素晴らしき日本の景色たち

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富士山の姉は醜い!?悲しい伝説を秘めた下田富士とは?

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日本各地には、○○富士という名で呼ばれている山が数多く存在している事をご存知でしょうか?

富士山のように美しい裾野を持つ山や富士山と歴史的に関わりのある山に○○富士と名づけられていますが、これは日本一富士山への憧憬を表し、各地のシンボル的な山を富士山に見立て、地元市民から愛される山を示しています。

さて、以前私は下田市民に愛されている、下田富士に登りました。

この下田富士も、下田市の民話に登場する歴史のある山で、古事記における木花之佐久夜毘売と石長比売との関係をベースに書かれた物語であり、低山ながら民話の内容に興味を持ったので、登ってみようと決心しました。

下田富士の場所

 

伊豆急下田駅を降り、右の方へ徒歩2分くらいで登山口の鳥居が見えてきます。

下田富士の伝説

下田富士にはこのような民話が伝えられています。

下田富士と駿河富士(富士山)と八丈島の富士山は三姉妹でありました。

長女の下田富士は、妹の富士山と仲がよく、雨が降ればかさ雲をかけてあげるなど大変面倒見がよかった。次第に、妹の富士山は美しくなった。姉の下田富士は、丸く膨れたぼた餅のような顔。自分の醜さを悲しみ、妹と顔を会わせなくなり、天城山という屏風を立ててしまった。心配した妹の富士山は、姉を見ようと毎日背伸びして、つま先立ちしていくうちに、背が高くなり、ついに日本一の高さになった。姉は、妹に見られまいとからだを縮めてしまい、更に低くなってしまった。そして、三女の八丈富士は、遠くの海から心配し、姉たちが仲良くなることを祈り続けたという。(ふじのくに静岡県公式ホームページより)

 

いかがでしょうか?

妹の富士山だけ次第に容姿が美しく、高さも日本一になり、誰にでも愛される存在になったにも関わらず、姉の下田富士だけ醜い姿で誰からも振り向いてくれない存在となってしまう事は何だか切ない…

この民話を読んで下田富士と駿河富士の関係は、古事記における石長比売(イワナガヒメ)と木花乃佐久夜毘売(コノハナノサクヤビメ)との関係に似ていると感じました。

古事記における石長比売と木花乃佐久夜毘売との関係

ところで、石長比売とはどのような神様なのかご存知でしょうか?

この神様は大山津見神(オオヤマツミノカミ)と言う山の神の長女であり、木花乃佐久夜毘売は妹にあたります。

古事記では邇邇芸命(二二ギノミコト)と木花乃佐久夜姫の結婚のお話に登場します。

内容は…

木花乃佐久夜毘売に一目惚れした邇邇芸命は父親の大山津見神に結婚を申し入れ、これに大変喜ばれた大山津神は木花乃佐久夜毘売と同時に長女の石長比売も差し出しました。

しかし、邇邇芸命は石長比売の容姿が気に入らず大山津見神に送り返してしまいました。

二人を送った事には訳があり、石長姫をそばに置けば命が岩の如く永遠の命 –エターナルライフ- が得られ、木花乃佐久夜毘売を置けば木の花が咲き誇るかの如く栄えるようにと祈りを込めながら二人を差しだしたそうです。

しかし邇邇芸命は石長姫の容姿が気に入らずつき返してしまいました。

これにより天皇は天照大御神の直系の子孫(神の子)にもかかわらず、我々人間の寿命と同じ長さまでしか生きられない存在になってしまった事を物語っています。

以上が古事記における石長比売の登場する場面であり、今回登った下田富士も下田市の民話の中で容姿の醜い石長比売として登場し、下田富士と共通する事は容姿が醜く、相手にされない事です。

確かに花は色鮮やかで見る人の心を癒してくれる存在ですが、いずれ枯れてしまう事は誰でも分かりますね。

これに対し、石や岩はマニアな人で無い限り、進んで眺めたり感動する事は殆ど無いと思います。

しかし、石や岩は一時的な花とは違い、何年経っても変わらず、ありのままの姿であり続ける存在です。

つまり、大山津見神の願いの通り、石長比売は荒々しい岩の容姿でありながら、老いる事無く、命の尽きる事も無く永遠に繁栄する、まさに生きとし生けるものの理想を表し、真の豊かさが込められた女神様なのです。

”君が代”には石長比売の思いが込められている!?

突然ですが、日本の国歌「君が代」の歌詞の意味をご存知でしょうか?

オリンピックやサッカーの試合などの中継で耳にする機会があると思いますが、他の国と比べて非常に短く、暗いイメージの歌と感じる人もいるかと思います。

しかし、君が代は短いながら、日本人の本来の生き方を意味する歌詞なのです。

簡潔に述べると、日本のアダムとイブであるイザナキ(男)とイザナミ(女)が子(日本人)を産み、何千年もの長い間生まれ変わっても協力し合い、固い絆で結ばれましょうという意味が込められています。つまり、親から子、子から孫へと命を受け継ぎ、いつまでも子孫が繁栄される事を込められた歌なのです。

命あるものは必ず死を迎え、永遠に生きる事は不可能ですが、子や孫が先祖に思いを馳せ続ける限り、姿形はありませんが生き続ける存在となれるのです。

それはまるで、石長比売の思いが込められているように感じますね。

いざ、下田富士へ!

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話が長くなってしまったので、ここで登山レポートを!

当日は車で来たので、下田駅近くのコインパーキングに停めて下田富士へ向かいました。

登山口は駅から歩いて2分と非常に近いです!

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下田富士の登山口が見えました。

登山口というより、神社の入り口みたいで分かりずらいですが、ここが登山口です。

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見上げると、急な階段が続きます。

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駿河富士の事を考えながら下田富士を登ると、何処からか泣き声が聞こえるという言い伝えがあるそうです…

なので何も考えずに登りましょう!

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しばらくすると、小さなお社が現れます。

これは龍爪神社の拝殿だそうです。

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奥が龍爪神社の本殿、というより祠ですね。

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龍爪神社を超えると、本格的な登山道に入ります。

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この先は女人禁止との事。

下田富士は信仰の山である事が分かります。

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山頂付近は岩道が現れます。

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山頂付近からの眺め

海が綺麗です。

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穏やかな山が見渡せます。

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山頂の浅間神社に到着しました。

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伊豆国神階帳には意波与命神社と記されています。

浅間神社になる前は目立つ山姿から航海上の目印となり、

それを神の山として信仰されていたそうです。

つまり、元々は漁師達の信仰する山だったんですね。

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ペリー艦隊の船員達も下田富士に登られた証拠ですね。

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下山後、富士山の形に見える位置で下田富士を撮影しました。

見事に富士山ですね!

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お隣の寝姿山から下田富士を眺めてみました。

この山はロープウェイで登る山です。

山頂からは海や島々を眺める事の出来る絶景スポットです。

詳しくは下田ロープウェイをご覧ください

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下田公園から眺めてみました。

何だか寂しそうに見えるのは私だけでしょうか?

最後に

日本一の富士山をはじめ、全国には多くの富士山が存在します。

標高の高い富士山から、歩いてすぐに山頂に着いてしまう富士山など大小様々ですが、それぞれの富士山には独自の歴史や民話が語られています。

今回登った下田富士も下田市の民話として語り継がれてきたと思います。

私はこの下田富士の民話を読み、同じ大山津見神の血を引き、同じ家族 ( 山の神 ) でありながら一人だけ浮かばれないのは何だか可哀相だと思い、是非とも下田富士に登ろうと決意しました。

高さ約180m、登りと下りで30分くらいの短い登山でしたが、荒々しい岩を一歩ずつ歩み、下田富士の御神威を感じながら登りました。

民話では古事記の石長比売と同様に醜い姿の下田富士として語られています。

しかし、石長比売や下田富士は目に見える部分では醜い姿ですが、永遠の命を常に祈られる、実は心の美しい女神様だったのです。

多くの岩や岩山には石長比売が宿っています。

岩山に登ったり、大きな岩や荒々しい岩を見つけた際には、石長比売さん、そんなに悲しまないで、心の美しいあなたはあなたのままでいいんですよ!と思ってあげれば、下田富士や石長比売は喜んでくれるのではないでしょうか?