飯能は東京や首都圏からアクセスが良く、日帰りでも十分に楽しめる観光スポットが多い事で有名です。
少し山奥に行けば、ご当地アルプスである飯能アルプスや人気の棒ノ折山などハイキングコースも充実し、周囲には歴史を感じる寺社や史跡も多く、近年では新しい観光名所も次々に誕生し、都会の喧騒を忘れ癒しを求めたい方には非常におすすめです。
さて、そんな魅力のある飯能ですが、今回紹介するスポットは飯能の中でもあまり知られていないパワースポットで、到着までに多少の困難を有する場所ではありますが、実際に訪れると、見る者を圧倒する景観を成すスポットです。
今回はガイドブックやネットなどにもあまり詳しい情報の無い、超マイナーな飯能の不思議な鍾乳洞と山奥にひっそりと鎮座する寺社をそれぞれ紹介したいと思います。
巨大な岩壁!尾須沢鍾乳洞
さて、まず始めに紹介するのは、名栗湖のちょうど反対側に位置する尾須沢鍾乳洞です。
かつてはコウモリの生息地として知られていたそうですが、現在はその姿を見る事はできず、ただただ巨大な岩壁に大きな入口があるだけの、不気味な光景です。
果たしてこんな所に入っていいのだろうか?っと近づくにつれ、そんな事を思ってしまうほど迫力のある鍾乳洞です。
さわらびの湯の正面の県道53号の沿いに鍾乳洞入口という看板があり、奥に登山道が繋がっています。
道路に突如現れ、運転中だと見逃してしまう感じですね。
鍾乳洞までは少しばかり登山を強いられます。
登山道はありますが、あまり整備された様子は無く、迷うほどではありませんが、足場の悪い道が続いていきます。
登山がてら立ち寄る方は問題ないと思いますが、一般の方はしっかりとした靴で登るようにしましょう。
暫く歩くと、何やら巨大な岩壁が見えてきました!
どうやらあれが鍾乳洞のようですね。
最後の急登を登り終えると、そこには巨大な岩壁が出現し、下部を見ると、まるで地獄の入口かのような恐ろし穴が開いています!
かつてはコウモリが生息していたと書かれていた通り、中には無数のコウモリがいそうなオーラを放っています。
ちなみにこの尾須沢鍾乳洞は入口が3箇所あり、ちょうど大、中、小と大きさの違う入口が存在します。
では、まず始めに一番大きなこの穴から潜入しましょう。
入口はまだ明るいですが…
中を覗いてみると、漆黒の闇!
とてもじゃないですが、何かしらのライトが無ければ潜入は不可能に近いです。
この段階でかなり恐怖を感じますが、ここまで来て引き返すわけにはいきません!
幸いにも私は登山用のヘッドライトを持参しているので、中を照らすと奥まで様子が分かり、不自由なく進む事ができます。
入ってすぐに比較的広い場所というか、空間になっていてすぐに行き止まりになっていました。
入口からの距離は大体、20m前後ですかねぇ。
奥行きが長いように見えて意外に短い最初の入口ですが、見上げると鍾乳石があちらこちらに見られ、暗闇ですが神秘的に感じます。
下は濡れていて、水が奥から流れていました。
水が流れている方は岩壁になっていますが、実はよく見ると奥に続く道があるようで、岩をよじ登って行けば行けなくもない感じの道でした。
しかし、入口付近の看板には奥の方まで行かないでくださいと書かれていたので、悔しいですが奥には行きませんでした。
さて、1つ目の穴を探検し終えたので、次はもう1つの穴に向かいましょう。
奥の方を眺めると、巨大な岩壁が続いているのが分かりますね!
しかし、どうしてここだけ巨大な岩壁があるのか謎です…
数十メートル横に進むと、2つ目の穴があります。
入口の大きさは先ほどより少し小さいですが、こちらも不気味なオーラーを放っていますね…
でも、怖がらずにいざ潜入!
奥はどこまで続いているか?っと思いきや、意外にもこちらの穴は短く、先ほどのの半分くらいの距離になります。
そしてご覧の通り、こちらの穴の方が鍾乳石が美しく、まるで彫刻を眺めているようでした。
暗闇に照らされた鍾乳石は恐ろしい。しかし、それと同時に感動も芽生え、次第に恐怖心が薄れてくるという不思議な現象が起こります。なぜだろう?
実はこちらの穴も奥の方を照らすと、先が続いているように見え、恐らくはここから先も奥へ進めると思います。
しかし、人では到底進む事のできない穴なので、結局ここで断念です。
そしてラスト、3つ目の穴ですが、こちらは非常に小さく入口もご覧の通り、屈んで潜入するタイプの穴です。
中はこんな感じで、この穴はほふく前進しながらではないと進めない穴で、物凄く圧迫感があります。
こちらの穴も数メートル進んだところで狭まり奥まで進む事はできませんでした。
ギリギリ行けるところまで進み、限界の所までたどり着きました。
やはりまだ奥は続いている様子です。
さて、ここで引き返そうと体を反転したところ…
ふと、何故か湿布の臭いがしたように感じました。
もちろんこんな圧迫された空間には、私以外に人がいる事はまずないのですが…
ひょっとしたら誰か住みついている?
と、そんな怖い事を考えながらも入口付近にやってきましたが、入口の上を見上げると、なんともう一つの穴があるではないか!
どうやら入口が上下の2箇所あるそうですね。
これは上の穴から入れるのでしょうか?
ちなみに、洞窟の入口にはこのような石仏が安置されていました。
説明によると名栗地区最古の聖観音(寛文12年)で、貴重な石仏だそうです。
そう考えると、この鍾乳洞はかつての修行の地だったのではないか?と想像を膨らます事もできますね。
しかし、これ以外の石仏や祠は特に安置されていないので、撤去されたのかどうかは分かりません。
以上、尾須沢鍾乳洞に潜入しましたが、入口は大中小の3箇所あり、潜入可能な長さもそれに比例する距離でした。
洞窟は限られた距離で整備もされていませんが、短いながらも鍾乳石や独特な雰囲気の空間には驚きと感動を味わう事ができます。
かつてはコウモリの住処と言われていましたが、調査中は1体も確認できませんでしたので、そこのところは安心して潜入する事ができると思います。
鍾乳洞は一切の管理や整備もされていないので、入られる際はライトや靴などの装備品をしっかり確認し、入洞しましょう。
【基本情報】
アクセス:飯能駅、東飯能駅から飯01、飯02、飯03の路線バスに乗り、「河又名栗湖入口」で下車。(約40分)そこから歩いて数分で鍾乳洞入口に到着。
また、車の場合は名栗湖周辺の駐車場をご利用ください。
地図:
見事な懸造の社殿を持つ静之神社
飯能アルプスの子ノ権現天龍寺から麓へ向かう登山道の途中に静之神社は鎮座されています。
この神社は小床と呼ばれる集落の中に位置し、社殿は大きな岩壁に建てられた、いわゆる懸造建築のお社として鎮座されています。
集落の最奥に進むと、コンクリートの道から子ノ権現へ続く登山道へ変わり、ここから本格的な登山道になる分岐点に静之神社はあります。
赤い鳥居を潜り、正面の階段を登ると目の前には岩壁に建てられた静之神社の姿が現れます。
下から眺めると、どうやら岩窟のような場所に埋め込む形で社殿が建てられ、規模は小さいですが、立派な懸造の社殿です。
現存する懸造建築の中で一番古いのは鳥取県の三仏寺にある投入堂で、現在ではパワースポットとしても有名な史跡になっています。
懸造の特徴は急峻な岩場に密着するように建てられ、どこも人気のない山奥に鎮座されており、山岳修験者たちの修行の場である事が一目で分かると思います。
改めて社殿を眺めると、社殿というよりも、岩窟にねじ込まれたように建立された投入堂そのもので、一般的な神社ではなく、修行僧の祈りの場という雰囲気が漂います。
実はこの投入堂(社殿)は近くまで寄る事も可能なので、早速行ってみましょう。
手前に階段があり、岩を登る形になっていますが、簡単に登る事ができます。
登りきると、正面に末社でしょうか?
祠のようなものが安置されていました。
そして横を向くと静之神社の社殿が目の前に現れます。
横から眺めると、断崖に建てられている様子がよく分かります。
しかし、改めて見ると、どうしてこんな所に神社が!?ってなりますね。
中を覗くと小さなお社があり、どうやらここに神様が祀られているようです。
お社の後ろは窪みになっており、見事にフィットした形になっていました。
恐る恐る入ってみましたが、特に危険ではなく、床もしっかりしていました。
この懸造自体もそれほど古さは感じられず、むしろ比較的最近に改築されたようにも思える社殿です。
詳しい情報は分かりませんが、どうやら平成16年に修復されたそうで、新築寄付者の芳名板も掲げられていました。
山奥で人気のないひっそりとした神社ですが、集落の方々にとっては憩いの場所である事がよく分かります。
懸造建築は見る者を圧倒しますが、集落の方々の支えがあってこそ、このような立派で圧倒する社殿が維持できている事にも感動します。
さて、肝心の神様ですが、御祭神は罔像女神と五帝龍神
罔像女神(ミヅハノメ)は水の神として祀られた女神であり、その隣は龍神なので、こちらも水を司る神として祀られています。
しかし、このミヅハノメの神は実は後から祀られた可能性もあり、朱の女神である二ウズヒメの後にすり替えるように祀られる事例があるそうです。
というのも、この飯能エリアはマンガン鉱山があり、その周辺では朱が見つかる事が多く、かつては一大の朱産地であった可能性があります。
また、秩父では国内で初めて自然銅が発見され、和同開珎が作られた事は有名な話で、現在でも武甲山などで石灰石の採掘が行われるなど、首都圏最大の鉱山地帯である事が分かりますね。
更に、秩父地方には朱の女神二ウズヒメを祀る丹生神社が多く、この事からかつては朱産地として盛んであった事が予想できます。
御祭神がすり替えられたかどうかは分りませが、時代が経つに連れ、朱の採掘も尻つぼみになり、いつしか朱産地であったことも忘れられ、それと共に農業が盛んになり、水の恵みを得ようと、罔像女神を祀ったのかもしれません。
静之神社の近くには子ノ権現があり、山岳信仰そのものの寺院となっていて、恐らくこの周辺も山岳修験者によって開かれた箇所がいくつも存在し、この静之神社も岩窟に鎮座されているので、かつての修験者たちの祈りの場であった可能性もあります。
しかし、岩窟にすっぽりと覆われ、断崖に建てられた懸造建築は、そこに何が祀られているか分からなくても、見るだけで感動を与えてくれます!
この静之神社は子ノ権現へ続く登山道の途中にあり、登山で子ノ権現を目指す方にはぜひ立ち寄ってほしいパワー神社です。
【基本情報】
アクセス:西吾野駅から徒歩。
駐車場:無し
地図:
岩窟に吸い込まれる!?岩殿観音窟
さて、最後に紹介する岩殿観音窟は今までの中では一番訪れやすく知名度もそれなりにある寺院だと思います。
岩殿観音窟は吾野駅から歩いて行ける距離にあり、現場までは軽い登山を有しますが、比較的簡単にたどり着ける岩窟です。
吾野駅近くには曹洞宗の法光寺があり、どうやらこの法光寺の管理のもとに維持された観音院がこの岩殿観音窟だそうです。
岩窟の他にも爪書き不動尊や滝など、他にも見どころがありそうです。
駅から暫く歩くと、岩殿観音窟へ続く参道に差し掛かります。
ここから観音窟までは山道になるので注意しながら登りましょう。
途中、色あせた地図がありました。
岩殿観音窟の他、弘法の爪書き不動尊や宝生の滝など、見所もありそうです。
不動尊や滝は岩殿観音窟の手前にあるので、先にそちらの方へ行きましょう。
先に進むと踏み跡が少なく、しかも歩きにくい参道になっていきます。
辛うじて所々、南無岩殿観世音菩薩と書かれた赤い幟が掲げられているので迷う事は無いと思いますが、この辺りは足元に注意しましょう。
そして歩く事数分で弘法の爪書き不動尊と宝生の滝のポイントに到着です。
始めに弘法の爪書き不動尊に行きましょう。
爪書き不動尊はこの洞窟の中に彫られた磨崖仏の事で、弘法大師が一夜にして岩壁に仏を描いたという伝説です。
このような伝説は全国に伝えられているそうで、私も旅をしている途中にいくつかこのような弘法大師伝説を見たことがあります。
注意深く岩壁を眺めると、たしかに岩壁には不動明王らしき仏が描かれていますね。
左手には縄のようなものが持たれ、右手には剣を持たれているように見えるので、恐らく不動明王を表していると思われます。
洞窟の奥は行き止まりになっていました。
奥行きはそこまでありませんが、右の壁が石垣になっていて天井を支えるような造りになっていました。
少し不思議な造りになっていますが、これは人為的に作られた洞窟でしょうか?
さて、弘法の爪書き不動尊のすぐ隣には宝生の滝があります。
見上げるとそこには巨大な岩壁と、わずかではありますが水が流れ落ちていました。
滝というにはあまりにも水量が少なく、滝と言われない限り巨大な岩壁にしか見えません…
説明書きによると、現在は糸のような冷水が神秘深さを漂わせていると書かれていましたが、かつては水量が多かったという事でしょうか?
まぁ滝と言えば轟音を響かせ、畏れを感じさせる風貌を想像しますが、僅かな水量でひっそりと流れ落ちる滝も珍しく、これはこれで趣を感じますね。
滝を後にし、最後の坂を登りきると、目的の岩殿観音窟に到着します。
いかがでしょうか。これが岩殿観音窟ですが、ものの見事に堂宇が岩窟に吸い込まれるように密着しています。
先ほど紹介した静之神社の懸造と違い、こちらも迫力のある建造物ですね。
別の角度から眺めてもご覧の通り、堂宇と岩窟が絶妙な感じに融合している様子が分かります。
扉には武蔵野観音霊場第三十一番と書かれ、法光寺は武蔵野三十三観音霊場の1つである事が分かりますね。
観音霊場は全国津々浦々あり、その中でも観音霊場巡りというのも全国に多数存在し、北は北海道、南は鹿児島まであり、特に西国三十三所観音巡礼は有名です。
観世音菩薩は懸造建築に祀られている事が多く、それはつまり、山奥や岩窟、湧水等に安置されたそうで、特に法華経が浸透した平安時代以降は法華経をもって山奥で修行に励む修験者や聖が生まれ、次々に観世音菩薩が祀られ、このような観音霊場は誕生したそうです。
この岩殿観音窟は懸造ではありませんが、岩窟の中にひっそりと観世音菩薩が祀られ、現在に至るまで篤く崇敬されている事が肌で感じます。
堂宇を近くで見てみると、岩と建物の隙間が一切ない事が分かります。
まるで堂宇そのものが岩に吸収されているように見えなくもないですが、それよりも自然と人工物の一体化の方がしっくり来ると思います。
日本の宗教観は自然の中に神を見出し、いかに自然と共有する事を望んだ信仰で、山奥にある磐座や御神木、岩窟に祀られた神仏などを見ると、いかにも日本人らしさを感じてしまいます。
この岩殿観音窟もまさに、日本人のアイデンティティを感じられる史跡ではないでしょうか。
ちなみにこの岩殿観音窟は中に入る事も可能で、横の扉は開いているので自由に中に入って観音様を拝むことができるそうです。
私は最初、中に入る事はできないと思い、隙間から覗いて中の様子を伺っていましたが、吾野駅の正面にある茶屋のお店の人から、扉は自由に開け閉め可能で、誰でも中に入る事ができる事を知りました…
できれば現場に、「横の扉からご自由にお入りください」などの看板を立ててほしかったですねぇ。
実は岩殿観音窟の先にも道は続き、途中にはこのような橋もありました。
立入禁止とは書かれていませんが、少し強度の不安を感じさせる橋でした。
ちなみにこの橋の向こうは先ほどの宝生の滝の上部に繋がり、滝を上部から眺める事ができますが、水量が少ないので流れている様子は、はっきり分かりませんでした。
【基本情報】
アクセス:西武池袋線吾野駅から徒歩約30分
駐車場:無し
地図:
最後に
いかがでしょうか?
今回は飯能の知る人ぞ知る、パワースポットを紹介しました。
どれも山奥のひっそりとした場所で、道のりも険しく一筋縄ではいかないですが、実際に目の前にすると感動する事は間違いないので、ぜひとも現場でパワーを感じ取ってほしいです。
飯能は首都圏から近く、日帰りでも十分に楽しめるスポットが多い観光地です。定番巡りもいいですが、一味違ったパワースポット巡りを行いたい方にはぜひ、今回紹介した場所を旅のリストに入れてみてはいかがでしょうか。