素晴らしき日本の景色たち

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戸隠の秘境スポット!鬼女紅葉伝説の岩屋及び巌窟観音堂を訪れてみた!

戸隠山は信濃を代表する一大霊場として全国に知られ、山を見上げれば峨峨たる恐ろしい山容を成し、その光景から様々な伝説が生まれ、明治以前までは戸隠三千坊の修験道場として栄えたそうです。

明治以降は寺院から神社として変化しましたが、山中や霊窟には今でも当時の面影を感じられ、神秘的な霊山としても知られています。

さて、今回訪れた場所は戸隠の中でもかなりレアなスポットで、戸隠と言えば九頭龍伝説が有名ですが、戸隠には”鬼女紅葉”という鬼の伝説もあり、今回訪れたスポットはその鬼女紅葉が逃げ隠れた洞窟として知られる場所です。

また、洞窟の後は更に山奥へ進み、ここも鬼女紅葉伝説が伝えられている巌窟観音堂を訪れました。こちらの観音堂は山岳信仰でおなじみの懸造建築の堂宇で、特にこの観音堂は懸造りの中でも非常に珍しい造りを成す堂宇として懸造マニアの中でもレアなスポットとして認定されているそうです。

なので、今回は戸隠の秘境の洞窟とレアな懸造をまとめて紹介したいと思います。

鬼女紅葉の隠れと洞窟”鬼の岩屋”

この日は妙高山の隣の美しい黒姫山を登り、下山後に戸隠方面へ旅に出ました。

戸隠神社は全て訪れたので、今回は到達困難な戸隠の秘境巡りに行きたいと思い、始めに鬼女紅葉が隠れた岩屋を訪れます。

県道36号から国道406号へ抜ける山道をひたすら進んでいきます。

この道は非常に狭く、実は2箇所ばかり倒木にバッティングし、急きょ車を停めて自分で倒木をどかす作業を行いました…(疲れました)

道中の事はさておき、車を進めると隧道があり、ここを越えるといよいよ岩屋への道が始まります。龍虎隧道というらしい…何とも恐ろしい名前だ。

岩屋は歩いてほんの数分の所にあります。この隧道の横に数台停められるスペースがあるので、車はそこに停めて徒歩で進む形になります。

案内看板がありますので、そちらから進みましょう。

入口から少し登る感じですが、すぐに平坦な道になります。

歩いて5分と書かれていますが、実際は2分くらいで到着します。

そして、すぐに巨大な岩が見えてきます!

どうやらこれが岩屋のようですね。

岩屋は正面にぽっかりと空間があり、その上部にも何ヶ所か窪みがあります。

上部の窪みに入る事はできませんが、下の窪みは2ヶ所あり、これらは中に入る事ができます。

まず、手前の岩屋ですが、こちらは大きな窪みになっていて、中は巨大な空間になっています。

中には記念の木柱が建てられ、奥にはお社が鎮座されています。

何が祀られているのか分かりませんが、ひょっとしたら鬼女紅葉が祀られているのでしょうか?

ちなみに鬼女紅葉とは、戸隠に伝わる鬼伝説が結びついて発展したそうで、戸隠信仰の大本と言えば九頭龍権現が有名ですが、当初は九頭龍一尾鬼という”鬼”が始まりのようでです。その後は「太平記」などに鬼退治が語られ、その鬼も「戸隠の鬼」と書かれている事から、戸隠は鬼の住まう山岳地帯として名を馳せたそうです。

というのもやはり、戸隠山は見ての通り岩山で、いかにも鬼が棲んでいそうな雰囲気が漂い、誰もが畏れる姿を成しているために、鬼の棲む山として広まったそうです。

謡曲「紅葉狩」では、鹿狩りに出た平維茂が紅葉狩りと酒宴を楽しむ上臈たちに出会い、酒を勧められ酔いつぶれてしまい、鬼に化けた上臈たちに殺されそうになりましたが、観音様のお告げにより気づき、鬼退治をする話になっています。

この鬼が戸隠に出る鬼とされ、後に鬼女紅葉という伝承が誕生し、今でも語り継がれているそうです。つまり、よほど戸隠の鬼は畏れられている事が分かると思います。

しかし、恐ろしいイメージの鬼ですが、実は鬼は神と表裏一体で、鬼は元々”もの”と呼ばれていたそうです。日本人は物質(もの)に霊が宿るというアニミズム的思考を受け継ぎ、ものを大切にし、そこに神が宿ると信じてきた民族です。

よく、悪霊や怨念、妖怪の事を物の怪(もののけ)と言い、現在は化け物などマイナスのイメージで語られていますが、かつてはもの(鬼)も神と同じく神聖な立場であり、いつしか善と悪に分類され、鬼(もの)は悪の方へ分けられたそうです。

つまり、あまりイメージは湧かないと思いますが、鬼も本来は神様として考えられ、大切にされていた事は間違いありません。

少し余談になってしまいましたが、お隣の岩窟を見てみましょう。

隣の岩窟は小さいですが、奥まで続いているそうで物凄く興味深い岩窟になっています。

説明にも「奥に水あり」と書かれているので、確かめたいと思います。

正面から覗くとどこまで続いているかイマイチ分かりません。

奥行き15メートルとも書かれていましたが、それはこちらの岩窟でしょうか?

しかし、実際に中に入って見ると、数歩で最奥に到着します。

恐らく15メートルもないと思いますが、中はヒンヤリしていて涼しかったです。

奥にはお札と掛け軸?の跡があり、この場所で何らかの儀式が行われていた雰囲気がありました。

壁を注意して見ると、溝にもお札のようなもの置かれています。

水あり、と書かれているので、池のようなものがあるのかと思いきや、特に池はなく、その代わりに岩からは水が滴り落ちていました。

水あり!というのは嘘ではありません。

また、奥にはコップのような器も置かれ、そこには岩から滴る水が溜まっていました。

これはお供えなのか?それとも水を溜めるための器なのかは分かりませんが…

振り返ると入口が見えます。

外から眺めるより、中から外を眺める方が神秘的に見えます。

まるで岩屋戸のような神話の世界も感じられますね。

実は鬼の岩屋の先にも道は続き、岩屋のすぐ奥には鳥居が建てられています。

鳥居を潜ると、奥の岩屋という場所があるみたいですね!

地図に書いてなかったので、これは驚きです。

しかし、約25分と書かれ、行けなくもありませんが、時間に余裕がなかったので、今回はここで戻ろうと思います。

紅葉稲荷大明神とも書かれ、どうやら岩屋にはお稲荷様が祀られているようです。

鬼女紅葉伝説が語られる中、紅葉稲荷、しかも大明神として崇められているのは興味深いです。恐ろしいイメージの鬼女紅葉がなぜ神として崇敬されているのも気になりますし、これに関する由緒も知りたいですね。

と、そんなことを思いながら車へ戻りました。

珍しい懸造、巌窟観音堂

さて、鬼女紅葉伝説の次は懸造建築の巌窟観音堂へ行きましょう。

再び細い山道を進むと集落が見えてきます。

時折、集落を見渡せるポイントがあり、車を停めて眺めたりしながら進んでいきます。

それにしても見事に山に囲まれています。

ポツンと一軒家がありそうな、そんな雰囲気があります。

集落を進むと、巌窟観音堂の案内看板がちらほら見えてきますので、それに従って進みましょう。

しかし、近づくにつれ道はかなり細くなり、本当にこんな所と通っていいのか?と思うような道が続きます。

落ちたらヤバい!という箇所もあり、緊張が続きます。

そして、なんとか目的の巌窟観音堂手前に到着です。

観音堂入口には駐車スペースがあり、そこの車は停めましょう。

東屋が目印です。

道路は草で覆われ、もはや誰も通っていない道になっていますが、ご覧の通り、入口付近には巌窟観音堂の案内看板や説明書きの看板が立てられています。

しかもかなり綺麗で、保存会や委員会の方々の力によって維持されている様子が伝わります。

巌窟観音堂への入口です。

物凄く草で覆われていますが、ここを登ると目的の観音堂があるそうです。

登りはそこそこ急になっていて、まるで登山をしているみたいです。

しかし、歩いてほんの1、2分で目的の観音堂が見えています。

観音堂の手前には巨大な杉の木が立っていますね。

看板にも書いてありましたが、どうやらこの巨大な杉の木が大杉みたいです。

柵で囲まれていますが、近くから眺められそうになっています。

そして遂に山岳信仰ではお馴染みの懸造の堂宇に到着。

ものの見事に岩壁に観音堂が建てられ、迫力抜群です!

先ほどの大杉がこちら。

少し離れて撮りましたが、とても全体を収める事ができません…

観音堂の回廊からも全体を撮る事はできませんが、近くまで寄る事ができ、写真の通り物凄く太い杉の木である事が分かります。

木の樹齢は推定450年と書かれ、鬼女紅葉を倒した平維茂が植えたとして伝わっているそうです。

改めて観音堂を見てみましょう。

観音堂は岩壁に張り付くように建てられ、観音堂の下部に注目すると、石垣の上に何本もの木材が組まれているように見えますね。

近くで見ると、この木材、妙に曲がっており、船の底のような構造になっているの分かると思います。

懸造と言えば岩に向かって支える何本もの柱が特徴ですが、この観音堂は柱らしきものが見当たらず、皿の上に乗っかているような?不思議な光景です。

一般的な懸造と比較してもやはり、この観音堂は他の懸造とは違い、他に類を見ない構造である事は分かります。

この独特な木材の組み方はどこの建築技術なのか気になるところですね。

さて、回廊を歩いてみましょう。

横の階段から周囲を歩く事ができます。

大杉を横切り裏に周ると、観音堂が岩壁にのめり込んでいる様子がよく分かります。

崖にも観音様が安置されており、巨岩そのものが観音様のように感じます。

さて、次は観音堂の中に入ってみましょう。

観音堂の中は自由に出入り可能になっていますが、中に電気や明かりは無く、懐中電灯等を持参しなければきついです。

正面には賽銭箱と由緒の書かれた紙と観光案内の冊子が置かれています。

賽銭箱の奥には観音様が安置してあるお堂に繋がっているのでしょうか?物凄く漆黒な岩壁になっています。

奥を覗くと、大きな岩壁が目の前にあり、岩壁には扉のようなものが取り付けられています。恐らくあの中に観音様が安置されているのでしょうが、あそこまで行っていいのか分からず、ただ眺めるだけにしました。

周囲を見ると、中はきちんとした懸造の構造になっており、岩に柱が立てられています。

しかし、中は複雑な構造で、よくもまぁこんな所に堂宇を建てたものだと、感心してしまう。

拝殿は数人が並んでお参りできるくらいの空間になっています。

横にもスペースがあり、奥に進むと岩壁にあたります。

横に扉が付けられていますが、扉は開きませんでした。

そして、正面には絵馬が大量に奉納されていて、古いものでは天明6年(1786年)の絵馬があるみたいですが、残念ながら探すことはできず、確認できた中で一番古いのは文化5年の絵馬です。

絵馬は現在でも奉納され、デザインも様々ですが、中に奉納された絵馬はどれも馬の絵しかありません。

というのも、古くから馬は神様の乗り物とされ、本来は神社には生きた馬を奉納されていたそうで、本物の馬を奉納できない時は木彫りの馬や板に描かれた馬を奉納し、やがて現在の絵馬の形になりました。

絵馬は江戸時代から大正時代のものがあり、どれも馬のみ描かれていました。

さて、次は観音堂の隣にある小さなお社の所へ行きましょう。

あちらの岩壁もなかなか立派な姿になっていますね。

お社周辺には石仏が安置されています。

これらも観音様でしょうか?

この観音堂の観音様は実は先ほど訪れた鬼の岩屋の紅葉と関係があり、平維茂が鬼女紅葉討伐の際、観音様が鬼女の場所を維茂に教え見事討伐に成功し、この地に観音様を祀った事から始まったそうです。

ここから先には尾倉沢古道という登山道があり、時代と共に忘れ去られ荒廃していましたが近年復活され、今では鬼女紅葉伝説のある砂鉢山、荒倉山までの登山道も開通し、先ほど訪れた鬼の岩屋まで歩く事も可能になっています。

今回は時間の関係で訪れる事はできませんでしたが、機会があれば山も登ってみたいですね。

さて、巌窟観音堂を後にし、帰ろうと思いましたが、観音堂の手前にもお寺と神社があったので、そちらにも立ち寄ってみました。

観音堂から歩いて下る事もできましたが、車で正面まで来て参拝しました。

鳥居には妙見神社と書かれていますね。

参道は草で埋もれているので、隣の車が通った跡の付いた道を歩きます。

鬱蒼とした森の中にポツンと社殿が建てられ、まさに山の神社という感じのするお社です。

拝殿の扉は開けることはできましたが、閉じるのに苦労しました…

というか、閉まらなくて焦りました(^^;

奥には小さいながら本殿もあり、権現造の神社である事がわかりますね。

ちなみに神社の隣には妙見寺というお寺がありますが、巌窟観音堂はこの妙見寺の一部で、妙見寺は巌窟観音堂の前寺として建てられているそうです。

曹洞宗のお寺と書かれていますが、いかにも密教系のお寺なので気になるところです。

このように見ると、妙見神社もやはり山岳信仰としての神社である事が伺えますね。

当時は神前読経など行われていたのでしょうか?

鬼女紅葉の岩屋、巌窟観音堂のアクセス

鬼女紅葉の岩屋アクセス

 

上信越自動車道、須坂長野東ICから県道58号、国道18号、406号を通り、県道404号を戸隠方面へ走らせます。

紅葉の岩屋入口に駐車スペースがあります。

巌窟観音堂のアクセス

 

巌窟観音堂も鬼の岩屋と同じく須坂長野東ICから県道58号、国道18号、406号を通り、県道404号を戸隠方面へ走らせます。

途中、集落の中を進むので、注意しながら進みましょう。

こちらも入口近くに駐車スペース有り。

東屋の前に車を停めましょう。

戸隠のおすすめスポット

戸隠山へ登ろう

戸隠のシンボル的存在である戸隠山は全体が岩で構成された峨峨たる山容を成し、見る者を圧倒する存在で、その恐ろしい姿を一目見ようと多くの方々が戸隠へ来られています。

そんな畏れを成す岩山の戸隠山は登山可能ですが、岩山ということもあり難所が多く、特に蟻の戸渡は事故の多い危険地帯で、全体的に難易度の高い登山になっています。

戸隠山の登山は初心者向けではないので、ある程度鎖場や岩場に慣れてから挑戦してみましょう。

www.narisuba.com

戸隠神社

戸隠山の麓には戸隠神社があり、主に奥社、中社、宝光社の3社に分かれており、戸隠の地主神の他、天の岩屋戸伝説の神々が祀られ、神話の世界の神々に触れる事ができます。

もともと、九頭龍権現という地主神を祀る事から始まった戸隠信仰は、後に奥院として開かれ、更に宝光社、中院が開かれ、修験道の道場としても発展し、明治以降は戸隠寺から戸隠神社へと変わりましたが、修験道の霊場としての面影は強く、特に奥社へ続く参道や戸隠山の至る所に神威を感じる事ができると思います。

www.narisuba.com

最後に

戸隠の秘境スポット、鬼女紅葉の岩屋と巌窟観音堂は奥深い山奥に位置し、戸隠神社に比べアプローチが非常に困難で、一筋縄ではたどり着けないと思います。

今回紹介した岩屋と観音堂は戸隠に住み着く鬼女紅葉伝説の伝わる場所でもあり、山奥に突如現る荘厳な岩壁は、いかにも恐ろしい伝説が語られそうな姿を成し、誰もが圧倒される光景です。

戸隠は戸隠神社を始めパワースポットが多く、キャンプ場やスキー場、戸隠そばなど、他にも様々なスポットがあり、観光地としても大変賑わいを見せています。

定番の箇所もおすすめですが、一味違った戸隠を感じてみたい方は、今回紹介した鬼の岩屋や巌窟観音堂を訪れてみてはいかがでしょうか。