年末も近づく12月、高山が徐々に雪山へと変貌する中、伊豆半島の伊東市にある大室山を訪れました。
登山禁止の大室山は伊豆半島の東部に位置する標高580mの山で、遠くから眺めるとプリンのような独特な山容を成し、山頂には火口を持つことから列記とした火山であり、火口縁を歩く事ができます。
天気の良い日には伊豆半島東部ではあまり眺められない富士山がよく見え、更に相模湾と伊豆諸島も見渡す事ができ、360度の大絶景を味わえる山としても有名です。
山頂まではリフトで登るので、登山技術も必要なく気軽に山の景色を堪能できる伊豆の定番の観光スポットです。
今回は大室山をリフトで登り、素晴らしい絶景を眺めながら火口縁の空中散歩を楽しんだので、山頂からの絶景と周辺の見どころを紹介したいと思います。
大室山とは
大室山は伊豆半島東部火山群の中の1つで、約4000年前の噴火によってできたプリン状のスコリア丘です。
標高は580mと高山ではないものの、700年前から続く山焼きにより美しい山容が保たれ、遠くから眺めてもその堂々たる姿に目を奪われる存在です。
また、山頂には浅間神社や石仏などが安置されている事から、古くから信仰の山として崇敬され、山容が秀麗な事から、漁師たちは大室山を目印として海上安全の神としても崇敬されていたそうです。
現在は麓から山頂までリフトが運行され、気軽に山頂まで登る事ができ、火口にはアーチェリー場が開かれるなど、伊豆の観光スポットとして人気を馳せています。
大室山のアクセス、駐車場
アクセス
小田原西ICから真鶴道路、熱海ビーチライン経由、国道135号を下り約1時間30分で到着。電車の場合は伊豆高原駅からバスで約20分、タクシーで約10分。
駐車場
駐車場はリフトすぐ隣の第1駐車場と道路奥の第2駐車場,第3駐車場の3箇所あり、自家用車500台、大型バス10台ほど停められます。
第1駐車場はすぐに満車になるので注意が必要です。
基本情報
営業時間:3~9月 9:00~17:00
10~2月 9:00~16:00
定休日:無し ※臨時運休がある場合があるので、公式サイトを確認しましょう。
料金:大人(中学生以上)1000円、小人(4歳以上)500円、団体大人(20名以上)900円
団体小人(20名以上)400円
詳しくは公式サイトをご覧ください↓
【公式サイト】
大室山リフトに乗ろう
さて、第1駐車場のすぐ隣がリフト乗り場になっていて、入口には巨大な鳥居が建てられています。
ここまで大きいと、もはや神社に来たように思えますね。
チケット売り場は本来建物の中ですが、訪れた時は外で臨時のチケット売り場が開かれていました。
恐らく工事中だと思いますが、工事が終われば中でチケットが売られると思われます。
乗り場は建物の奥ですが、この建物にはお土産屋さんと軽食コーナーがあり、リフトを乗る前に色々見たり食べたりする事ができます。
リフト乗り場に到着しました。
ここから山頂までリフトにて空中散歩の旅が始まります!
約6分間リフトで山頂に向かいますが、すでに絶景が広がっていますね。
意外に角度が急で最初は少し怖いかもしれませんが、絶景を眺めながら登れるので恐怖心も和らいできます。
また、調整のために途中止まる事もあるので要注意です。
リフトの途中には記念撮影のためのカメラが設置されています。
アナウンスに従って笑顔で写真撮影しましょう。
撮影された写真は山頂で販売されているので、お求めの方は写真売り場があるのでそちらに行かれてみてはいかがでしょうか。
ちなみに、アナウンスは録音ではなく、リアルタイムで実際に言っているらしいですよ…
絶景を眺めながら空中散歩
さて、6分間の楽しいリフトを終え、一気に山頂に到着しました。
振り返ると立派な富士山が見られます。
山頂駅のすぐ隣にはお土産コーナーがあります。
ここでは山頂駅でしか買えないグッズや軽食コーナーもあり、火口を1周した後に立ち寄る事をおすすめします。
ちなみにここでは大室山新名物である「大室山三福だんご」がおすすめです。
だんごには可愛らしい大室山のキャラクターの焼き印が押され、味はプレーンと味噌、定番のみたらしの3種類あり、1つが大きいので食べ応えが十分にあります。
お茶やコーヒーと一緒に召し上がってみて下さい。
売店の正面には火口を見渡せる休憩所があります。
こうして見るとやはり大室山も火山という事が分かりますね。
そして、下を見るとアーチェリー場も確認できます。
休憩所から先には階段があります。
ここを登れば火口縁に出ます。
数段の階段を登りきると一気に視界が広がり絶景を楽しむ事ができます。
振り返ると富士山と箱根山、そして右奥には大山と丹沢連峰まではっきりと眺める事のできる展望です。
伊東市街を見下ろすと、所々が丘になっているのが分かりますね。
実はこれらも火山の跡で、15万年前からこの地は噴火が絶えない場所だったそうで、この大室山も4000年前の噴火によって形成された山です。
その時の噴火で流れた溶岩により伊豆高原が作られたという事なので、今まさにジオスポットを見下ろしている事になります。
少し拡大すると、小室山も見えますね!
あちらもリフトが運行された山で、大室山と共に観光スポットの火山になっています。
さて、富士山と山並み、下界を眺めた後は雄大な相模湾の光景が広がり、奥には大島を始め、伊豆諸島を眺めながら空中散歩を楽しみましょう。
火口縁は富士山や他の火山とは違い植物が生い茂っています。
が、所々溶岩が転がっており、ここは火山なんだ!と実感する事ができます。
ちなみに道はコンクリートで舗装されているので、気軽な靴でも簡単に歩けます。
最高地点へ向けて歩いていますが、途中振り返ると先ほどいた山頂駅と売店が見えますね。小さい山ですが実際に火口縁を歩くとなると、その壮大さがよく分かります。
大室山は信仰の山であり、その証拠に山頂付近にはお地蔵様や後で紹介する浅間神社が建てられています。
こちらのお地蔵さまは地元の漁師たちによって安置され、大室山は海からもよく見えるため、海上では目印として信頼されていたそうです。
漁師たちが山を信仰する事は珍しいと思いますが、意外にもこのような話は全国各地にあり、海沿いに聳える秀麗な山は海に携わる人たちにとってとても重要な存在である事を分からせてくれます。
お地蔵様を越えると最高地点まであと少し。
最後は少し急な登りですが、ここを登り切れば素晴らしい景色が待っています。
そして遂に最高地点に到着しました。
まさに展望雄大にふさわしい場所で、先ほど眺めた光景から伊豆諸島、そして今度は天城方面の山々も眺める事ができます。
海の方を眺めると…
左端から大島、三宅島、利島、新島までは何とか見えますが、式根島、神津島は少し微妙でした…
南方面を眺めると奥には天城山の一部である万二郎岳がちょこんと姿を現し、手前にはこれまた火山の噴火によってできた山々の姿が見られます。
そして手前の水田ですが、これはかつて湖だったらしく、明治初年までは火山湖として存在していたそうです。
大室山と正面の山に囲まれたこの盆地は反対側のような光景ではなく、まさに日本の原風景を思わせる光景が広がっていますね。
反対側は今まで歩いてきた火口縁と神奈川方面を見渡せます。
富士山方面も素晴らしい景色です。
特に最高地点からは奥の南アルプス方面の山も見渡せます。
12月なので、アルプス方面の山も雪をかぶっていますね。
景色を堪能したら次は下りに参ります。
下りも富士山を眺めながら歩いて行きます。
火口縁は右回りがおすすめと書かれていましたが、左回りだと富士山を背にして登るからかな?と思いました。
それともお遍路や富士山のお鉢回りに合わせて右回りなのかとも思いましたが、そこまで考えなくてもよさそうです。
暫く進むとまた石仏が安置されています。
こちらには五知如来像が安置され、安産のお礼という事でこの場所に安置されたそうです。
五知如来を越えるとすぐにスタート地点に戻ります。
リフト駅山頂のすぐ隣には記念撮影用の標識があるので、富士山をバックに撮影しましょう。
最後に浅間神社を参拝しましょう。
スタート地点から火口縁に上がる階段の他、火口の中腹くらいに浅間神社があります。
入口には朱色の鳥居と浅間神社と書かれた額が取り付けられています。
鳥居を潜ってすぐに小さなお社があります。
これが浅間神社かな?と思いましたが…
なんと、中には合掌した仏さまがいらっしゃいました!
磐長姫命は女神ですので、これは違うと分かったのですが、しかしなぜお社の中に仏様が入っているのかは謎でした。
ちなみにお社の背後を見ると巨大な岩が聳えています。
これは磐座なのか分かりませんが、この場所だけ雰囲気が違います。
そして仏様の隣にはガッチガチのコンクリートで建てられた社殿があり、どうやらここが浅間神社のようです。
全体を見てみると本殿、幣殿、拝殿ときちんとした造りになっていて、全てがコンクリートでできた神社です。
社殿裏には木々が生い茂り、ここだけ鬱蒼としているのが特徴です。
先ほど歩いてきた道には木一本も生えておらず、この場所だけ木々が生い茂っているので、以前からここに神様が祀られていたと思われます。
社殿も比較的新しく見えますが、この社殿の竣工はいつなのでしょうか?
さて、御祭神ですが、浅間神社と書かれているので、木花之佐久夜姫命と思いきやこのお社には書いてある通り磐長姫命が祀られた神社だそうです。
磐長姫命とは全国の浅間神社に祀られている木花之佐久夜姫命の姉で、古事記、日本書紀にはほんの一瞬しか登場しないレアな神様です。
皇祖天照大御神の孫にあたる邇邇芸命が九州に降り立ち、美しい木花之佐久夜姫に一目ぼれし、結婚を申し込んだところ、その父である大山津見神は大変喜び、木花之佐久夜姫命と共になぜかその姉である磐長姫命もセットで送り出したが、邇邇芸命は醜い磐長姫命を大山津見神に押し返し、美人である木花之佐久夜姫命だけを選んで結婚した…と神話では語られています。
磐長姫命とは岩のように姿形も変わらず、永遠にあり続ける存在を意味し、大山津見神が磐長姫命を共に送り出したのも、天孫である邇邇芸命が永遠の命を得られるように願った為でした。
しかし、邇邇芸命はそれを断り、美しさの象徴である木花之佐久夜姫命のみ選んだため、永遠の命を得る事はできず、人間と同じ”寿命”という概念を背負う事になってしまった。
このお話では天津神の子孫である邇邇芸命が神様にもかかわらず我々人間と同じ限られた命である存在である事を知らせるためのストーリーであり、もちろん天皇も人間であるので神様のような桁外れに生きる存在ではない事は誰でも分かると思います。
つまるところ、この磐長姫命という神様は本来、岩のように変わらない永遠の命の象徴であり、岩というのはご承知の通り、決して美しい姿ではありませんが、変わらない素晴らしさを分からせてくれる神様ではないかと思います。
この磐長姫命を祀る神社や山は実は伊豆半島にいくつかあり、今まで訪れた中だと下田にある下田富士と松崎町の雲見海岸に聳える烏帽子山にそれぞれ磐長姫伝説が語られ、下田富士も烏帽子山も山全体が岩でできた山で、それはまるで磐長姫を具現化したような姿になっています。
また、伝説の内容もやはり富士山と比較され、嫉妬で苦しむ磐長姫の様子が語られています。
記事もあるので、興味があればご覧ください↓
最後の話が長くなりましたが、火口1周を終えたので、再びリフトで下りましょう。
実は登山道もあるそうなのですが、登山道は封鎖され登れないようになっています。
どのような登山道なのか気になりますが…
大室山麓の、さくらの里も散歩しよう
大室山はリフトが運行されてから観光の山として人気を博していますが、麓のさくらの里も人気のスポットして知られています。
さくらの里とはその名の通り、敷地に40種類、約1000本もの桜の木が植えられ、2月の河津桜を始め、4月には見事なソメイヨシノが咲き誇り、「日本さくら名所百選」の一つとしても数えられるほど、華やかな桜たちの姿を楽しめるスポットです。
敷地は公園のような造りになっていて、桜の季節以外にも散歩コースとして歩きやすく、正面の大室山を眺めながらゆっくり過ごせる場所になっています。
また、近くには巨大な溶岩洞穴やスコリアという火山の噴出物を目の当たりにする事ができ、大室山が火山である事を実感できる場所もあるので探してみてはいかがでしょうか。
大室山ならぬ小室山とは?
大室山山頂から眺めると、小さな丘が続き、一番海岸沿いにある丘が小室山と呼ばれる山です。
こちらの山も伊豆東部火山群の1つで、大室山と同様にリフトが運行され、山頂の火口を歩く事ができます。
小室山と言われている通り、火口1周はほんの2,3分で終わってしまうほど短く大室山と比べるとかなり規模の小さい山ですが、展望は大室山に負けないくらい素晴らしく、特に海の展望が優れた山になっています。
展望所もご覧の通りガラス張りのオシャレな造りになっていて、天気がよければSNS映えは間違いありません!
また、山頂にはカフェもあり、室内からは海の絶景を眺めながらゆっくりと寛げるスペースになっています。
小室山は大室山のようなさくらの名所ではありませんが、4月中旬ごろになると麓にはつつじが咲き誇り、毎年つつじの観賞会が開かれています。
つつじの数は40種類、10万本と、大室山のさくら並みに見ごたえのあるイベントになっています。
大室山周辺のおすすめスポット
ねこの博物館
大室山周辺には、あっと!驚くような名前や魅力のある博物館や美術館が多く、その中でも、ねこの博物館がおすすめなので紹介します。
ねこの博物館は伊豆の3大珍博物館の1つである博物館で、猫の歴史や絶滅した世界の猫たちの紹介、更に臨場感あふれる猫の剥製など楽しく猫について学ぶ事ができます。
また、最大の見どころは、実際に猫と触れ合えるコーナーが設けられ、世界の珍しい猫をこれでもか!というほど触り放題になっています。
猫たちは基本おとなしいですが、触れ合うときは優しく接しましょう。
伊豆高原旅の駅
大室山から国道へ下ると目の前に伊豆高原旅の駅という大きな総合案内所があります。
道の駅のような存在で内容もあまり変わりませんが、熱海と下田の中間点に位置するので、ドライブがてらお土産や食事を取りたい時におすすめな場所になっています。
特に食事エリアが充実し、屋外にはバーベキューを楽しめるコーナーやドッグランも完備され、観光として訪れるのも最適なスポットです。
最後に
大室山はリフトで簡単に登れ、標高は低いものの山頂の火口はダイナミックで非常にインパクトのある火山であり、山頂には神仏も祀られ、信仰の山として親しまれていた事もよく分かります。
位置的にも国道からさほど離れていないので車で来やすく、周辺には魅力のある博物館や美術館も多いので、観光の際にはぜひ候補に入れてみてはいかがでしょうか。