますが、ここからはいい景色が眺められます。

振り返ると岩手山全体が見えます。

先は長そうですね。

第2噴出跡の次は第1噴出跡が待っています。

第1噴出跡まではそこまで時間はかかりませんので、どんどん進みましょう。

10分くらい進むと、おや?何やら視界が開ける予感がします。

そして第1噴出跡に到着です。

ここからも景色は良く、先ほどの第2より若干標高が上がっているのが分かります。

地面も真っ黒で、ここから熔岩が噴き出した場所である事が実感できます。

先の方に行くと熔岩跡の様子が分かります。

ここからあの黒い部分まで勢いよく流れて行ったんですね。

噴出跡~茶臼岳

さて、第2、第1跡を過ぎると、徐々に急な上り坂になってきます。

特に危険個所はありませんが、気を緩めずに進みましょう。

暫く進むと、残雪がありますね。

しかし、この残雪は序章に過ぎなかったのです…

残雪を抜けると、視界の広がる登山道に出ます。

景色はよいのですが、かなりの急登で、しかも砂が足を持っていき、思うように前に進めないのが難点です。

振り向くと景色は最高です。

先ほどの噴出ポイントと同様、立ち止まってしまうほど素晴らしい景色が広がっています。

左斜めを見ると山頂部が見えます。

山頂はまだまだ遥かに遠そうですが、そろそろ森林限界が近いのかもしれません。

この箇所は富士吉田の五合目から六合目に至る登山道の雰囲気に似ていますね。

あちらは緩やかな坂道なので、ここまできつくはありませんが、やはり歩いてみると富士山の登山道に近いです。

展望の良い登山道を進むと、再び木々の中に入っていきます。

どうやら森林限界ではなさそうですね。

ここから先は暫く展望の無い地味な登山道を進む事になります。

そして、地面には残雪が再び現れ、少し嫌な予感がします…

登山道も東から北側へ沿うように進み、やはりまだまだ雪は多く残っているようです。

無雪期だったらこの辺りは危険個所ではありませんが、このような残雪だと注意深く進む必要があります。

できれば軽アイゼン程度は持参した方がよさそうです。

全てが雪道ではありませんが、積もっているところは何箇所かありました。

雪道をトラバースするのはやはり緊張します…

そしてこれが地図に書いてあった祠のようです。

ここまで来れば、避難小屋まであともう少しなはず。

祠から先は何故か雪がほとんどなく、その代わりに急な登りになります。

雪は無いと思ったら大間違い、まだまだ雪はありました。

夏だったら何の問題もありませんが…

そして、避難小屋手前あたりまでやってきましたが、この辺りは見事な残雪地帯になっていました。

しかし、これはこれでいい景色だと思いますね。

地上ではすっかり雪と縁がないにもかかわらず、標高2000m近くではまだ冬を感じる事ができます。

しかし、このような雪道だと一瞬どちらに進んでよいか分からなくなることがあります。

かすかな踏み跡をたどりながら進んでいきましょう。

平笠不動避難小屋~岩手山山頂

そして山頂直下である平笠不動避難小屋に到着。

立派な避難小屋で、営業していそうな山小屋にも見えますね。

避難小屋からは山頂部が見えますね。

ここから山頂まではひたすら急登をするだけです。

避難小屋周辺はたっぷり雪が積もっていました。

看板も埋もれていて、情報がはっきりと分かりませんが、足跡を追って向かいましょう。

しかし、何度も言いますが、無雪期ならすんなり進む事ができます。

道が見えてきました。

ここから山頂まで最後の登りです。

最後はまさに急登という感じで、ひたすら砂利道を登り、ここも富士登山のような雰囲気を感じます。

そしてラストの登りには雪が一切無く、先ほどのような雪は一体どこへ行ったんだ?と思うほどこの辺は全く積もっていません。

ちなみに振り返ると絶景が広がっています。

山頂からゆっくり眺めたいところですが、我慢できず振り返って写真を撮ってしまいます。

あまりにも素晴らしい光景が広がっているので、なかなか前に進みません…

急登ですが、景色が良すぎて苦しく感じません。

先ほどの避難小屋が小さくなってきました。

もうそろそろ山頂部に到着しそうです。

そして、ようやく山頂部に到着しました。

ここから山頂まではほんの少しなので頑張りましょう。

こんもりとした坂を登っていくと…

どうやらあちらが山頂のようです。分岐点からすぐに山頂に到着するみたいですね。

岩手山山頂からの絶景

そして遂に岩手山山頂に到着しました!

遮るものが一切なく、文句なしの360度の大展望を楽しむことができます。

まずは先ほど登ってきた方面の景色。

すぐ隣の八幡平の山々でしょうか。

まだまだ雪が降り積もっていますね。

その奥に見える山は森吉山かな?

西の方の山々は素晴らしい!

写真右手の雪山は秋田駒ヶ岳!

こちらは残雪期の初夏に訪れるのがおすすめです。

左奥の山は和賀岳だと思うのですが…

そして、秋田駒ヶ岳と和賀岳の間の奥の方に聳えるちょこんとした雪山が…そう!鳥海山です!

うっすらとしているので、最初は雲かと思いましたが、よーく見てみると山である事が分かり、調べたら鳥海山でした。

美しいピラミッドでしかも雪を被った神々しい姿で拝む事ができました!

頑張って拡大してみました。

青空にうっすらと浮かぶように鳥海山の神秘的な姿がお分かりだと思います。

これはまさに、神体山ですね!

北東方面です。

こちらはの方は特に高い山は無く、平野が広がっています。

写真右下の黒い部分は焼走り登山口ですね。

東部には…

正面に聳える一際高い神々しい独立峰は早池峰山です。

遠野三山の1つである早池峰山は標高2000mを越えています。

あちらは太平洋側の山なので、雪がほとんどありませんね。

景色も素晴らしいですが、岩手山は火口もダイナミックで、まるで富士山のような大きな火口を形成しています。

火口の中心部に注目すると、こんもりと盛り上がっていますが、この形何かに似ていませんか?

そう…おっぱいですね!

この山は通称”おっぱい山”と呼ばれ、岩手山の知る人ぞ知る珍名箇所になっています。

たしかに、言われてみるともうそれにしか見えなくなってきましたが…

しかもこのおっぱい、奥側にもちょこんとあり、左右不揃いのおっぱいになっていますね。

どのような理由で登る事を禁じられたのかは分かりませんが、おっぱいと言われると、完全にそれにしか見えず、写真を撮るのも恥ずかしくなってきます…

まぁそんな事は気にせず、おっぱいの向こうには神々しい早池峰山が聳えています!

ちなみに山頂はこんな感じ。

富士山の剣が峰とは違い、最高峰はゆるやかなお椀のような形になり、広さもそこそこあります。

中心には岩手山の標識と手持ち看板があり、その横には祠と石仏が安置されています。

また、修験道を思い起こすような剣も奉納されており、やはり岩手山も信仰の山である事が分かると思います。

岩手山のお鉢巡り

さて、景色も楽しんだ事だし、早速お鉢巡りに行きましょう!

少し下って振り返ると、山頂部が見えます。

やはり富士山の火口に似ていますが、剣ヶ峰に比べると少し丸みを帯びていますね。

絶景を眺めながらのお鉢巡りは最高です!

おや?

あの黒い箇所はは焼走り登山口ですね。

山頂から眺めるとだいぶ小さく見えます。

それにしてもあの部分だけ黒いのも少し違和感がありますね。

お鉢巡りの登山道には等間隔で石仏が安置されており、岩手山も修験のお山である事を分からせてくれます。

暫く歩くと先ほど眺めたおっぱい山が近くに見えてきます。

その手前には…

何やら大きな石柱が立っていますね。

あそこまで道があるようなので、行ってみましょう。

近づいて確認すると石柱には岩手山神社奥宮と書かれていました。

中に入ると祠が二基と、周囲には大量の岩が転がっており、その奥には石垣のようなものがありました。

手前には石灯籠も安置され、ここはかつての宗教施設である事を思い起こさせます。

ひょっとしてこの岩は石垣の残骸かな?

祠の後ろには何体もの剣が奉納されており、今でも登拝されているのか気になるところです。

岩手山神社と書かれていますが、やはりこの山も神仏習合の影響を受け、かつては岩鷲山大権現として崇敬されていたそうです。

地面に注目すると、このようなお面のようなものがいくつか置かれています。

これは恐らく遠野地方に伝わるゴンゲサマだと思われます。

ゴンゲサマは獅子頭に似ていますが、少し異なるそうで、火伏に霊験があると言われています。遠野物語にもゴンゲサマは登場し、火事から守ったと伝えられているそうです。また、ゴンゲサマに頭を嚙まれると、病がよくなるという言い伝えもあり、これは獅子舞のご利益に繋がっていると思いますね。

詳しい事はよく分かりませんが、名前のゴンゲサマも神仏習合の権現からきているのではないかと想像できます。

このゴンゲサマは何体か安置されていますが、同じものは一つも無く、それぞれの表情に個性があり、見ていて楽しいです。

岩手山という名前もかつては岩鷲山(がんじゅやま)と呼ばれていたそうです。

五月頃、山頂付近に現れる残雪がまるで鷲が羽を広げているように見える事から由来し、いつしか巌手山となり、岩手山に変化したと言われています。

日光の由来も、補陀落から二荒、フタラからニコウ、日光(ニッコウ)へ変化したので、岩手山の由来もこれに近いものだと、個人的に感じます。

また、中世以降は岩鷲山大権現として、本地仏を置き一大霊場として盛んとなり、奥宮の場所も「御殿」と呼ばれていたので、かつてはこの場所にお社のようなものが建てられていたのではないかと思います。

さて、奥宮から先に進むと、おっぱい山とその奥に山頂部も見えてきます。

お鉢巡りも後半になりました。

ここから先は山頂部まで登りが続きます。

登山道の脇には石仏が等間隔で安置されている様子が分かります。

振り返ると火口の広さがよく分かります。

おや?下を眺めると小屋が見えますね。

あちらは柳沢コースの避難小屋でしょうか。

焼走りコースと違い、あちらはあまり残雪がありません。

残雪回避を狙うなら柳沢コースの方がよさそうですね。

ここからはおっぱい山もよく見えます。

火口の中心からこんもりと膨らんでいる様子が分かりますね。

さぁもうすぐでゴールです!

そして焼走り登山口への入口に到着。

楽しいお鉢巡りを終え、登山口へ帰りましょう。

下山後は焼走り熔岩流を歩こう

焼走りコースは2つの噴出跡を巡る事のできる、まさにジオスポットマニア向けの登山道ですが、登山口にはその噴出口から流れ着いた広大な熔岩流の跡も見る事ができます。

登山口から数十メートル離れたところに熔岩流の入口があり、きちんとした散策路になっています。

噴火から二百数十年しか経っていませんが、今でも生々しい熔岩の跡が広がり、異様な雰囲気が漂います。

草木も生えていない荒涼とした風景がどこまでも広がり、火山の恐ろしさを目の当たりにする事ができ、巨大な岩手山も背後に聳えています。

しかし、いつかは荒涼とした景観も終え、再び木々が生え本来の森の姿へ変化するでしょう。

まぁその頃は私もこの世には存在していないでしょう。

下山後のおすすめ温泉、焼走りの湯

下山後の温泉は焼走りの湯がおすすめです。

日帰り温泉施設ですが、食堂や休憩スペースの他、コテージやキャンプ施設も完備され、温泉のみならず、様々な楽しみを味わえる施設になっています。

こちらも駐車場が広く登山口から近いので、下山後の温泉をお求めの方はぜひ立ち寄ってみて下さい。

【外部リンク】

www.yakehashiri.name

最後に

今回は北東に位置する焼走り登山口から日帰りピストンの登山を行いました。

焼走り登山口はスタートが熔岩流で、途中には2ヶ所の噴出跡を間近に見る事のできる、まさにジオスポットマニアにはたまらないコースです。

定番の柳沢コースに比べ距離は長く、5月は残雪の箇所も多く多少困難を有するコースですが、火山ならではの光景を間近に観察する事ができ、更に登山口のすぐ近くに温泉施設もあるので、挑戦してみる価値はあると思います。

岩手山は独立峰ですが、実は八幡平まで続いており、縦走も可能な山になっています。

なので、日帰り登山に限らず八幡平へ抜ける登山道を歩くのもおすすめなので、ぜひ登ってみてはいかがでしょうか。