まだまだ雪山シーズンの3月初旬、伊豆半島では河津桜が咲き誇り、一足早く春を感じる事ができるので、毎年この時期には伊豆半島へ春を探しにドライブに出かける事が多いです。
ここ数年は伊豆西部へドライブがてら低山ハイクや観光地を巡り、特に伊豆西部は富士山の展望や夕日スポットが豊富なので、絶景スポットを巡りを楽しんでいます。
さて、今回訪れた「室岩洞」という場所は特に景色が優れたり、圧倒するような光景が楽しめるところではなく、地味~な場所であります!
しかし、その地味~な場所ではありますが、江戸時代から昭和時代まで伊豆石と呼ばれる石材を採石し、全国各地に産出された歴史のある採石場として存在し、その姿は現在まで留められています。
絶壁の海岸沿いに位置し、まるで地下遺跡のような薄暗い採石場は知る人ぞ知る伊豆の史跡として、以前から訪れたいと思っており、ようやくドライブがてら立ち寄る事ができました。
それでは早速今回は採石場である室岩洞の様子をお伝えしたいと思います。
駐車場~室岩洞入口
室岩洞は写真の通り国道136号の道路沿いにあるスポットで、看板も雲見海岸方面へ向かう側のみ立てられているので、うっかり見逃してしまわないように注意が必要です。
もうちょっと目立つ看板が恋しいですが、こんな断崖の海沿いの道路に設置してもあまり意味なさそうですね…
まぁこれくらい地味な看板の方が合っているかもです。
室岩洞入口の反対側には駐車スペースがあり、そこに説明の看板も立てられています。
一応伊豆のジオスポットとして数えられた場所ですが、恐らく1、2位を争うほど分かりづらいスポットですね。
入口に向かう時は車に注意しましょう。
ちょうどコーナーになっているので、渡る時は慎重に。
さて、ここから階段を下って行くと目的の室岩洞にたどり着くそうです。
階段はきちんと整備されており、室岩洞までは下り1本です。
帰りは登りのみになりますが、駐車場から洞窟入口までほんの1,2分なので距離は短いです。
階段からは僅かに景色が見えます。
階段の目の前は海なので、波の音はよく聞こえます。
案内板によると展望台もあるみたいなので、海の景色はそこで楽しみましょう。
そして遂に室岩洞入口に到着です。
見ての通り、巨大な岩壁にぽっかりと穴が開いていますね!
恐らく人工的に開かれた洞窟ですが、浸食か何かで開いたような天然の洞窟に見えなくもありません。
まるで地下遺跡!地下に広がる採石場跡
さて、これから潜入しましょう。
と、その前に、入口には洞窟内の図と説明書きがありました。
なるほど、点灯と消灯時間が決まっているんですね!
夏の日は5時過ぎでもまだ明るいですが、冬場はなるべく午前中に訪れた方がよさそうですね。
しかし、5時に消えるって、いきなりガン!って消えるのでしょうか?
だとしたら物凄く怖いですね…
洞内図です。
中はけっこう複雑な構造になっていますね。
所々にある「池」が気になるところで、意外にも歩ける場所は少ないです。
さて、潜入しましょう。
入口から既に遺跡のような雰囲気が漂い、ここが採石場である事を忘れさせます。
入るや否やいきなりこのような石像がいてビックリしました!
しかも妙にリアルで、まるでこの洞窟の門番のようにこちらを睨んでいます。
後ろの影も怖いですね。
お化け屋敷かここは…
中はこんな感じで、意外にも明るく、何故か少し落ち着く感じがします。
恐らくこの程よい暗さが居心地よく感じるのでしょう。
洞窟内の壁を見ると、しま模様になっています。
これは採石の跡で、この洞窟内には垣根掘りと平場掘りの2種類あるそうです。
垣根掘りは縦に掘りながら横に進んで行く方法で、平場掘りは下方向に掘り下げるので横向きの跡になっています。
至る所にこのような跡が見られ、これらを全て手作業で行っていたんですね!
洞窟内を見渡すと所々柱が見られ、恐らく垣根掘りと平場掘りを繰り返しながら掘り進む坑内掘りで作業が行われていたと思われます。
しかし、柱を残しながら掘り進むってかなり怖いような気もしますね。
万が一柱が崩れたら確実に生き埋めになるのではないか?と、ふと思い、恐らくこの作業も命がけに近い事なんだなと思いますね。
でもまぁ現在もこのように自由に見学できるのは、崩れる心配も無いからこそ公開しているのであり、同時に職人による匠の技の凄さも実感できます。
実際に掘り進む職人たちは夢中で掘り進んでいるだけだと思いますが、こうして見ると掘った跡もまるで遺跡のような美しさも感じます。
洞内の中心部にも石像が安置されています。
やはりリアルな石像で、今のも動き出しそうなそんな風貌になっていますね。
石像の横には伊豆石の説明書きがあります。
江戸時代より昭和時代の方が若干長い規格だったんですね。
先ほどの駐車場の看板にも書かれてあった通り、これらの岩壁は主に火山灰や軽石が積もってできた石と書かれていましたが、壁を少し爪で押し込むと跡が付いたので、石は石でも柔らかみのある岩壁である事も分かりました。
そして、注目して頂きたいのは天井部に突き刺さったこの石。
これは火口から飛び出した火山弾で、周りの岩壁よりも断然固く、掘り進んで行く時に避けた為にこのような光景になったそうです。
これは至る所に見られるので、天上にも注目しながら進みましょう。
さて、洞窟内をサクッと紹介しましたが、先ほどの案内図の通り洞内は1周ただ歩くだけなら1、2分で終わってしまいます。
ここで、地図に書かれていた池という場所も数ヶ所あるので見て行きましょう。
1つ目の池
正方形に掘られた角に溜まった水が見事池になっています。
ライトが当てられているので、池もご覧ください!という事ですねきっと。
そして、地図の中央上部にあるこの池が最も綺麗で、エメラルドグリーンに輝き、透明度も抜群です!
まるで地底湖のような神秘的な雰囲気を放ち、ここが採石場である事を忘れさせてくれる美しい池でした。
この池も岩からしみ込んだ水が溜まってできた池でしょうか?
地底湖って果てしない年月を重ねて完成したイメージがありますが、ほんの数百年、数十年でここまで立派な地底湖になるなんて驚きです!
最後の池は一番大きいですが、浅い池でした。
ライトアップされていますが、何故かここだけが少し不気味に感じました。
実は他にもこのような池があります。
こぢんまりとした池で中々可愛いです。
船積み湾から眺めるジオスポット
さて、入口から反対側に向かうと出口が見えます。
あちらに向かうと展望台があるそうなので行ってみましょう。
洞窟を抜けると巨大な岩壁が出現します。
中だけでなく外も採石が行われていたそうで、岩壁には掘られた跡も確認できますね。
そして出口からすぐに展望台に到着します。
展望台からはご覧の通り視界が開けた場所になっています。
松崎新港と奥には八ノ段や高士山、奥には富士山もちょうど見える展望となっています。富士山の手前の黄色っぽい岩は安城岬で、あの岩は海底噴火で噴火した溶岩が急激に冷やされてでき、砕けながら流れていった岩で「水冷破砕溶岩」と呼ばれているそうです。
つまりこの一帯は海底時代激しい噴火があった場所。
その噴火で出た火山灰や軽石が積もったのがこの室岩洞ということになります。
手前を見ると海がエメラルドグリーンに輝いて綺麗です。
ちなみに正面に見える岩壁も水冷破砕溶岩だそうです。
右側に見える海岸に降りてみたいですが、下りれる場所が無いのが残念ですね。
まさに、秘密の海岸って感じがします。
そして、この展望台には秘密があり、実はこの場所は先程の洞窟から切り出した石を運ぶ為の搬出路になっていたそうです。
よく見ると僅かではありますが、下の海岸に続く道が見えないでもありません。
陸路が無い時代はわざわざこの急な崖を人の手によって船に運び石を運搬していたのですね。
今現在は道路というものがあたり前のようにありますが、かつては陸地はジャングルのようなだったはずです。
そのような過酷な状況でも必死に石を運ぶという事はよほどこの石が貴重な素材だったのでしょう。
採石場は奥まで続く?
さて、そのまま帰ろうと思いましたが、ふとコースの外れに巨大な空間がある事に気づき、一旦洞内図を見て確かめると、どうやら採石場はもう少し奥まで続いているみたいです。
しかし、その部分はライトが一切無く漆黒の闇が広がり、とても近づく事はできないオーラを放っていましたが、幸いなことに何故かその日は登山用のヘッドライトを持参しており、ライトで照らすと奥の方までよく見える状態になったので、思い切って進んでみる事にしました。
※ヘッドライト等の強力なライトをお持ちでない方は速やかに引き返しましょう。
入ってすぐ正面になんと、池がありました!
地図には池と書かれていない場所ですが、ご覧の通りしっかりと池になっています。
これはもしや、後から自然に池になったという事でしょうか?
しかし、先ほどのきちんと見学用に照らされた池とは対照的に不気味な池になっていますね…
本来なら洞窟全体が漆黒の闇で先ほどの見学通路もこのような感じになっているはずです。
池の奥も続いているそうです。
ただ、地図によるとすぐそこで行き止まりになっているはず。
そして、地図の通り池がありました。
ヘッドライトのみなので、こちらも不気味な池になっています。
大きさは先程の最後に見た一番大きな池くらいで、こちらの方が深さはあります。
しかし、漆黒の闇の中の池はやはり恐怖しか感じませんが、恐怖と同時にワクワク感も同時に湧いてしまう…
実際の洞窟探訪はこんな感じで潜入して行くのでしょう。
残念ながら池の先は続いていないみたいです。
しかし、壁が不自然というか壁画のように見えるのは気のせいでしょうか?
なんだか最後は心霊スポットの紹介みたいになってしまった…
室岩洞のアクセス、駐車場
伊豆半島の西部、国道136号をひたすら南下し、堂ヶ島を越えた先に駐車場があります。
室岩洞入口の反対側に駐車場があり、5~6台程停められます。
目の前が道路になっていて、ちょうどカーブになっているので渡る時は注意しましょう。
【室岩洞住所】
〒410-3618静岡県賀茂郡松崎町道部371
【点灯時間】
午前8時30分から午後5時まで洞窟内の電気が点灯し、午後5時を過ぎると消灯になるので、見学は午後4時30までの方が望ましいです。
最後に
室岩洞は特に目立たないジオスポットでありますが、江戸時代から昭和初期まで採石場という歴史を積み重ねてきた場所でもあります。
洞窟内は職人たちの日々の苦労が感じられる跡が多数残され、それと同時に遺跡のような美しさを感じる洞窟で、洞窟の外には素晴らしい展望台が設けられています。
室岩洞は人工洞窟であり、その場所がジオスポットに指定されている事は、まさに人の手によって作り出されたジオスポットという事になります。
道路沿いには目立たない看板のみで、通過してしまうかもしれませんが、洞窟は気軽に入れるので、ぜひドライブがてら立ち寄ってみてはいかがでしょうか。