京都の旅と言えばやはり寺社巡りでしょうか。
千年の都、京都には様々な寺社が鎮座し、多くの神仏が祀られ、日々崇敬者や観光客たちが訪れています。
さて、そんな神仏のサラダボウル、京都の中には”京のお伊勢さん”と呼ばれているお社が存在する事をご存知でしょうか?
お伊勢さんとは日本の総氏神である天照大神が祀られている伊勢神宮(正式名称は神宮)の事で、親しみを込めてお伊勢さんと呼ばれているそうです。
全国には神宮の御祭神である天照大神を主祭神とする神社が各地に神明社や、~神宮という名で鎮座され、今回紹介する日向大神宮も天照大神が祀られたお社の1つで、京のお伊勢さんと呼ばれています。
特にお社が伊勢神宮の造りである神明造で、まるで神宮の社殿をそのまま移動させたような立派な社殿です。
今回は京都のお伊勢さんで親しまれる日向大神宮の境内の様子と見どころと、最後にもう1つの京都のお伊勢さんである、京都大神宮も併せて紹介したいと思います。
日向大神宮のアクセス、駐車場
アクセス
最寄りの駅は地下鉄東西線「蹴上駅」で、徒歩約15分。
駐車場は完備されていますが、狭い道のりなので注意が必要です。
また、JR・京阪、地下鉄東西線「山科駅」及び京阪、地下鉄東西線「三条駅」から車で約10分。
住所:〒607-8491 京都府京都市山科区日ノ岡一切経谷町29
【公式サイト】
駐車場
神社の目の前に参拝者用の駐車場があります。
7、8台程度停められる駐車場です。
神宮そのもの!?日向大神宮の御社殿
駐車場から階段を登ると、まず最初に鳥居が見えます。
よく見ると鳥居上部に模様が見えますが、菊花紋章ではありませんね。
神宮の入口と言えば宇治橋ですが、日向大神宮には宇治橋のような橋は無く、ダイレクトに御社殿へと続きます。
早速鳥居を潜って境内へ進みましょう。
まず最初に、こちらは神楽殿でしょうか?
吹き抜けの社殿が建てられていました。
その向かい側には社務所があり、お守りやお札、もちろん御朱印も頒布されています。
さて、日向大神宮は本場の神宮の通り、内宮と外宮の御社殿があり、まず最初に外宮を参拝します。
神宮は内宮と外宮に別れ、まず始めに外宮から参拝する事になっています。
外宮から先に参拝するのは諸説ありますが、外宮に祀られているのは豊受大神という食物を司る神様で、天照大神の日々の食事も司っている尊い神様です。
この豊受大神は現在の兵庫県にある元伊勢と呼ばれる籠神社に祀られていた神で、伊勢に天照大神が遷された後に神宮へ呼ばれたそうです。
そのため籠神社は伊勢神宮の元という意味で元伊勢と名乗るようになりました。
しかし、豊受大神が祀られている籠神社は目の前が若狭湾で、海に由来する神様のイメージが強く、食物を司るというのは少し疑問も感じます。
籠神社は丹後国一宮で、丹後地方は”丹”という字が付いているので、かつては朱産地である事を示唆し、籠神社には天水分神という神も祀られています。
この水分という神は”みくまり”と読み、水を配分する農業神の他、みくまりが転じ、「みこもり」「身籠り」「子守り」に変化し安産や子育ての神様として信仰されています。
しかし、この水分とは本来、水銀を意味し、水銀は朱を熱する事で液体状化され、金属でありながら液体状に変化するので、まさに水と分かれる事から水分になったそうです。
その証拠にこの水分神社は朱産地に数多く分布し、籠神社周辺も丹後という丹(朱)の朱産地に位置するので、朱の神として移された事も考えられます。
というのも、伊勢は朱産地としても有名で、朱の鉱脈に鎮座されている事も関係あるのではないか?とも言われています。
内宮の天照大神は奈良の大神神社から移動し、外宮の豊受大神は丹後の籠神社から移動し、共に朱産地から遷された神なので、果たしてこれは偶然なのか?と少し違った視点で考える事もできると思います。
話がずれてしまいましたが、改めて日向大神宮の外宮を見てみましょう。
外宮はご覧の通り、立派な茅葺屋根の社殿になっており、本場の神宮の御社殿と変わらない風貌になっています。
拝殿の後ろに本殿が建てられ、まさに神宮の御社殿をそのまま縮小したような造りになっていますね。
神宮は式年遷宮という20年に一度、内宮と外宮の社殿を新しくし、御霊を遷す行事が1300年続いていますが、こちらの社殿は遷宮を行っているか分かりません。
しかし、ある程度の年数が経てば茅葺屋根の修繕等は行われていると思いますね。
外宮の御祭神は神宮と違い、天孫である瓊瓊杵尊が祀られています。
瓊瓊杵尊とは天照大神の孫にあたり、九州の高千穂に降りた神様として知られています。
高千穂は宮崎県に位置する高千穂峰と臼杵郡高千穂の二説ありますが、共に日向国に属し、日向大神宮の名前の通り、日向の瓊瓊杵尊が外宮に祀られています。
神社名が日向と書かれているので、内宮の天照大神よりも外宮に祀られている瓊瓊杵尊に重点を置いているのではないか?と疑問に思いますが…
また、神武天皇の東征も南九州の日向からスタートし大和で即位されたと伝われ、日向が天皇家のルーツである事も分かると思います。
さて、外宮の先には内宮があり、奥には本殿が見えますが、全体を眺める事はできません。
外宮に比べ拝殿が立派で、奥の本殿もやはり外宮より大きいと思います。
内宮には皇祖天照大神が祀られているため、迂闊には見せられないという事でしょうか?横から眺めても本殿全体は見えませんでした。
しかし、正面に立つと拝殿内はうす暗く、全てが人工物であるにもかかわらず、妙に神秘的な空間で、清々しく参拝すことができます。
また、内宮には天照大神の他、宗像三女も祀られています。
宗像三女とは天照大神とスサノオの誓約(うけい)の際に生まれた女神達で、海人族である宗像氏によって信仰された神々です。
そんな海の女神達が山奥に祀られているのも不思議です。
まぁ系図を見れば、宗像三女は天照大神の子供なので、一緒に祀られているのも納得はいくと思います。
日向大神宮の境内社
天の岩戸
さて、内宮から先には天の岩戸という、これまた興味深いスポットがありそうなので、早速進んでみましょう。
40m程進と天の岩戸というポイントに到着します。
巨大な岩に入口があり、明らかに人の手で掘られたような風貌の洞窟になっています。
上部には屋根のようなものも取り付けられていますが、これは何を意味するのでしょうか?
パッと見、小屋のような天の岩戸ですが、中に入ってみましょう。
中は真っ暗で、少し怖い感じになっています。
洞窟の中央辺りに開運厄除けの神と書かれ、岩の側面に神様が祀られていました。
残念ながら隠されて中は見えませんが、暗い中でこのような光景はとても神秘的。
どうやら、かわらけを奉納する事がこの神様に対する参拝の作法のようですね。
天の岩戸というスポットですが、どちらかと言うと胎内くぐりに近い感覚でした。
伊勢神宮遥拝所までトレッキング
日向大神宮の反対側には伊勢神宮遥拝所という場所もあるので、そちらも立ち寄ってみましょう。
10分くらいと書かれていますが、ここからは登山道を登っていく形になるので、足元に注意しながら進みましょう。
最初はひたすら階段です。
暫くすると分岐点に到着します。
標識を見ると、京都一周トレイルと書かれた標識がありますね。
どうやらここは京都一周トレイルのコースの一部のようです。
京都一周トレイルとは京都盆地周辺の山々を巡るトレッキングコースで、それぞれ地区ごとにコースが設定されています。
一気に駆け回るトレイルランから、日帰り登山として楽しめるコースなど様々な楽しみ方があり、京都の観光の1つとしてもおすすめです。
分岐点から遥拝所まで緩い坂道を2、3分かけて登ります。
そして伊勢神宮遥拝所のポイントに到着です。
遥拝所には立派な鳥居が建てられていて、恐らく鳥居の遥か先に神宮があるのだと思います。
鳥居は神宮仕様の神明鳥居で、周囲には玉垣も配置されていました。
ちなみに反対側は一部展望箇所がありますが、視界の狭い展望でした。
よく見ると、赤い大きな鳥居が見えますね。
実はもう1つある!?京のお伊勢さん、京都大神宮
さてさて、今回は京都における、京のお伊勢さんを紹介しましたが、実はもう1社紹介したい神社があります。
それは、京都大神宮というお宮です。
京都大神宮は京都市下京区の四条河原町の雑踏の多い商店街に鎮座するお社で、元々は神宮の布教機関として創建され、明治6年には内宮、外宮の神々が勧請され、京都大神宮になったそうです。
また、神前結婚式創始とされる東京大神宮と同じく京都大神宮も神前結婚式が有名で、実は神前結婚式の第1回目はここ、京都大神宮であり、神前結婚式発祥の地という事になります。
そして、京都大神宮の見どころはこれだけでなく、社殿一面に京都大神宮オリジナルのキャラクター、巫女さんが近年注目を浴びています。
何とも可愛らしい巫女さんのポスターを始め、授与所には数多くの巫女さんのキーホルダーやステッカー、ファイル、もちろんグッズだけでなく、巫女さんのお守りや交通ステッカーなども頒布されています。
毎年京都に旅に出ていますが、私は2年に1度京都大神宮に立ち寄り、参拝がてら巫女さんのポスターを眺め、お土産に巫女さんグッズや巫女さん授与品を受けています!
いつか、全てのグッズ、授与品を制覇したいものですね。
住所:〒600-8031 京都府京都市下京区貞安前之町622
アクセス:京都河原町駅から徒歩数分。駐車場は無いので、近くのコインパーキングに停車。
【公式サイト】
最後に
今回は京のお伊勢さん、日向大神宮を紹介しました。
神宮と同じく内宮と外宮が建立され、姿形も神宮そっくりな造りになり、本場の神宮を参拝しているような気分を味わえる神社でした。
境内には内宮、外宮の他、天の岩戸や神宮遥拝所など、見どころも多数あり、京都一周トレイルがてら参拝する事も可能です。
また、最後に紹介した京都大神宮も知る人ぞ知る京のお伊勢さんで、東京大神宮と縁のあるお社として鎮座されています。
多くの観光客で賑わいを見せる京都ですが、今回紹介した神社はゆっくり参拝できるので、ぜひ訪ねてみてはいかがでしょうか。