高知県は四国一大きく、雄大な太平洋を見渡せる県です。歴史的に見ても古刹や名刹が多く、特に室戸岬は真言宗の開祖である空海が修行で訪れた事で有名です。
今回の四国遠征は2泊3日の旅となり、石鎚山登山以外は初上陸である高知県を散策しました。
その中でも室戸岬は特に訪れたかった場所で、ジオパークはもちろん、歴史的建造物や一見変わった博物館など、下調べの段階で多数興味深い箇所が見つかったので、最終日は室戸岬を見学する事になりました。
今回も車を走らせ、開放感あふれる雄大な太平洋を眺めながら海岸線沿いをドライブし、いつものように寄りたい所を順に訪れる形で見学したので、見どころ満載な室戸岬の立ち寄りポイントや、あっ!と驚く光景を紹介したいと思います。
室戸岬とは
室戸岬は高知県の南東に位置する鋭角の地形を成す岬で、地図を見るとその鋭さがよく分かると思います。
室戸市全体がジオパークとなっているのは、室戸岬そのものが地震により隆起した土地であり、そのダイナミックな景観を間近で感じる事ができます。
また、1年を通して温暖な気候から亜熱帯性植物が多く見られ、先端の海岸沿いには多くの亜熱帯性樹林や海岸植物群落など、珍しい植物に出会えます。
日本地図を見ると分かるように、室戸岬は四国の端に位置し、高速道路も通っておらず国道55号の海岸沿いをひたすら走らなければ到着できない、まさに秘境と言っても過言ではない場所でもあります。
※オレンジの印をクリックすると、情報が表示されます。
吉良川まちなみ
室戸市吉良川町は室戸市の西部の海岸沿いに位置する町で、国指定重要伝統的建造物群保存地区にも選ばれています。
建造物は明治、大正時代のものが多く当時のままのまちなみが残され、歩くだけで心が和む風景です。
吉良川町は海沿いの町で、特に台風や豪雨の被害に遭いやすい地域なので、これらの対策のために様々な知恵が組み込まれた家を見る事ができます。
これは土佐漆喰と水切瓦
真っ白な漆喰は火災から守る為に厚塗りが可能で、きめ細かい仕上がりが特徴。また、それを守るように均一に水切瓦が取り付けられています。
町を歩いていると至る所に見られますが、よく見てみると微妙に違ったりして職人のこだわりが伝わってきます。
これもこの町の特徴である石垣です。
「いしぐろ」と呼ばれる石垣は暴風雨が多い吉良川町ならではの石垣で、独特な石の積まれ方が特徴です。
近くで見ると細かい石が地道に積み上げられているのが分かります。
石の種類も様々で、それぞれこだわりがあるようにも感じます。
以前にも重要伝統的建造物群はいくつか訪れ、どれも趣のある光景は共通ですが、細かく調べてみるととその地域というか環境に合わせた造りになっているのが分かります。
このような伝統建造物を見て一番関心するのは、厳しい自然環境にも関わらずそれらと対抗するのではなく、いかに自然と調和する造りになっている事ですね。
どの地域の伝統建造物を訪れても厳しい環境に対処する造りが主ですが、それと同時に心に和みを感じさせる姿に仕上げる事に日本人らしさを感じてしまいます。
無料駐車場は国道55号沿いにあります。
24時間使用可能な綺麗なトイレが完備され、保存地区も目の前にあるのでドライブで立ち寄る際はここに停めましょう。
ドライブにおすすめ、絶景ポイントの室戸スカイライン
室戸岬を車で訪れたらぜひ立ち寄ってほしい室戸スカイライン。
室戸スカイラインは隆起された半島の内陸を通る道路で、山頂展望台は室戸岬を360度見渡せるまさに絶景スポットです。
眺めは一級品で、海岸に目を向けると急崖がどこまでも続く様子や平坦な山並みである海岸段丘や何万年かけて海底から隆起した室戸岬の全貌を眺められるダイナミックな展望所。
室戸岬はV字に突き出た岬なので、東からは日の出、西には日の入りをそれぞれ眺められます。
ちょうど春分の日と秋分の日前後には、だるま太陽という、海水温と大気の温度差によって水平線から昇る太陽が8の字に見られる珍しい現象で、この時期に訪れるのがおすすめです。
また、全国に点在する恋人の聖地の一つにも選ばれ、壮大な海と荒々しい大地を目の当たりにしてみてはいかがでしょうか。
展望所にはもちろん駐車場が完備されていますが、そこには可愛い猫もたくさんいます。人馴れしているみたいで、近づいても逃げず懐いてくれました。
猫好きにはたまらないですね。
室戸岬の霊場、最御崎寺と御厨人窟
四国霊場第二十四番札所最御崎寺
最御崎寺は四国八十八ヶ所の寺院の一つで、室戸岬の最先端に位置するお寺です。
山号は室戸山
創建は空海が唐から戻り、再びこの地を訪れた時に虚空蔵菩薩を安置して始まったとされています。
最御崎寺を下った所に御厨人窟という洞窟がありますが、ここは空海が室戸岬に初めて来た時に籠って修行した場所と伝えられています。
現在の最御崎寺は海岸の高台に位置し、道路もきちんと整備された場所に建てられていますが、室戸岬は隆起し続けている場所なので、空海の時代はかなり断崖に建てられた寺ではないかと思います。
空海がこの地を訪れた時はもちろん現在のような道路は無く、海岸は断崖絶壁で空海も命がけでこの地を訪れたと想像できる。
また、寺の名前の最御崎寺(ほつみさき)の”ほ”は火という意味が込められ、火の岬として考えられていました。
空海が修行した御厨人窟では火を焚いて修行されたそうで、遠くから眺めると火の光が灯された岬である事から火つ岬、火の岬と言われ、灯台のような役割も果たしていた事からこのような名前になったそうです。
特段広い境内ではありませんが、本堂の他、大師堂、鐘楼堂、多宝塔など歴史を感じる建物があります。
鐘楼堂は1648年に竣工されたそうです。
よくお寺で見かける鐘楼堂とは違い二重の建物になっていますが、元はこのような造りが主流だったらしいです。
現在のように丸見えではなく隠すように建てられていた事から、鐘楼も神聖なものっだったのでしょうか?
その隣には本尊である虚空蔵菩薩がいらっしゃいました。
頭に宝冠、手には宝剣と宝珠と煌びやかな仏像です。
知恵と慈悲を無限に持ち、人々にご利益を与えてくれるそうで、密教の秘法によって通じれば理解力と記憶力も高まるという、なんとも嬉しいご利益です!
その為には死ぬほど辛い修行を行わなければならないそうですが…
本堂です
シンプルで質素な造りの本堂ですね。
真言宗なのでやはり修行を行う為の造りなのでしょうか?
この中に先ほどの虚空蔵菩薩が安置されています。しかしただ拝むだけではご利益は授からないんだろうな~って思いますが、少しでも近づいて手を合わせて拝みたいという気持ちでお参りしました。
境内散策後は50m先に灯台もあるので、そちらにも行かれてみてはいかがでしょうか。
【外部リンク】
御厨人窟
国道55号の室戸岬の先端付近を走ると途中、巨大な岩壁と二つの岩穴が確認できます。
ここは空海が修行した岩穴で、現在もそのままの姿であり続ける自然の史跡です。
全国には空海伝説が津々浦々広がっていますが、伝説が一人歩きした為か史実ではない事も多々あります。
そんな中、ここ室戸岬の御厨人窟は数々の山林修行を終え、四国に再び戻った空海が強烈に神秘体験をした場所で、しかもここでの修行中に自身の法名である「空海」が浮かび上がった場でもあります。
つまり御厨人窟は”もう一つの空海誕生の地”として掲げる偉大な場所なのです!
入口はご覧の通り大きな岩壁になり、そこにぽっかりと穴が二つ開いています。
左が御厨人窟で右が神明窟
現在の入口には落石からの安全確保の為、防護屋根が設けられており、安心して中に入ることが出来ます。
さて、まずは左の御厨人窟
こちらが恐らく空海が修行したとされている岩穴で、中は見事にぽっかりと空いた空間になっていて、奥には石で出来たお社が設置されています。
五所神社というお社で御祭神は大国主命
空海の修行の場なので仏さまが祀られていると思いきや、中は神社になっていました。
しかし、中は静寂にも関わらず、すぐ目の前にある波の音が豪快に聞こえるという不思議な感覚に見舞われる空間です。
恐らく波によって削られたと思いますが、洞窟は丸みを帯びた空間になり、入口から一直線に奥の社殿を照らす光がより一層神秘性を高めています。
この御厨人窟は洞窟内部から水が滲み出ているそうで、下を見ると確かに濡れており、カニもいました。
お隣は神明窟で、天照大神が祀られています。
こちらは狭く、奥行きも無いので比較的明るい空間になっています。
お社も小さくひっそりと祀られていました。
入口は天岩屋戸を思い起こす構造になっていて、まるでここが天照大御神が籠もったとされる岩屋戸のように感じます。
空海はこちらの穴でも修行したのでしょうか?
岩穴からはご覧の通り海が見えます。
室戸岬は隆起し続ける大地であり、御厨人窟は空海が生きていた時代より約5m程高くなったそうなので、空海の時代は今より更に海に近かったという事になります。
日々修行に励む空海は目の前の広大な空と海を眺め、ふと何かを感じ取って自分の法名は空海であると思い浮かんだのでしょう。
空海はこの場所で様々な神秘体験をしたらしく、多くの霊的存在を感知し、自然への畏怖をも強烈に感じ取ったそうです。
室戸岬はジオパークとしての一面もあり、世界に注目されたユネスコ世界ジオパークにも登録された日本を代表とするジオスポットです。
遥か1200年にこの地を訪れた空海は室戸岬の自然と僅かに変化する大地の鼓動を常々感じ取っていたからこそ、多くの神秘体験をここで体験できたのではないかと思います。
室戸岬は世界が注目する高品質のジオスポットである事は、空海の強烈な神秘体験も本物のように思えますね。
そう考えると空海は偉大な人物である事にも納得します。
空海の修行の地は御厨人窟以外にも点在しているので、興味がある方はそちらにも足を運んでみてはいかがでしょうか。
室戸岬の先端でジオパーク巡り
室戸岬の海岸は美しい砂浜ではなく、荒々しい岩が繰り広げられた光景です。
かつて海底だった所が地震の度に隆起し、波によって削られた事から多数の奇岩や怪岩更に多くの化石類を観察する事の出来る海岸です。
海岸を全て歩くことも可能ですが、所々駐車場があり、ゾーンごとに見所も分かれているので移動しながらサクッと見学する事をおすすめします。
基本的に道は整備されていますが、海に近づく場合は注意しながら進みましょう。
荒々しい岩だらけの中には名前の付けられた岩もあり、その中には修験道にちなんだ岩やご利益的を込められた岩など様々で、ジオスポットでありながら史跡としても楽しめる海岸です。
特にビシャゴ岩とエボシ岩は圧巻です!
共にマグマが地下で冷えて固まった斑れい岩で、隆起した後は波に削られた事により現在の姿になっています。
ビシャゴ岩は遠くから見ても目立ちますね!
まるで海に向かってアピールしているかのようにその存在を見せつけています。
室戸世界ジオパークセンター
海岸線沿いの国道55号を徳島方面へ走らせると、室戸世界ジオパークという大きな看板が見えてきます。
国内にジオパークは全部で46地域あり、その内9箇所がユネスコ世界ジオパークという更に高品質のジオパークとして選ばれています。
その9箇所のジオパークの中の1つが室戸なので、世界にも認められた貴重なジオパークである事が分かりますね。
館内は1階と2階に別れ、主に1階に展示物がまとめてあります。
綺麗な館内で、室戸の成り立ちや室戸という大地と人がこれまで歩んできた歴史、更に室戸の環境の中で培われてきた信仰や宗教など様々な視点で説明されています。
展示は文章のみではなく、分かりやすい図や展示物があり、実際に触れてみよう!コーナーなど、楽しく学ぶ事ができます。
入口の横にはジオショップとジオカフェがあり、特におすすめは真っ黒なジオソフト!
室戸岬の黒岩をイメージされたソフトで、土佐備長炭により黒色となり、更に室戸の海の塩によって甘さを引き立てられた、まさにジオソフトそのものです!
室戸世界ジオパークセンターではツアーの申し込みも行われており、様々なテーマのプログラムが用意されているので、興味のある方はツアーに申し込み、ガイドさんと共に学習するのも良いかもしれません。
【情報】
・開館時間:9:00~17:00
・入館料:無料
・駐車場:有(無料)
・住所:〒781-7101 室戸市室戸岬町1810-2
むろと廃校水族館
室戸世界ジオパークから更に北へ向かうと、廃校を利用した水族館があります。
テレビやネットで注目を受けるこのむろと廃校水族館は、廃校となった小学校を再び水族館として活用された観光スポットです。
地方にはこのような廃校を利用した施設がいくつかあり、それぞれ工夫されている施設が多く、私も今までに様々な廃校施設を訪れました。
さて、むろと廃校水族館は、室戸周辺の海の魚たちを展示する水族館ですが、おもしろいのはただ展示されているのではなく、所々学校ならではの場所を水槽にしてみたり、或いはこんな場所に!と驚かされるような工夫されているので、楽しみながら魚たちを鑑賞する事ができます。
廊下はズラリと本格的な水族館の造りになり、見た事の無い魚がいっぱいいます。
また、水族館以外にも懐かしい機材や楽器にも触れられたり、現役のまま残された教室もあるので、ゆっくり学校という雰囲気を味わう事もできます。
そして一番の見どころはやはりプールを利用した巨大水槽ですね。
残念ながら訪れた時はメンテナンス中で、魚たちが帰省されていたらしく、種類も少なかったです。
しかし、少ないながらも魚たちは元気にプールの中を泳いでいる様子が分かります。
カメもいました!
普段はサメも泳いでいるらしいですよ。
25mプールに海の魚たちが泳いでいるという衝撃の光景です。
つい数年前は子供たちが泳いでいたプールなのに、今は海の魚たちが完全にプールを支配していますね!
学校のプールなのに違和感がありません!
【情報】
・登下校:4~9月 9:00~18:00
10~3月 9:00~17:00
・入館料:大人600円(高校生以上)
:子供300円(小・中学生) ※未就学児は無料
・駐車場:有(無料)
・住所:〒781-7101 高知県室戸市室戸岬町533-2
【外部リンク】
海岸に聳える奇岩、夫婦岩
最後に海沿いを走っていると巨大な二つの岩が聳えているスポットに遭遇します。
二本の巨大な岩がまるで寄り添っているかのように見えるので恐らく夫婦岩と呼ばれたと思います。
三重県の二見浦にある夫婦岩に似ていますが、こちらの夫婦岩は荒波に打たれ、高さも圧倒的に大きくしかも間近に眺められるのがいいですね!
近づくとその大きさに圧倒されます!
あまりにも大きいので、夫婦と言うより巨大な門のように見えますね!
その先にはどこまでも広がる太平洋が見渡せます。
最初、注連縄に見えたのですが、どうやらこれはただのロープみたいですね。
ロープである事は間違いないのですが、やはりこれは注連縄を表しているのかどうかは分かりません。紙垂を付けられている様子もありません。
車を停められるスペースもあり、夫婦岩だけでなく今まで走ってきた海岸線や室戸岬の大地を目の当たりにする事もできます。
最後に
室戸岬は高知県の南東部の先端に位置し、車でのアプローチが困難ですが、世界のジオスポットに選ばれるほど貴重な自然環境を目の当たりにする事のできる観光地です。
また、ジオスポットだけでなく、室戸の自然環境を生かした建造物や産業など、これまで歩んできた室戸の文化や先人たちの知恵や工夫を知る事もできます。
更に四国は空海の誕生の地であり、様々な伝説や空海が修行された場所が多々ある中、ここ室戸岬も空海伝説の伝わる地とされ、史跡探訪として訪れるのもいいでしょう。
ぜひ、高知を訪れた際は室戸岬へ足を運んでみてはいかがですか。