8月は毎年富士山を登っていましたが、今年はコロナウイルスの影響で登山道の全てが閉鎖という事で断念せざるを得ませんでした。
そこで、今年は久しぶりにアルプスの山を登ろうと決意し、南アルプスの甲斐駒ヶ岳に登ろうと思いました。
甲斐駒ヶ岳は南アルプスの北側に位置し、中央道や北斗市からはピラミッド型の山容を眺めることの出来るシンボル的な山です。南アルプスの女王こと仙丈ケ岳のような美しい姿とは対照的に山頂部は荒々しく男性的なイメージ。
ちょうど仙丈ケ岳の向かいに聳えているので、私個人的には南アルプスの貴公子という感じに勝手に名付けています。
また、甲斐駒ヶ岳は日本百名山に選ばれていて、毎年多くの登山者で賑わう山です。
そのため、様々なルートも存在し、一般的には北沢峠から登ることが多いですが、今回登ったコースは黒戸尾根という、日本三大急登と言われる厳しいコースを選択し、しかも日帰りという事なので、日の出前から出発という判断を下しました。
それでは、今回登った日本三大急登の一つである黒戸尾根のルートの内容と山頂からの景色を紹介したいと思います。
甲斐駒ヶ岳、黒戸尾根のアクセス、駐車場
アクセス
中央道長坂ICより、県道606号、国道20号を経て、道の駅はくしゅう手前の信号を左折し暫く走ると尾白川渓谷駐車場に到着します。(約30分)
尾白川渓谷駐車場
駐車場は約100台駐車可能
休日は路上駐車も見られるほど混雑が見込まれるので、早めの到着をおすすめします。
また、駐車場にはトイレ有り。
洋式の水洗トイレで、ペーパーも完備されています。
登山口~五合目
登山口にやって参りました。
黒戸尾根の登山口にはカオナシのような顔が付いた標識になっているのが特徴です。
日向山もこの登山口から登れるようになっています。(登り始めは真っ暗です)
駒ヶ岳神社まではこのようなアスファルトの緩やかな下り坂になっていて、これから始まる急登地獄前の楽ちんな道になっています。
なんとなくですが、富士山の吉田口もこのように急登前に緩やかな下り坂になっていて似ています。
ここで余裕、余裕!と思わない方がよいですぞ~
しばらく歩くと駒ヶ岳神社に到着します。
いかにも山岳修験の神社という雰囲気が漂う神社になっています。
ここ甲斐駒ヶ岳も修験道として開かれた山であり、特に黒戸尾根は信仰登山として登られていたと記録されています。
途中には石仏や山岳修験らしい鎖場や岩場が待ち構えた厳しい道のりが待っています。
登山前にここできちんと参拝してから登りましょう。
神社を越えると吊り橋が現れます。
思った以上に揺れるので少し恐怖を感じる吊り橋です。
ちなみに私は深夜1時半から登り始めたので、暗闇の吊り橋を渡りました。
何も見えず、川が流れる音が凄く不気味です…
橋を渡るといよいよ本格的に黒戸尾根に差し掛かります。
ここからは急登が永遠に続く地獄の尾根です。
気を引き締めて参りましょう。
特に危険個所はありませんが、所々足場が悪い箇所があるので注意しましょう。
注連縄が張られた場所もありました。
更に石碑が立てられ、やはり山岳信仰の場であることを実感できますね。
その後も急登は続きますが、たまに平坦な道も現れます。
こういう所で時間を短縮するために急ぎ足で歩きたいところ。
さて、安心もつかの間、地図で刃渡りと書かれた危険ゾーンに突入します。
長さはそれほどありませんが、刃渡りという事でご覧の通り先端が細く、しかも両サイドはスパッと切れています。
特に技術が必要な箇所ではないので、ここは慎重に渡りましょう。
下を覗くとこんな感じ
どこまで落ちるか…わからないですね…
ちなみにこの刃渡りからは景色も素晴らしいです。
左に鳳凰三山と右に八ヶ岳が確認出来ます。
ここまで来ると、おっ!もうすぐで山頂か?とテンションが上がりますが、山頂まではまだまだ先なんです…
いい景色に惑わされないように頑張りましょう!
下を眺めると、何やら白っぽい部分が見えます。
拡大するとこれは恐らく日向山の山頂部ですね!
何年か前にこの山にも登りましたが、山頂からは八ヶ岳をはじめ中央アルプスや奥秩父の山々を見渡すことの出来る展望の良い山です。
また、山頂部は一面白い砂が広がり、山にいるのに砂浜に立っているような不思議な気分を味わえます。登山口は先ほどの登山口と山頂部に近いところもあり、気軽に登れる山なので日向山もおすすめです!
その後も急登と平坦の道を繰り返し登っていき、ハシゴゾーンが待ち構えています。
が、これはまだ序の口です。
ハシゴを渡り終えると、苔の生えた登山道に差し掛かります。
恐らくこの辺が地図でいう黒戸山だと思われます。(標識は無い)
五合目までのラストはなんと下り!
今まで永遠と登っていきたので少し楽に感じますが、帰りは登るんです…
そしてようやく五合目に到着です。
かつてはこの場所に小屋があったと書かれていますが、現在は跡形も無いですね。
正面には祠と岩には注連縄が張られ、いよいよここから修験道の面影が残る登山道に差し掛かります。
五合目~七丈第一、第二小屋
先ほどより急なハシゴや鎖場も多くなるので、この先は注意が必要です。
この辺りになると岩場が目立ち、次第に険しくなっていきます。
写真でも分かるように、岩場には石碑は石仏も多く、歴史を感じさせる登山道になります。恐らく明治以前の姿をそのまま残したものであり、今はレジャーとして登る方が大半でありますが、ほんの百数十年前は多くの行者がここを通っていたに違いありません。
途中、垂直なハシゴも登場します。
まるで槍ヶ岳の最後のハシゴのようで、ここは緊張します。
暫くは鎖場のある登山道ですが、そこまで危険を伴うようなレベルではないので、先ほどの急登より楽しく進めます。
七丈第一、第二小屋~甲斐駒山頂
険しい岩場を超えると七丈第一、第二小屋に到着します。
黒戸尾根はこの小屋に宿泊し、次の日に山頂を目指すのが一般的です。
しかし、私は黒戸尾根を日帰りという茨の道を歩んでいるのでここはスルー
さぁ、第二小屋の横のハシゴを進みましょう!
ここから先は所々景色の良い道が続きます。
小屋のすぐ近くにはテント場もあります。
しばらく歩くと鳳凰三山と富士山が見えてきます。
この辺りでようやくアルプスに登っていると実感しますね。
更に登っていくと八ヶ岳と遠くには北アルプスも確認できるようになり、視界が開けていきます。この辺からいよいよ森林限界の突破ですね。
ふと見上げるとあれが山頂か?と思いますが、山頂はもう少し奥にあるようです。
まだまだ我慢が必要です!
大きな石碑のある場所に到着しました。
地図によるとここが八合目だそうです。
また、昔はここに鳥居も立てられていたと書かれていました。
ここから先は鎖と岩場の目立つコースになります。
とは言え、危険を有するような場所は特になく、焦らなければすんなり登れる鎖になっています。
途中、国内第二高峰の北岳が見えました。
だいぶ標高も高くなってきました。
山頂に近づくにつれ、体全体を使って登らなければならない箇所も見受けられます。
黒戸尾根は急登だけでなく、岩場のスキルも試されるルートである事を改めて感じさせます。
黒戸尾根と言えばやはりこの光景でしょうか。
御神剣と鳳凰三山、そして富士山!
ここからの光景は有名ですね。
ここから先は巨岩を眺めながらのコースに差し掛かります。
この岩は鋭くてなかなか迫力があります。
登ろうと思えば登れると思いますが…
さぁラストスパートです。この岩場を超えればようやく山頂です。
すでに絶景を仰げるので、待ちきれず何度も景色を眺めてしまいます…
こんな感じの岩場を登ります。
丸印がほとんど見当たらず、少し迷いそうでルートから外れる恐れもあるので、慎重に進みましょう。
写真の真ん中に見えるピークが山頂です!
ようやく長い黒戸尾根のゴールに到着します。
ゴール手前は砂地になっています。
まるで燕岳のような真っ白な砂地が続いていますね。
甲斐駒の山頂付近を遠くから眺めると白っぽく見えるのがちょうどこの辺りなのでしょうか?
甲斐駒山頂からの大絶景
長い黒戸尾根を終え、遂に山頂に到着しました。
山頂は遮るものがないので、360度の大展望を楽しむことが出来ます。
北アから中ア、そして近くの南ア、遠くには富士山も眺められるスーパービュー!
8月にもかかわらず、一切ガスは発生せずド快晴な天気の下で最高の展望が楽しめました。なんかもぅ申し訳ねぇ…
すぐ隣の八ヶ岳
八ヶ岳は鋸のようにギザギザの形で、独立峰に見えると思いますが、甲斐駒から眺める八ヶ岳はまた違った姿を見せてくれます。最初見た時、八ヶ岳であることが分かりませんでした…
蓼科山もはっきりと見えますね。
蓼科山から奥にある霧ヶ峰もこの日ははっきり見えました。
中アがずらり一直線に並んで見えますね。拡大すればどれが木曽駒だの空木岳だと分かると思いますが、中アってあまり特徴がないような気がします…
右奥には台形の御嶽山がはっきり見えますね!
ドーンと拡大
剣ヶ峰もバッチリですね!
御嶽山と乗鞍岳のツーショット!
共に3000m級で、火山の中では富士山に次ぐ第二、第三高峰
北アも遠いですがしっかり確認できます。
ほら!
みんな大好き槍ヶ岳の槍もはっきりと見えます!
一番先に目に付くのは、南アルプスの女王こと仙丈ケ岳!
美しい仙丈沢カールがはっきり確認できますね。
この光景もたまらないですね!
仙丈ケ岳と北岳、間ノ岳更に奥には塩見岳まで一切のガスもなく南アルプスのオールスターが勢ぞろいです。
更に左にずれると鳳凰三山並びに富士山も姿を見せます。
拡大するとこんな感じ
バックの富士山が神々しいですねぇ!
恐ろしいほど綺麗な形の富士山!
もう、美しい以外にどう表現してよいのだろうか…
日本最高峰の富士山、第二高峰の北岳、第三高峰の間ノ岳が見えます。
そう、甲斐駒山頂は日本の高山ベストスリーが眺められるのです。
それにしても第二、第三高峰が南アルプスっていうのも何か意外ですね。
八ヶ岳の右奥は奥秩父方面
穏やかな山並みですが、あちら側も瑞牆山や金峰山など2000mを超える高い山々なんですね。
あちらは危険な鋸岳方面です。バリエーションルートなので熟達者向けですね。ギザギザの山容が危険度を表しています。
山頂はこんな感じ
真っ白な地面に巨岩があちこちに転がっています。
この日はド快晴だったので、青と白のコントラストが絶妙でした。
一番高いところに社があります。
下山後のおすすめ温泉「尾白の湯」
黒戸尾根の登山口から一番近い温泉施設はここ、尾白の湯。
温泉はもちろん、露天風呂も完備され、露天風呂からは甲斐駒ヶ岳を間近に眺められる、まさに麓の温泉。また、温泉以外にも公園やキャンプ、BBQを行うこともでき、家族向けの施設でもあります。辛い黒戸尾根を登った後の疲れた体を癒してくれる嬉しい天然温泉です。
【営業時間】10:00~21:00(最終受付20:30)
【定休日】水曜日
【入浴料】市外:大人830円 子供420円
市内:大人410円 子供210円
【公式サイト】
最後に
黒戸尾根は日本三大急登に選ばれ、登山道のほとんどが急坂なのでかなり厳しい登山になると思います。今回は夜中からスタートしたので何とか昼過ぎに下山できましたが、一般的に日帰りはおすすめしません。途中七合目に宿泊し、早朝山頂を目指す方が望ましいと思います。
山頂からは360度の大パノラマが広がり、日本アルプスや富士山も眺められ、更に日本最高峰富士山から標高第三位まで同時に確認できます。
黒戸尾根は修験道として開かれた道でもあり、修行のように苦しい登山になることは間違いありませんが、体力に自信のある方はぜひ日帰りで挑戦する価値はあると思います。