”天空の鳥居”とネットで検索すると、真っ先にヒットするのが香川県観音寺市にある高屋神社の鳥居です。恐らくSNSの投稿で話題を呼び、今では香川県のパワースポットとして数多くのメディアから取り上げられるほど有名な場所になっています。
しかし、この瀬戸内海を眺められる天空の鳥居が実は他にも存在している事をご存知でしょうか?その天空の鳥居は瀬戸内海を隔てた岡山県倉敷市の龍王山山頂に位置し、高屋神社の天空の鳥居と同様に素晴らしい景色を眺められます。
この龍王山の中腹には観音様を祀るお寺があり、更に山全体には三十三もの観音様が祀られ、ハイキングと同時に観音巡礼もできる山になっています。
龍王山は瀬戸大橋のすぐ近くにありますが、山自体は住宅地にあり、登られている方も地元の方が多くあまり知られていないのは確かです。
今回はそんな知る人ぞ知る、岡山県にある”天空の鳥居”を紹介したいと思います。
駐車場~朝日観音堂~龍王山山頂エリア
駐車場のすぐ隣に登山口があります。
親切に杖まで貸してくれるそうですね!
しかし、柱に朝日山と書かれていますが、これは別名という事でしょうか?
観音堂まではしっかりと整備された登山道になっています。そして観音堂近くになったら立派な灯篭が現れます。
石灯籠を過ぎればすぐに観音堂に到着します。
観音堂は麓からもよく見え、龍王山の中腹に位置する寺院ですが、観音堂自体はそれほど大きさはなく、こぢんまりとした堂宇になっています。
ちょうど写真の右に朝日聖観世音菩薩百年祭という石碑が建てられており、調べるとこの観音堂は明治13年に建立され、大正時代に火災で焼失するものの再建され現在に至っています。しかし、観音堂建立以前の江戸時代には稲荷神が祀られ、古くから信仰の山として崇敬されてきたそうです。
朝日山とも名乗られているのはやはりこのやまから朝日が綺麗に拝めるからだと思います。
ちなみに観音堂の目の前は展望所になっていて、山の中腹ではありますがなかなか良い景色を楽しむ事ができます。
位置的に正面が東となり、朝日が昇ると堂宇に安置された観音像や多くの石仏たちが照らされてより神々しい仏様へ昇華される事でしょう!
観音堂から先は細い階段を登っていきます。
所々階段も狭く急な箇所もあるので、登る際は注意しましょう。


石仏や祠も多く登りながら多くの仏さまにお会いする事ができます。
急な階段を登り終えると、おや?ここからは登山道らしい道になるそうですね。
とはいえ、危険な箇所は無く、歩きやすい登山道が続きます。


登山道の途中にはこのような石仏たちが点在し、それぞれ番号が書かれています。全部で三十三もの石仏が見られ、登山をしながら巡礼もやってみよう。
直角に曲がる箇所に祠がありますね。
頂上と書かれていますが、ここから山頂広場まではほんの数分なので頑張りましょう。
そして途中にベンチと展望の開けた箇所に到着します。
先ほどの観音堂より少し高度が上がったかな?
しかし、山頂手前でこれだけ景色がいいと立ち止まってしまいますね。
先ほどのベンチから2分程度で山頂部エリアに到着します。
登っていくと次第に鳥居が見え、青空が一気に近づいてきます!
この瞬間がいいんだよね~
見よ!これが岡山の”天空の鳥居”だ!
そして観音堂から10分くらいで山頂エリアに到着します。
山頂部は展望が開け、ポツンと鳥居が建てられています。実はまだ山頂ではなく、ここは龍王宮という場所で、奥には石碑のようなものも建てられていました。
振り返ると…ご覧の通り、鳥居の先には児島の町並みと瀬戸内海を眺める事ができます。瀬戸内海には竪場島、その奥には岡山県と香川県の県境島である尖った大槌島、更に香川県の五色台方面まで見渡せます。
振り返ってこんな景色を見たら誰もが言葉を失ってしまいます!
鳥居は東の方を向いているので、逆光にならない為には昼から午後にかけて登った方がいい写真が撮れると思います。
また、鳥居をどの位置で撮るかによって雰囲気も変わり、山頂部は広いので色んなアングルで撮る事も可能です。ある意味腕の見せ所でもあるので、何度も考えながら天空の鳥居を撮ってしまいました…
ちなみに私が訪れたのは時間帯が昼ちょっと前なので若干逆光ぎみになってしまいましたが、何とか納得のいく写真が撮れました。
望遠レンズを屈してこのような写真も撮れました!
奥の大槌島が妙に神々しい島に見えますね。
少し視線を南側に向けると、瀬戸中央自動車道とその先には瀬戸大橋が見えるのですが、ちょうど目線の先にある為に橋の上部のH形の塔が微妙ですね…
まぁこれはこれでなかなか見られない光景です。
しかし、訪れたのが4月という事もあり春霞がひどく、思ったほどクリアに見えなかったのが少し残念です。また、最近は黄砂もよく大陸からやってくるそうで、一応この日はそこまで影響がないと確認したものの、やはり若干の影響はあるのかもしれませんね。
そう考えると訪れる時期も少し考えなくてはなりません。
ちなにみ写真の中央奥の美しい姿の山は讃岐富士こと飯野山です。黄砂?春霞?のせいでクリアに見えません…
鳥居があるという事は神域を示し、山頂広場には龍王宮という石碑があります。これは磐座なのかよく分かりませんが、この山に龍神が祀られていた事は確かですね。
龍王山という名前も龍神を祀った事からそのような山名になり、龍は水を司る神と信じられ、古くから雨乞信仰としての性質を持っています。観音堂の歴史によると、龍王山周辺は弥生時代から人々が暮らしていたそうで、恐らく稲作を行う上で水が必要な為、水を司る龍神に祈りを捧げていたと思います。
江戸時代には稲荷神、明治時代には観音様を祀るようになり、”水”との関りが続いている事もよく分かりますね。
また、麓から龍王山を眺めると標高は低いものの、裾野が広く秀麗な山容になっており、車で走りながらその美しい姿に目が行ってしまいます。美しい山は信仰の対象になる事が多いそうですが、この山の姿を見れば納得いきます。
ちなみに、龍(竜)という漢字が付く山は全国にいくつもあり、その中でも龍王山が特に多いそうです。更にその龍王山と名乗る山は岡山県が圧倒的に多いというデータがあります。
日本山名辞典で調べたところ、龍王山(竜王山)という名前の山は国内で62座あり、その内22座は岡山県にあるそうです。なぜ岡山県に龍王山が多いのか詳しく調べてみたいところですね。
龍王宮のすぐ隣にもベンチが設置されていますが、こちらから眺める景色も大変素晴らしく、これぞ瀬戸内海の景色と言わんばかりの多島美が広がっています。以前訪れた事のある広島や北木島も見えそうです。
細長い島、ちょこんとお饅頭のような可愛らしい姿の島など大小様々で、綺麗な海に浮かぶ島々が本当に絵になります。私は瀬戸内海の景色を見ると暫く眺めてしまう癖があるのですが、私に限らずほとんどの人が見とれてしまうのではないでしょうか?
ベンチから先も暫くは絶景を眺めながら進める道になっています。
標高200mとは思えない絶景尾根歩き!これは歩いてみたいですね。
山頂手前には龍王岩という箇所があります。
看板のすぐ後ろに重なり合った岩があります。そこまで大きくなく、よじ登ろうと思えば登る事も可能です。


どちらかと言うと、龍王岩手前の崖にあるこの岩が迫力あります。
近づいて覗いてみるとなかなかの恐怖を味わえます!
そして龍王山山頂に到着。
残念ながら山頂は展望なしで、標識と三角点があるだけです。
龍王山山頂~観音巡り
さて、龍王山山頂から先は下りになり、暫く展望の無い登山道が続きます。
道が広く、こちらの方が歩きやすいです。
途中、ツツジも綺麗に咲いていました。
分岐点に到着。
観音堂へ戻るので、ここは観音堂方面へ進みましょう。人差し指の看板が可愛いですね。
平坦な道を進んでいくと、再び展望の良い道になります。
ここからは工場地帯の景色がよく見えます。しかし、相変わらず霞んでいて、イマイチな光景ですが…
暫く進むと道路が見えてきます。恐らく鷲羽山スカイラインですね。こちら側からも龍王山に登る事ができそうです。


途中、龍王桜という木がありました。
全体的に大きな桜の木で、ここだけにポツンと桜の木が生えているだけです。
龍王桜と名乗るのは龍王山からでしょうか?それとも何か言い伝えのある桜の木とか?
桜は残念ながら散ってしまいましたが、少しだけ花が残っていました。
葉桜も綺麗ですね!
その後は大小様々な観音様や不動明王などの石仏を通過しながら観音堂へ戻ります。
道は多少アップダウンはあるものの、基本的に歩きやすい道になっています。


そして分岐点になり、観音堂と書かれた方面に進むと最初に訪れた朝日観音堂へ戻ります。
龍王山(朝日観音堂)のアクセス、駐車場
アクセス
瀬戸中央道児島ICから車で約10分。
駐車場までは住宅街を通り、狭い坂道が続きます。車でお越しの方は十分に注意しましょう。
電車の場合はJR児島駅から徒歩30分で登山口に到着。
駐車場
無料駐車場は登山口のすぐ隣にあります。5、6台ほど停められるスペースがあります。
最後に
いかがでしょうか?
岡山の天空の鳥居も有名な香川の天空の鳥居に劣らず、鳥居と瀬戸内海が見事にマッチした絶景スポットである事がお分かりになったと思います。
龍王山は麓から眺めると綺麗な姿を成し、山頂に目を向けると鳥居もはっきりと見え、益々神々しい山であると感じる事ができ、歴史を調べれば古くから信仰されてきた山である事も分かります。
また、山の中腹には観音堂があり、山全体に観音様が祀られ、ハイキングがてら霊場巡りを行う事も可能なパワースポットマウンテンです。標高も209mと低く山を1周するのにそれほど時間もかからず気軽に登れるので、ぜひとも山頂にある絶景天空の鳥居を眺め、更に観音様のご利益を思う存分受けてみてはいかがでしょうか。