朝晩の冷える3月の半ば、2月の丹沢に続き3月は富士山周辺の山に登りたいと思い、前から計画していた毛無山に登る事となりました。
毛無山は富士山の西に位置する標高1946mの山で、富士山の外輪山の中では最高峰の山になります。あと少しで2000m級の山に仲間入りですが、ほぼ2000m級の山であり、標高的には西日本の最高峰である石鎚山(1982m)と同じくらいです。
しかし毛無山は石鎚山のような目立つ山容ではなく、女王富士山のバックダンサー的存在である外輪山の一部ですが、山頂からは雄大な富士山、その反対側からは南アルプスを一望できる優れた山です。
今回は富士山の外輪山の中でも1番高い山というプレミア感ある毛無山をピックアップし、毛無山麓の駐車場から山頂、地蔵峠を経由して周回するコースを選択しました。
この日も天気が良く、素晴らしい富士山と神々しい南アルプスの撮影に成功したので、登山コースと合わせて紹介したいと思います。
登山コース
日帰りコースは毛無登山口から不動ノ滝経由で山頂を目指し、帰りは通行止めにならなければ地蔵峠を通る事をおすすめします。
駐車場~九合目付近
駐車料金500円を専用投函口に納めたら早速登りましょう。
最初は平坦な道をひたすら歩きます。
暫くすると神社に到着します。
三ツ峠山に登った時のような雰囲気の神社で、いかにも山の神様という感じのする神社でした。三ツ峠山の記事はこちら↓
神社から1分くらい歩いたところにこのようなものが置かれています。
金山金鉱石、破砕機…
どうやらこの辺りで昔は金を採掘されていたようで、これは遺構としてここに置かれているのでしょう。
調べによると毛無山周辺はかつて金鉱石が採掘され、富士金山とも呼ばれていたそうです。中世の今川氏の時代から採掘が始まり、軍事力の糧として採掘が続けられ、その後は武田氏から徳川氏まで短い間に激しく管理が変わったそうです。
山中には所々坑道や焼き窯なども残っているそうで、これはこれで史跡巡りにもなりますね!
破砕機を越えるともう暫く似たような道が続きます。
そして分岐点に到着。
ここを矢印の方向へ進みますが、間違えて先ほどの道の続きを歩かないようにしましょう。真っすぐはルートミスなので注意。
矢印の方向へ歩くとすぐに沢渡に出ます。が、水が一切流れておらず、ここはすんなり渡る事ができます。
雨上がりや豪雨後は大丈夫なんでしょうか?
沢を渡り終えると分岐点に到着します。
山頂へ向かうには右のコースが定番ですが、左の地蔵峠経由でも登頂は可能です。しかし、看板の通り荒れ気味なコースなので、悪天候や前日大雨の場合は控えた方がよいかもです。
今にも土に埋もれそうな看板を発見しました。
毛無山ルートには途中滝が見えそうですね!
実は地蔵峠ルートにも滝があるのですが、これには載せてません。行って見てからのお楽しみなのかな?
出だしは地味な登山道をひたすら登ります。
時間的には太陽が出ている時間ですが、ちょうど真後ろに富士山が聳え、太陽がなかなか出ないんですね…
滝まであと15分!
どんな滝なのでしょうか?
看板からすぐに振り返ると、ようやく太陽が顔を覗かせました!
しかも富士山の中腹ら辺から出てきて、ダイヤモンド富士のようだ!
ん?これはこれでレアな光景なのでは?
ダイヤモンド富士?を堪能した後、暫くすると一合目の看板が!
つまりここから山頂まで~合目の看板が出るんですね。
一合目を通過して数分後にはさみ石というポイントに到着。
はさみ石という名前なので何かオブジェのような石があるのかと思いきや、特にそのような意味の石ではなさそう…


登ってみると単なるロープ場でした。
しかし、突如密集した岩が出現するのもなかなか面白いですね。
難易度的にはさほど難しい岩場ではなく、楽しめる程度の岩場です。
はさみ石を過ぎると二合目に到着。
ここから再び通常の道のりに戻ります。


そして、二合目を越えて暫くすると不動の滝見晴台に到着します。
ここからは少し離れた不動の滝を眺める展望台ですが、標識が崩壊されているので物凄く分かりずらいです。
私も最初スルーしてしまい、戻ってようやく見つけました。
滝は木々の隙間から眺める事ができます。
不動の滝は奥まった岩壁から三段に流れ落ちる滝で、勢いはあまり無いように見えますが、間近で眺めるとそれなりに迫力がありそうです。
不動の滝から不動明王でも祀られているのでしょうか?
水量によっては滝行も可能のように見えますね。
不動の滝を過ぎると再び登りが続きます。
アップダウンも無く、山頂付近までひたすら登りが続きます。
所々ロープが取り付けられていますが、ほとんど使わなくても登れる場所ばかりです。


地味な登山道が続き、合目の看板も時折姿を見せます。
さすが二百名山だけあって、道ははっきりしています。が、展望は相変わらず望めません…
四合目を過ぎて暫くすると、何やら広い空間に到着しました。
山小屋か何かあるのかな?と思ったらどうやらここはレスキューポイントという、ヘリが着陸できる場所だそうです。
レスキューポイントという場所は初めて見たかも?


レスキューポイントを越えると、五合目、六合目と続いていきます。
永遠と続く登りなので、適宜休憩しながら進みましょう。
七合目を通過…
そろそろ展望が恋しい歩行時間になりますね。
相変わらず同じような登山道が続いていますが、ここは無心で登って行きます!
尾根到着までに富士山展望台というポイントがあるのですが、八合目を越えてもまだ現れません。
地図で確認すると八合目から九合目の間のどこかにあるようです。
まだかまだかと思いながら登ると、遂にそれらしい看板がありました!
ようやく展望台に到着です。
展望台からは雄大な富士山が見えます!
東方面に富士山が聳えているので、毛無山の展望は午後からの方が本当は良さそうですね。
展望台に着いた頃は何とか富士山が眺められましたが、もう少し早かったら逆光になっていたかもしれません…
しかしこの展望台はなかなかスリルで、正面は崖になっているので注意が必要です。
富士山を撮影する時は気をつけましょう。
そして九合目の看板を通過したら分岐点に到着し、ここからはいよいよ尾根歩きに突入します。
九合目付近~毛無山山頂
さて、毛無山山頂へ向かうには右へ進んで行きます。
すると正面にはどっさりと雪が積もっています。
先ほどまで全く雪が無かったので、ここからは注意深く進みましょう。
このような事態もあるので、春山とは言え軽アイゼン等は持参しておいた方がよいですね。
毛無山山頂に向かう途中に南アルプスがよく見える展望台があります。というか、地図にそう書いてあり、周囲を見渡すとそれらしい岩があったので、よじ登ってみました。
残念な事に先ほどのような展望台という看板は無く、分岐点から毛無山方面に向かうほんの数十メートルの所にこの岩はあるので、見落としがちになります。
岩を登るとこんな感じで、南アルプスが一望できるなかなかの展望台です。
立った瞬間感動のあまり開いた口が塞がりません。
たぶんですが、甲斐駒と北岳、間ノ岳
左側の真っ白い頂の山々は荒川、赤石、光岳かな?
イマイチ分かりませんが、物凄く神々しい南アルプスの山々です。
甲斐駒より先には八ヶ岳も見えました!
一瞬御嶽山に見えましたが、きちんと赤岳が確認できたので、間違いなく八ヶ岳でしょう。
岩のてっぺんは不安定なので撮影の際は注意しましょう。
何気に怖かったです…
しかし、こんな岩を登らずに南アルプスの展望を楽しみたいものですね。
ちなみに下からは木が邪魔して思うように見えません。
毛無山方面へ向かっても結局木々が邪魔で南アルプスは見えません…
位置的にいい感じの展望なのに勿体ないですね。
素晴らしい南アルプスの展望を堪能したら山頂はすぐそこです。


そして遂に毛無山山頂に到着です。
標高1946と書かれた標識が立てられ、正面には富士山が聳えています。
ちなみに展望は標識から右に下った所が一番よく、富士山と麓の朝霧高原がよく見えます。
山頂は広く景色を楽しめますが、標識の真後ろは木が生えているので、標識のバック越しに富士山を撮るのは難しいかもです。
標識から右に下った所からはご覧の通り富士山の絶景が見えます!
富士山は位置的に大沢崩れが正面になっているので、表面が荒々しくなっているのが分かります。
ここから富士山の真反対に杓子山が聳えており、あちらから見える富士山はまた違った表情が見られます。
ちなみに宝永山は反対側なのでここからは見えません。
拡大するとこんな感じ。
雪が被っていても大沢崩れの様子が一目瞭然ですね。
富士山頂から見下ろすと大沢崩れは複雑な岩が重なり合い、怖れを感じます。
さすがにあそこを登る事はできないので、ルートも開通されていません。
毛無山~最高地点まで
さて、毛無山は標高1946mですが、地図にはここよりさらに高い地点があるそうなので、もう少し先まで歩いてみましょう。
歩き出してから早々に最高な登山道になります。
歩行中は常に富士山を眺めながら歩ける大変素晴らしい尾根です。
ほんの数分で山頂のような広い空間に出ます。
恐らくここが最高地点(1964m)だと思うのですが、標識等は一切立てられていません。
毛無山山頂とほとんど変わらない景色ですが、こちらの方が視界が広く解放感があります。
他の外輪山や周囲の山々もよく見えるようになります。
微妙ですが田貫湖も見えました。
帰りに立ち寄りましたが、あそこから眺める富士山もよかったです。
九合目付近~地蔵峠
さて、再び分岐点に戻りました。
来た道を下るのもいいですが、せっかくなので地蔵峠経由でスタート地点に戻ろうと思います。
地蔵峠から下は川沿いを歩くらしく、崩壊箇所もあるそうなので、十分に気を付けましょう。また、通行禁止になる事もあるそうなので、事前にホームページ等で調べてから歩くようにしましょうね。
こちら側も最初は雪がまだ積もっていました。
しかしそこまで注意するような道ではなく、緩やかな下りなので問題ありません。


暫くすると雪も終わり、通常の道になりました。
ここから先は歩きやすい道が続きます。
途中、再び富士山の展望所に到着。
木々の隙間から富士山だけが見える展望所で、休憩にはぴったりです。
ここから地蔵峠まではひたすら下り道が続きます。
太陽もいい感じの登ってきて温もりが気持ちいいです。
3月のこの時期の登山は、朝方は寒く真冬のようですが、徐々に日が昇ってくると暖かくなり、時折春の訪れを肌で感じる事ができます。
そして何よりこの登山道は歩きやすく気温も適温だったので、非常に清々しかったです。
地蔵峠手前にも富士山の絶景ポイントがあります。
ちょうどここは静岡県との県境であり、下部温泉へ下る分岐点にもなっています。
しかし、毛無山からここまで歩いて来た尾根は常に山梨と静岡の県境だっだんですね。


そして地蔵峠に到着。
ここから麓まで一気に下り、途中は川沿いを歩くコースになります。
ちなみに地蔵峠から先にもルートは続いているらしく、地図で見るとバリエーションルートになり、熟達者向けになっているので、自身のある方のみ進んだ方が良さそうです。
地蔵峠~駐車場


さて、私は麓の駐車場に戻らなければならないので、麓へ向かいましょう。
出だしはいきなり急な下りで、道も細く途中ガレっぽい道になり慎重に進まなければなりません。
特段迷う事は無いと思いますが、実線ルートにしてはあまり歩かれていない様子の道です。
やはり大雨などの影響で時折通行止めになったりしているからでしょうか?
暫く進むと短いロープ場があり、ここを下ると地図の迷いマークの箇所に出ます。
地図には「下山時、ロープで支沢を下った後、わずか下方左手にルートあり」と書かれ、ロープを下ると、石と折れ枝が散乱した場所に出ます。確かにこれを見るとそのまま下ってしまいそうです。
地図を見て警戒したため周りをよく見ると、左前にテープがたくさん付けられている箇所がありますね。
アプリの地図でなければここが迷いポイントだと知らず、間違えてそのまま下ってしまいそう…
しかし、このテープだけでは分かりずらいのも事実です。
できれば看板などを立てて欲しいですね。
ここは〇と書かれた方向に進みます。
近づいてみると、テープがいっぱい付いていますね。
どうやらこの先が正解のルートなので、こちらを歩きましょう。
迷いポイントから10分くらいでこのような箇所に到着します。
冒頭でもお話したように、この山は金山として重宝された山であり、山中には今も遺構が存在しています。
このルートにも写真のような窯があるそうなので立ち寄ってみました。
苔や土で埋もれかかっていますが、今でも窯である事がはっきり分かります。
しかし麓ではなくそこそこ標高のあるこの場所に窯を造ったのは何か理由があるのでしょうか?
今は辛うじて窯と分かる姿ですが、年月が過ぎる度に自然に戻っていくのでしょう…


下りが続き、途中鬱蒼とした林の中に苔が綺麗な箇所がありました。
倒木や石に纏いつくように一面苔が広がっています。八ヶ岳や蓼科山の登山道もこのような苔アートの見れる登山道がありましたね!
光に照らされる苔は何とも美しい!
苔を抜けるといよいよ沢歩きが始まります。
この辺は増水時は注意しなければならない箇所です。
幸いにも数日雨が降らなかったので、この日は穏やかに流れていました。
一瞬迷いそうになりますが、所々ピンクのテープが取り付けられているので、迷う事はないと思います。
しかし、一歩間違えると迷いそうになるので油断は禁物ですね。
途中沢を渡る箇所もあり、上手く行かないと落ちてしまいそうな場所もあるので慎重に渡りましょう。
しかし、沢ですが、見事なエメラルドグリーンに輝き、渓谷を歩いているような感覚でした。
宝石のような美しさも感じますね。
美しい沢を越え暫く進むと途中、一瞬恐ろしく見える鎖場&ロープ場に到着しました。
最初見た時、ナニコレ!?と思い思考停止しましたが、冷静に見るとただの鎖場です。
しかしこの鎖場スケールが大きく、鎖、ロープの長さもそこそこです。
下った先のロープは岩に沿うように鎖が取り付けられています。
が、レベル的には全然なので、思った以上にすんなり進めます。
登り終え振り返るとこんな感じ。
しかし、まぁ最初に見た時はビビりましたが、通りすぎてしまえば何のことも無いただの鎖場でした…


その後は沢歩きと登山道が繰り返し現れます。
しかし、最初に見た看板に崩落個所があると書かれていましたが、一向にそのような箇所は見当たらず、危なそうな所は特にありませんね…
暫く歩くと、比丘尼(びくに)の滝という看板が立てられ、正面に立派な滝が現れます。
地図や看板には書かれていない、もはやシークレット的な滝ですね。
下まで降りて全体を眺める事もできます。
勢いがあり、なかなか見ごたえのある滝でした。
楽しい沢歩きを終えると再び雑木林の道に戻り、暫く歩くと分岐点に戻ります。
そして再び毛無山方面の登山道と地蔵峠方面の分岐点に到着しました。
ここからは来た道を歩き駐車場へ進みましょう。
毛無山のアクセス、駐車場
アクセス
新東名新富士ICまたは東名富士ICより車で約40分。
駐車場
駐車場は登山口入口に約15台ほどのスペースがあります。
料金は1日500円ですが、少し変わった支払い方なのでご紹介。
まず車を停めたら登山口入口手前にこのような手作りの料金所があります。


横のプラスティックのふたを開けるとこのような封筒が入っているので必要事項を記入し、500円を封筒の中に入れ、手前の唇のようなポストに入れます。
下山時には車のフロントのワイパーかリアワイパーに領収書が挟んであるので、管理人は定期的に駐車場を見に来ているようです。
私も下山時にはリアワイパーに領収書が挟んでありました。
時間に縛りは無く、基本24時間利用可能ですが、おつりは出るのか分からないので、極力この駐車場を利用する時はピッタリ500円を用意しましょう。
ちなみにトイレは駐車場から車で1分の所に綺麗なトイレがありました。
富士山の絶景を楽しみたい方へ
さて、今回は富士山の外輪山である毛無山を紹介しました。
毛無山は富士山の外輪山だけあって、富士山がよく見える山としても有名です。そんな富士山がよく見える山はまだまだたくさんあり、私が今まで登ってきた富士山周辺の山も大変素晴らしい富士山が見られました。
富士山は美しい成層火山で、360度どこから見ても秀麗な姿ですが、眺める場所によって微妙に違い、その違いを感じる事も楽しみの1つだと思います。
ほんの一部に過ぎませんが、富士山がよく見える山を4座ほど選んだのでこちらの記事もご参考にしてみてはいかがでしょうか。
最後に
富士山の外輪山の中で最も標高の高い毛無山は惜しくも2000mに届きませんが、富士山と南アルプスの景色は大変素晴らしく、外輪山の縦走登山のコースにしても楽しめると思います。
今回は麓の駐車場から毛無山山頂、帰りに地蔵峠を経由して戻る日帰りコースを選択しました。周回コースとは言え、どちらのコースも急登箇所があり、特に地蔵峠へ向かう沢コースは増水時は注意が必要です。
純粋に毛無山登山道をピストンするのもよいですが、沢沿いコースは滝や美しい渓谷も見られるので、毛無山を日帰りで登られる際はぜひ、周回コースを選択してみてはいかがでしょうか。