昨年の秋、平日に3連休をいただき紅葉を楽しもうと東北へ旅立ちました。
当初の予定では初日に秋田の太平山を登る予定でしたが、天気が優れないために急きょ再訪問である遠野を訪れ、一昨年見学出来なかったところを中心に巡る旅となりました。
遠野を知ったのは「ぬらりひょんの孫」という漫画を読んだ事がきっかけで、漫画の中にで描かれている遠野妖怪のキャラを気にいってしまい、遠野は妖怪が住まう場所である事を知り、興味が湧いたのでいつか訪れてみたいと思っていました。
元々妖怪やら魔物やら化け物に興味があり、幼いころ祖父からは誕生日に宜保愛子の心霊系の本をプレゼントされたり、一緒に心霊写真を眺めたりしていたので、知らない間にそういう系のものが好きになってしまったそうです…
化け物、魔物好きはさておき、今回は人と獣と妖怪が住まう、日本人の故郷と言われている遠野を2年越で訪れたので、遠野の美しい原風景や摩訶不思議なスポット、更に遠野の魅力やおすすめスポットを紹介したいと思います。
- 遠野物語の舞台となる遠野とは
- 遠野観光スポットその1【地図】
- 道の駅遠野風の丘
- 遠野インター周辺の史跡
- 見てビックリ!続石・泣石
- おしゃれなコンクリート橋!めがね橋
- 稲荷穴
- まるで牧場!?壮大な展望台の寺沢高原
- 遠野を一望できる大パノラマ!高清水展望台
- 最後に
遠野物語の舞台となる遠野とは
遠野は岩手県の中心部に位置し、山々に囲まれた盆地となり、かつては城下町として栄えていた町です。更に民俗学の生みの親である柳田國男が執筆した「遠野物語」の舞台にもなっています。
この遠野物語の魅力は“物語”といいながら遠野で起きた怪現象や事件が語られ、たとえそれがあり得ない話だろうと真実として捉える事の出来る今までにない新感覚な物語と言えます。
更に遠野物語の序文には“願わくは之を語りて平地人を戦慄せしめよ”と語られ、平地人とは恐らく都会に住まう人々を指し、柳田國男は、たとえ都市化が進み多くの人々がそこに住むようになっても古より培ってきた日本人の感性や伝統を忘れてはならない事を特に伝えたかったのではないかと思われます。
現在は観光地としての遠野というイメージがあり、看板には観光スポットの紹介やら多数掲示されていますが、町中から少し離れるとそこには今も昔も変わらぬ風景が目の前に広がり、日本人が守ってきた信仰や文化、大切なものを肌で感じられます。
また、遠野は京都のように広い盆地ではありませんが、狭い中に日本人の本来の姿や伝統が一気に凝縮されたまさに、日本の故郷に相応しい場所です。
遠野観光スポットその1【地図】
オレンジ色の印をクリックすると、写真と住所が表示されます。
道の駅遠野風の丘
遠野には道の駅が2つあり、そのうちの1つがこの「道の駅遠野風の丘」です。
遠野インターに近く、初めて訪れた方には特におすすめで、遠野の農産物の販売や郷土料理が食べられるレストランも完備され、どこへ行こうか迷っている人はぜひ立ち寄ってみて下さい。
また、この道の駅はトイレがもの凄く綺麗で、と言うよりもデザインが素晴らしい。
【情報】
遠野駅から車で約7分
営業時間:8:00~19:00(10月16日~3月31日は8:30~17:30)
レストラン:11:00~17:00(ラストオーダーは16:45)
休業日:年中無休
リンク:http://kazenooka.tonofurusato.jp/index.html
遠野インター周辺の史跡
遠野はそこまで大きくない盆地ですが、観光マップを眺めると端から端まで見どころが多く、1日の観光で全て訪れるのは厳しいと思います。
なので、まずはインターから一番近いおすすめスポットを3ヶ所紹介しましょう。
これらのスポットは密接しているので、歩きながら観光する事が可能です。
愛宕神社
インターを降りてすぐ右に曲がり、駅に続く道の途中に愛宕神社の石碑が見えるので、石碑前の駐車場に車を停めます。(無料)
階段を登り鳥居を潜ると趣のある木々がお出迎えします。
まるで修験道を思い起こす様な雰囲気を醸し出しています。
愛宕神社の御社殿に到着しました。
愛宕の神は防火・火伏せの神として“愛宕さん”の名で親しまれ、総本山は京都の西に位置し、東の比叡山と共に篤く信仰されている山です。
遠野の愛宕神社も防火・火伏せの神として崇敬されているらしく、遠野物語拾遺の第六十四話にもこのように語られています。
ある民家が火事にあった時、お寺の和尚が来て火を消したとされましたが、お寺の和尚はその事を知らなかったとの事でした。
村の人々はきっと愛宕の神様が和尚の姿に変えて火を消し、助けて下さったと伝えられています。
つまり、この愛宕さまも防火の神として崇敬され続けている事がわかります。
境内には山神の石碑が置かれています。
遠野物語の八十九話にも愛宕神社が紹介され、そこでは顔が真っ赤で目がぎらぎらと輝いた背の高い山の神に遭遇したと語られています。
愛宕山には本来天狗の住まう山として、更に火を弄ぶ恐ろしい存在だったそうなので、恐ろしい姿としての山の神が描かれたのではないかと個人的に思います。
本当に凄い縁結びの力!卯子酉様
さて、愛宕神社のすぐ隣にはこれまた強力なスポットがあるので紹介しましょう。
鳥居を潜ると何やら赤い帯のようなものが大量にぶら下がっています。
境内はさほど広くはありませんが、奥に卯子酉様を祀るお社と隣にも小さなお社、
鳥居入ってすぐ左にもお社がありました。
卯子酉様と書いて“うねどりさま”と読むそうです。
伝説は看板の通りで、どうやら卯子酉様は縁結びの神様として親しまれているそうです。
オシラサマやオクナイサマのように遠野らしい神様の呼び名が特徴ですね。
このような伝説から現代では恋愛の神様として多くのカップルが訪れるようになりました。
おまじないと言うか、ここでの恋愛成就のルールは1つ100円で受けるこの赤い布を左手だけで木に結ぶ事ができたら縁が結ばれるとの事です。
何故左手なのかは分かりませんが…(この神様はサウスポーか?)
サウスポーはともかく、卯子酉様がなぜ恋愛成就や縁結びに効くのか調べてみました。
その1つがこれ、桜の木に何故かモミジが生えています。
誰かが植えたでもなく自然にこのような現象が起こったそうです。
恐らく枝別れの所から生えているのかな?
しかし、私はこれよりもさらに凄い現象を見つけてしまいました!
それがこれ
ただの蜘蛛じゃんっと思うかもしれませんが、よく見ると真ん中の雌の周りに無数の雄が散らばっています。(赤い丸)
これは女郎蜘蛛という蜘蛛ですが、普段見かけるこの大きいのは雌で、その周囲にさり気なくくっついているのが実は雄なんです。
何が凄いかと言えばその雄の数で、普段私は女郎蜘蛛を発見するとまじまじ眺めたりお腹を触ってしまう癖があり、女郎蜘蛛は一匹につき大体1匹,か2匹(都会では2匹でも珍しい)くらいくっついているのをよく見かけます。
そして今回もふとさり気なく眺めていたら…なんと!6匹もの雄が寄り添っていました!
しかもこの蜘蛛の巣の隣の巣も6匹くっついていました。
田舎ではこれくらいが当り前なのか?と思い、先ほどの愛宕神社の中やその他の山など、旅の途中ありとあらゆる場所で女郎蜘蛛を観察しましたが、やはり卯子酉様の境内以外からはこれほどの数の雄が寄り添う巣は発見できませんでした。
桜の木から生えるモミジや逆ハーレムの女郎蜘蛛と言い、やはりこの卯子酉様には遠野物語拾遺に書かれている通り、本当に男女の縁を結び付ける力が働いているのかもしれませんね。
五百羅漢
愛宕神社から歩いて数分のところに五百羅漢入口があります。
暫くすると鬱蒼とした木々の中に突如苔に覆われた岩が散乱し、近づくとそこには羅漢像が描かれています。
これは約200年前に起きた天明の飢饉により亡くなった方々を供養するために大慈寺の義山和尚がこの山の自然石に羅漢像を彫ったものです。
石に近づくと一体一体気持ちを込められて彫られている事を感じます。
耳をこらすと、まるで飢饉で苦しみながら亡くなった方を慰めるように、石の中からさやさやと水の流れる音が聞こえてきます。
飢饉直後は恐らくこの場所で頻繁に供養が行われていたと思われますが、時が経つにつれ悲しい出来事も次第に忘れ去り、いつしかこのような苔に覆われた姿になったと思われます。
現在は観光スポットの史跡としてその姿を保ち続けていますが、静寂に包まれた森、苔に覆われた無数の羅漢像を目の前にすると、どこか寂しい雰囲気を肌で感じる事のできる不思議な空間でした。
【情報】
遠野駅から車で約5分
無料駐車場とトイレ有り
駐車場から徒歩で三ヶ所回れます。
見てビックリ!続石・泣石
道の駅遠野風の丘を西に進み、国道396号沿いに名所 続石と言う看板があります。
入口には鳥居が建てられ、続石はどうやらこの奥にあるみたいです。
ちなみにこのスポットには駐車場が完備されています。
鳥居の横に物語の内容が書かれています。
この続石は遠野物語拾遺の11話に登場し、武蔵坊弁慶が作ったと伝えられています。
そばの石は続石のすぐ隣にある泣石の事を指しています。
説明だけではよく分からないので、さっそく見に行きましょう!
どうですか、これが続石の全貌です。
続石とは上と下に岩が続くように重ねられた石で、個人的には石と言うよりは岩のように感じますね~
物語の通り、現在はこのように台石の上に笠石が乗っています。
これを弁慶が載せたと言うのだから相当な力の持ち主なんでしょうねw
真ん中は人が通れる程の隙間があり、意図的にこのように積まれたとも考えられなくはないと思いますが、この続石の真相はわからないままだそうです…
個人的には古墳?のように感じ、最初見た時あの有名な石舞台古墳を思い起こしてしまいました。
積み上げられた石の空間の先にはお社が見え、ひょっとしたら何かの祭祀場であった可能性も考えられるのではないでしょうか。
石段のような物も確認出来ます。
手前には弁慶の昼寝場という空間があり、先ほどの看板の絵のように続石を枕にして寝ていたのかもしれませんねw
ちなみにすぐ隣には自分の事を位の高い石と自負していた泣石が仁王立ちしています。
弱虫ながら間近で見るとその存在感は半端なく、確かに位の高い石と言っても過言ではないオーラを感じます。
木と木の間に挟まれている様にも見えますね。
私には木に挟まれ、苦しくて泣いているのでは?なんて想像しましたw
更に奥に進むと不動石という巨大石もあります。
こちらは石全体が苔や植物に覆われ、不動の石と言わんばかりの姿で、ただただ植物に覆われる事を受け入れているように感じます。
不動石はまさに“不動の心の持ち主”ですね。
【情報】
遠野駅から車で約15分、駐車場から徒歩10分で到着
無料駐車場、トイレ有り
おしゃれなコンクリート橋!めがね橋
遠野駅から西に向かい国道283号沿いを走行中、何やらおしゃれな橋が現れます。
正式名称は宮守川橋梁と言いますが、見ての通りめがねのレンズのような形からめがね橋と呼ばれるようになりました。
また、この橋は宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」の世界をイメージされているとも言われています。
場所はちょうど道の駅みやもりのすぐ隣に位置するので、車の場合はそちらに停めて見学しましょう。
更に、めがね橋は平成21年4月1日に恋人の聖地に登録され、半円アーチを描くユニークな姿がまるで物語の世界に引き込まれたように感じる事ができます。
ちなみに夜にはライトアップされ、深い闇に照らされた明かりが何とも幻想的な風景を描きます。
卯子酉様で縁結びのパワーをいただいた後は幻想的なめがね橋を眺め、素敵な遠野デートを楽しんでみてはいかがでしょうか?
【情報】
遠野駅から車で約25分
宮守駅から徒歩8分
道の駅みやもりに駐車場有り
稲荷穴
めがね橋から県道160号を北へ進むと辺り一面山と田畑が広がり、暫く原風景の中を走り続けると、稲荷穴というスポットに到着します。
駐車場は広く、大型バスも駐車可能な広さです。
入口には大きな鳥居が建てられています。
この先に稲荷穴があるので、早速行ってみましょう。
駐車場にある大きな鳥居を潜り暫くすると稲荷穴という看板があり、この鳥居を進むと稲荷神社があります。
階段を登ると立派な社殿があり、奥には稲荷穴という何やらちょっと怪しげな穴があります。
この穴は鍾乳洞となって奥行が700mもあり、中にはコウモリが生息しているとの事です。
中の方を覗くと奥からはヒンヤリとした空気と同時に綺麗な水が流れていました。
ちなみにこの稲荷穴から流れる水はいわての名水二十選に選ばれています。
行こうと思えば行けるんじゃないかと思いましたが、柵が取り付けられ中には入れないようです。
稲荷穴周辺は多くのわさび田がありますが、わさび作りには綺麗な水が欠かせないとよく耳にします。
恐らく村の人々はこの綺麗な水により多くのわさびを作らせていただいている事に感謝するために水神を祀ったと思われます。
正面には稲荷神社が建てられています。
現在の稲荷神社は主に商売繁盛の御利益として知られていますが、稲荷は“稲が成る”から神様が稲を荷っているイメージにより本来は農業の神として崇められてきました。
しかし、時代の流れにより農業中心から商業へ移行するに従い、稲荷は農耕神から商業の御利益ももたらす神となり、江戸時代には“伊勢屋稲荷に犬の糞”と言われるほど江戸には大勢の伊勢屋と道端には犬の糞、そして稲荷が多く祀られていました。
現在でもお稲荷さんと聞くと商売繁盛のイメージが強いかもしれませんが、ここの稲荷穴のお稲荷様は清らかな水が湧き出る近くに祀られている事から農業に恵みをもたらす神様として崇敬されている事が想像できます。
まさに、稲荷神の原型としての姿を感じる事のできる清々しいスポットです。
【情報】
遠野駅から車で約30分
無料駐車場、トイレ有り
まるで牧場!?壮大な展望台の寺沢高原
稲荷穴から更に山奥に進むと、寺沢高原という広々とした高原にたどり着きます。
広々とした高原にはご覧の通り牛が放牧され、間近に眺められる事ができ、まるで動物園に来たように感じます。
展望も素晴らしく、ポイントは2箇所あります。
1つは東屋があるこの地点で、ここからはなだらかな高原と山々を見渡せます。
そして、もう1つの展望ポイントはこのおしゃれな形の展望台です。
先ほどの東屋付近より標高が高く、こちらからは360度の大パノラマを楽しめます。
また、天気がよければ早池峰山や岩手山、他に有名な山々も見渡す事が出来るのもこの展望台のポイントです。
ご覧の通り展望台へ向かう道中、遮るものが一切なく、ドライブの最中も素晴らしい景色を堪能できるので、ドライブを楽しみたい方にも寺沢高原はおすすめです。
【情報】
遠野駅から車で約45分
駐車場は有りませんが、停められるスペース有り
遠野を一望できる大パノラマ!高清水展望台
高清水山は遠野駅から北西の位置に聳える標高798mの山で、山頂には展望台が設けてあります。
寺沢高原の展望に対し、この展望台は遠野市を一望でき、遠野は山々に囲まれた盆地である事がよく分かります。
展望台の前には車を停めるスペースがあります。
中はうす暗く、木造の展望台です。
展望台からはこのように遠野市を一望できます。
遠野物語の1話によると遠野はかつて山々に囲まれた大きな湖であったと語られ、遠野のトォーはアイヌ語で湖を意味するそうです。
そう考えると相当大きな湖であった事がよく分かりますね。
ちなみに、高清水展望台からはご覧のように夜景も眺めることが出来ます。
あまり知られていないようですが、夜には夜景スポットとしても楽しむことの出来るお得な展望台です。
有名な夜景スポットのようなロマンチックや華やかさに欠けると思いますが、今も原風景を保ち続ける遠野から放たれた町の明かりは何だか心が癒され、いつまでも眺めていたい夜景です。私はこの夜景を「遠野夜景」と名付けたいと思っています。
また、恋人と遠野デートを行なう際は、昼間に卯子酉様で恋愛成就を、そして夜にライトアップされた幻想的なめがね橋を眺め、最後にこの遠野夜景を堪能してみてはいかがでしょうか。
【情報】
遠野駅から車で約30分
無料駐車場有り
最後に
今回は遠野駅を中心に西側のスポットを中心に紹介しました。
遠野の観光スポットは遠野物語や遠野物語拾遺に登場する場所が多く、今回紹介しところのいくつかも物語にちなんだ場所でした。
素晴らしい展望から美しい原風景、縁結びや恋愛成就など幅広い世代が楽しむ事のでき、更に寺沢高原付近は視界も広くドライブには最適な道になっています。
遠野にはまだまだ見どころがたくさんあり、ここでは伝えきれないので、遠野観光その2の記事を近々作成しようと思います。