中央道大月IC付近を山梨方面へ走行中、視界に巨大な岩というか岩壁が出現する事をご存知でしょうか?
通る度にあれは何だ!と気になって調べたところ、大月市の観光名所並びに秀麗富嶽十二景の八番山頂に選ばれ、更に山梨百名山にも指定された岩殿山という山でした。
岩殿山は標高634mと低山ながらその容姿はまるで鎧を身に付けたような大きな岩で形成され、周りの山々を圧倒するほど存在感のある山です。
また、大月市の観光名所としても紹介され登山から観光まで幅広く、一年を通して多くの観光客で賑わう名所です。
今回は登山をメインに訪れましたが、登山道の途中にある岩殿城跡や史跡巡り更に周辺の観光名所も訪れたので、山頂からの秀麗な富士山の展望と共にお伝えしたいと思います。
岩殿山のアクセス、駐車場
アクセス
電車の場合はJR大月駅から徒歩15分で強瀬登山口、そこから更に20分で畑倉登山口に到着します。
車の場合は大月ICを降り、強瀬登山口の手前にある岩殿山公園市営駐車場に停める。
駐車場
駐車場は岩殿山の麓にある市営駐車場がおすすめ。
工事中でしたが、全体で12台停められます。もちろん無料です。
駐車場から畑倉登山口まで徒歩約20分かかります。
岩殿山とは
誰もが目に留まる雄姿溢れる岩殿山は9世紀末、天台宗の岩殿山円通寺によって開かれ、当初は修験道として栄えた山です。しかし戦国時代には山そのものを要塞とする岩殿城として戦略上の拠点となりそして廃城へ、その後再び寺院として栄えるも明治の神仏分離令により廃寺となり幕を閉じました。
現在は修験道や城として機能されていませんが、至る所に城跡やかつての行場の名残が見られ、岩殿山の栄枯盛衰を間近に感じる事の出来る史跡の山です。
また、岩殿山は”いわどのやま”と読み、山の表面には巨大な一枚岩である鏡岩や兜岩と呼ばれるように、力強い威厳のある岩の名称からそのような名前になったと思われます。
駐車場~畑倉登山口
市営駐車場から畑倉登山口まで国道139号を歩いていきます。
途中に強瀬登山口が二ヶ所ありますが、現在登山道の一部が崩落との事で通行止めとなり、残念ながら駐車場から一番遠い登山口まで歩かなければなりません。
ここが最短ルートの強瀬登山口ですが…ご覧の通り完全に封鎖されています。
丸山公園並びにふれあいの館に行くには反対側の臨時入口から入ってください。
一刻も早く元通りになる事を願います。
強瀬登山口のちょうど反対側に臨時登山口があります。
現在はこちらからふれあいの館まで続いています。
畑倉登山口までは地味な道路沿いを歩きます。すぐ隣は住宅街なので静かに歩きましょう。平日に登りましたが、車もよく通るので注意しながら進みましょうね。
途中、ん?どっち?ってなりましたがここは矢印の方に進みましょう。
右に下るとたぶん集落の方に行ってしまいます…
こちらが強瀬登山口のもう一つの方です。
七社権現までは行けるみたいですが、やはり山頂までは行けないそうです。
畑倉登山口までもう少し歩きましょう。
途中道路から集落を見下ろせます。
なんとのどかな景色だろう。
駐車場から約20分で畑倉登山口に到着です。
登山口は広いスペースがあり、車も停めれそうですが駐車場と書かれていないのでここまで歩くという事ですね。
ようやく登山が始まります!
畑倉登山口~岩殿山山頂と絶景
さて、登山口入口です。
入口には鬼の岩屋の看板と登山者カウンターのスイッチが置かれています。
登り始めて一分くらいで分岐点に差し掛かります。
行き止まりと書かれていますが、岩屋と書かれているのできっと洞窟か何かあるのではないかと思い、いきなり寄り道してみました!
何があるんでしょうか!
するとそこには大きな口を開けた洞窟のような岩屋がありました!
崩壊の恐れがあり進入禁止と書かれていた為、看板から眺めていただけですが、それにしても大きな岩壁ですね!岩壁の下部はぽっかりと開き、まるで異世界へ続く入口のような恐ろしさと神聖さの両方を感じ取れる場所です。
桃太郎伝説の地として、大月市周辺は至る所に桃太郎伝説のゆかりの場所が存在します。岩殿山は正面の九鬼山に住んでいた鬼が追い出され、岩殿山に棲みついたと伝えられています。
地図を見ると確かに百蔵山や犬目、鳥沢、猿橋など桃太郎に出てくる家来やキーワードを確認できますね。興味がある方は桃太郎伝説の地を訪ねたりするのも楽しそうですね。
先ほどの分岐点から今度は岩殿山方面へ向かいましょう!
ここから山頂までは登り一辺倒で、しかもそこそこ急な登りが待っているので焦らずゆっくり参りましょう。
正面の巨大な岩壁と違い、岩殿山の後ろは至って普通の登山道になっています。
出だしから鎖場や岩場を少し期待していたのですが…ごく一般的な登山道だったので、ここは黙々と坂を登るだけです。
山頂付近はご覧のようなジグザグの登山道です。
あと一歩が遠い…そんな感じの登山道。登山口から距離は短いのでそこまでバテませんが、じわり汗がにじみ出る坂道です。
汗をかきながらも、ようやく登り切りましたがどうやらここは展望所ではなく本丸跡のようですね。しかしどうやらここが岩殿山の最高地点なので、ここが山頂と言ってよいのだろうか?
最高地点は烽火台の跡地もあります。
敵の来襲に備え、最高峰であるこの本丸から常に監視していたんですね。タイムマシンがあったら是非当時の様子を見てみたいですね。
間から少し富士山が見えますね~
尚、現在は烽火台に代わりテレビ局の電波塔が建てられ、下界からもこの電波塔がよく見えます。
さて、富士山のビューポイントはここから5分と書かれていたので、早速参りましょう。この日は朝から快晴だったので、間違いなく最高の富士山が眺められると期待していました。
その後も至る所に城のなごりとなる箇所があります。
ここは倉屋敷跡と呼ばれ、武器や食料など生活品の貯蔵庫として建てられた跡みたいですね。ふと下を見ると何やら柱を切断されたようなものが多数転がり、苔で覆われていたのですが、まさか屋敷の残骸とかですかねぇ?
馬場跡
馬や兵士の訓練場との事で、ここが一番広い場所でした。
確かにここならキャッチボールも普通に出来そうな場所ですね。
そして遂に富士山の展望所に到着しました。
標高は先程の所より低い位置ですが、富士山の眺めはここが一番です。更に大月駅を中心に街並みも全て見渡すことの出来る、まさに絶景です!
しかもちょうど山と山の間の一直線上の先に富士山が見え、まるで我ら登山者に美しい富士山を眺めさせるために周りの山々が退いているように感じますw
雲一つない素晴らしい景色に出会えたことに感謝ですね!
ちなみに富士山以外にも山梨を代表とする山梨百名山もちらほら確認できます。
すぐ手前に元々鬼が棲みついていた九鬼山とその斜め右に高川山。
共に登山道も完備され、岩殿山と同じ秀麗富嶽十二景に選ばれた山ですね。
右奥の高い山は三ツ峠山ですね。拡大すると電波塔が確認できます。あちらからの富士山も大変すばらしい景色です。
下を見ると中央自動車道も見えますね。写真のちょうど真ん中ら辺が大月JCTだと思います。更に国道139号も確認できます。
南東方面も桂川を中心に眺めが良い。
展望所は広いスペースになっています。
ベンチも設けられているので、素晴らしい富士山を眺めながらゆっくり食事を楽しむことも可能です。更に奥には東屋もありました。
岩殿山の標識…
標高634m秀麗富嶽十二景八番山頂!とカッコよく書かれているのですが、さり気なくこの先↗って後から小さく付け加えられたのが何か虚しい…
確かにここは634m地点じゃないですよね~
しかもここは、展望所!っと自ら否定しているw
岩殿山山頂~核心部兜岩
くだらないツッコミはさておき、先へ進みましょう。
ここから先は暫く下りが進みます。
分岐点の先っちょはかつて修験者が通ったと思われるルートが残されていました。
現在は封鎖されていますが、ここから先は厳しい岩場であった事が想像できますね。
ここから下りが始まりますが、ここは揚城戸跡という自然の巨岩を用いた城門になっています。
自然ではなく自ら門として造られたのではないかと思わんばかりに見事な巨岩です。
核心部である兜岩までは下りが続き、特に危険箇所はありません。時折木々の間から富士山が顔を出すので、休憩がてら眺めるのもいいですね。
そして核心部の入口となる鎖場に到着です。岩殿山には兜岩を中心に鎖場東と西があるそうで、現在は兜岩が通行禁止の為、東の鎖のみ通る事ができます。
始めに肩慣らしの鎖
くぼみがしっかりしているので、ここは特に問題ありません。
登りきると何やら凄そうな鎖場に到着します。
見上げるとこんな感じ
鎖の他、足掛けがあるのでこれを上手く利用しましょう。
上から眺める
意外にもスタートの場所が狭く、後ろは崖になっているので注意しながら登りましょう。特に難易度は高くないので、焦らず確実に進んで行きましょう。
登りきると一安心
兜岩まであと少しです。
そして遂に核心部の兜岩に到着です。
ご覧の通り崩落のため通行禁止になっています。
覗いてみると細い岩道をトラバースし、その後鎖を登っていく感じになっていますね。
下は完全なる断崖絶壁になっていて先ほどの鎖場より高度感があります。確かにここは慎重に進んで行く必要があるみたいですね。しかし、崩落により進めないのは残念…
ただただ眺めているだけでした。
崩落の為、ここは迂回路を進むように指示されているのでこちらに参りましょう。
迂回路は急なロープ下りから始まります。
先ほどの山頂から兜岩までは太陽の光が当たり、自動車や街の音が常に聞こえていましたが迂回路に差し掛かった瞬間、雑音は無くなり、奥まった山を歩いているような静かな登山道に急遽変わります。
ほんの数分の迂回路を渡り、振り返ると岩殿山が見えますね。
こちらからは表面の鏡岩は見えませんが、それでも存在感のあるどっしりとした姿を確認できます。
兜岩~浅利登山口
兜岩を更に西へ進むと、天神山ともう一つの核心部である稚児落しが待っています。
天神山までは再び登りとなり、所々ロープ箇所もありますが特に危険を感じるような道ではないのでサクッと行きましょう。
天神山にはぽつんと祠があります。
そして、天神山から少し行ったところに何やら物凄い岩壁が出現します。ここがもう一つの核心部であり危険箇所の稚児落しです。
稚児とは赤ちゃんのことで、泣き止まない赤ちゃんをこの谷に投げ落とした事から稚児落しと呼ばれるようになったそうです。
危険と書かれていますが、崖沿いではなく内側も通れるようになっているので恐怖を感じたら内側を歩きましょう。
ちなみに私はせっかくなので崖ギリギリを歩いてみました…
柵もなくありのままのルートなので、渡る時は注意が必要です。
標高は決して高くないですが、覗くとかなりの高度感を感じます。
こんなところから落ちたら…まぁ助からないでしょうね…
見上げると物凄い岩壁になっています。
あちらまで崖沿いを歩いていきます。
先ほどの大きな岩壁から眺めるとやはり吸い込まれるような谷になっていますね。天気が良い時はしっかり見えますが、天気が良くない日やガスっている時は細心の注意が必要になるかもです。
稚児落しを過ぎると後はただひたすら下るだけです。
途中、左側が崖になっている箇所もありますが特に問題なく進めます。
浅利登山口周辺は住宅街になっていて、スタートの時のようにまた暫く住宅街を進んで行く形になります。
後は大月駅方面に進み元の駐車場へ戻るだけです。
岩殿山おすすめスポット
岩殿山周辺には数多くの見どころがあり、一年を通して楽しめるスポットも満載です。そんな中、ごく一部でありますが訪れてよかった場所を紹介します。
岩殿山ふれあいの館
強瀬ルート途中の丸山公園内に城をイメージした、ふれあい館という施設があります。1階と2階に別れ、それぞれ富士山の写真や岩殿城に関する資料などが展示されています。入館料は無料なので気軽に立ち寄れるスポットです。
また、2階からの景色も素晴らしく、桜のシーズンには満開の桜と富士山を楽しむことも可能なので立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
桃太郎伝説の一つ!日本三奇橋に選ばれた猿橋
先ほどお話した通り大月市には桃太郎伝説が伝わり、 桃太郎に関するキーワードの山や地名が数多く残され、この猿橋もその一つです。猿橋を見てみるとご覧のように橋の下部が奇妙に重なり合い、どうしてこうなった!と思えるくらい不思議な構造になっています。
この奇妙な構造から日本三奇橋の一つに選ばれ、更に橋の下には美しい渓谷美が広がり、橋と自然が見事に調和した素晴らしい光景を堪能できます。
また、猿橋は猿橋公園と隣接され、6月下旬から7月上旬にかけてあじさいが見頃を迎えるので、特にその時期に訪れるのがおすすめです。
その他大月市には多数の観光スポットがあります。
詳しく知りたい方は大月市観光協会のHPにお進み下さい。
【外部リンク】
最後に
岩殿山は標高は決して高くありませんが、富士山の眺めが素晴らしく登山道はハイキング程度から多少のスリルを味わえる、変化の富んだ登山を楽しむ事ができます。
また、首都圏から比較的近く駅の目の前に聳えているため、電車でも気軽に訪れる事ができると思います。
更に桃太郎伝説の地としても有名なので、登山後に桃太郎のゆかりの地を巡ってみてはいかがでしょうか。