地方では徐々に紅葉の見頃に近づく10月の中頃、この日は苗場山に登ろうと前夜車中泊で苗場山登山口に待機していたものの、当日の朝まさかの雨で登山を断念。
どこか見どころはないのかと、探しに探したところ、気になるスポットを発見!
それは湯沢町から更に長野寄りにある津南町のひっそりとした場所にあり、古くから龍神様として親しまれていた清らかな池で、龍ヶ窪という淡い緑色の神秘的な池です。
長野との県境、更に日本一長い川である信濃川付近に位置する龍ヶ窪は日照り続きでも枯れることなくコンコンと湧き、涸れる事のないこの池は古来より様々な伝説が語られており、現在も神域として保存され、日本名水百選の一つになっています。
今回は苗場山の代わりにその神秘的な淡い緑色の池である龍ヶ窪と池周辺のお社を訪れたので、紹介したいと思います。
龍ヶ窪のアクセス、駐車場
アクセス
関越自動車道「越後川口IC」又は「塩沢石打IC」から車で約60分
電車の場合はJR飯山線「津南駅」からタクシー
駐車場
龍ヶ窪入口に無料駐車場有り。
20~30台程度停められます。
奥には公衆便所も設置されています。(洋式)
龍ヶ窪入口~分岐点
駐車場の横に龍ヶ窪入口の看板があります。
実は入口は道路側と駐車場奥側の2箇所ありますが、どちらからでも行けます。
しかし、やたら看板が多くて目の付け所が…
それでは早速龍ヶ窪へ行きましょう。
参道入口と書かれている事から、やはりここが神域である事を感じさせてくれますね。
案の定、開始早々深い森の中という雰囲気が漂います。
かつては足場も無かったと思いますが、現在は歩きやすい歩道となり、しっかりと観光スポットの一つになっています。
暫くするとこのようなものが。
龍の口から止まる事の無く水が流れ出ていました。
龍ヶ窪から湧きだした水だろうが、近くの集落の方々が水を汲みに来ている様子も見られた。
駐車場に何台か停まっている車は恐らくこの水を汲みに来た方なのだろうと思いますね。それほどこの水は有難い存在である事が分かります。
龍の水場の先には、おや?綺麗な水が流れていますね!
写真でも分かるように滑らかな流れで、音も「ザ~」ではなく「サラサラ~」と優しく滑るように流れていました。
そして分岐点に到着。
スタートから歩いて5分くらいでしょうか。それほど遠くはありません。
ここはメインである龍ヶ窪と龍ヶ窪神社との分岐点です。
まずは先に龍ヶ窪と龍田宮へ向かいましょう。
と、その前に、分岐点には龍ヶ窪に関する伝説の内容が大きな看板に書かれていました。
伝説は4種類あるらしく、内容も様々。
上の伝説1、2は心温まるストーリですね。
まるで、まんが日本昔話のようなどこか教訓じみた内容で、素直な心を持ち自然の恵みに感謝する事で龍神は人々を助けてくれるという温かい内容です。
その一方、伝説3、4はミステリーかつ恐怖の内容で、人間の都合で自然に危害を与えるのではない!という戒めのメッセージが込められているように感じます。
バラエティーに富んだ伝説ですが、いずれにせよ我々人間は自然に生かされている事を決して忘れてはいけないという事を改めて思い知らせる内容ばかりです。
景勝地では美しい景観に見とれ、つい撮影に夢中になりがちですが、その美しい景観には古の人々たちの思いが込められている事も忘れずに訪れたいものですね。
分岐点から遊歩道入口へ
ここから龍ヶ窪まで森林浴を楽しみながら進んで行きます。
遊歩道は平坦で歩きやすく、ブナを始め様々な広葉樹が豊富な森林が広がり、歩くだけで癒される空間です。
10月ですが、まるで夏のように緑色の木々が続いていきます。
暫く歩き、ふと横を見ると、何やら緑色の池らしきものが見えてきます。
あれが龍ヶ窪でしょうか?
しかし、チラッと見えただけで、これはただならぬ光景である事を感じます。
息を呑むほど幻想的で淡い緑色に輝く龍ヶ窪の全景
そして正面に到着。
思った通り想像以上に幻想的で、見た瞬間「ここに何かいる…」と直感し、暫し正面から見つめました。
龍ヶ窪の色は淡い緑色で、鬱蒼とした木々の中にひっそりと光り輝くような神秘的な池です。
綺麗な緑色の水に感動するだけでなく、やはりここに何かいるのではないかという不思議な感覚が芽生え、先ほど龍神伝説の通り、本当にここに龍が潜んでいるのではないか?と本気で思ってしまうような沼というか池です。
以前にもこのような池や渓谷を訪ねましたが、それらに比べると感動というより怖いという感情が先に来ます。
同じ緑色でも渓谷のようなエメラルドグリーンではなく、神々しさを纏った緑色で、まさに神域といった表現がお似合いな池です。
しかし不思議なことに、近づくと緑色ではなく透明な池のように見え、緑色に見えるのはある程度離れた所からではないと見えないことが分かりました。
毎分30トン湧き出す池の水は1日で全て入れ替わるそうで、日照り続きでも涸れず濁りもしないそうです。
写真では透明度は分かりませんが、ものの見事にまるで鏡のように木々が映し出されています。
明鏡止水とはこのような光景か!と言わんばかりに一切の波も立っていません。
緑色の正体は何なのか、どうやら光の屈折によって引き起こしているのではなさそうで、木々の葉の反射によってなのか、或いは水中の苔の色か迷いましたが、どうやら水中の苔か何かの色だと思われます。
水深は1~2メートルとそれほど深い池ではありませんが、水中はどうなっているのかも気になります。
しかし、眺める場所を少し変えるだけで色が違うのも不思議な事で、やはりこのような幻想的な池には様々な伝説が付きものだと言うのも納得できますね。
池全体の観覧所はここだけなので、しっかりと目に焼き付けたい光景です。
龍田宮
さて、幻想的な池の先には龍田宮というお社と水源地があるそうなので、行ってみましょう。
遊歩道を抜けると、龍田宮へ下りが続きますが、反対側も気になったので進んで行くと…
鳥居がありました。
どうやら先ほどの道路に繋がっているそうで、こちらからも池には行けるみたいです。
下り終えるとそこには龍田宮というお社があり、手前には石でできた細く短い橋がありますね。
お社から先は道が無く、どうやらここで行き止まりのようです。
お社をよく見ると、正面には龍の彫刻が彫られていました。
やはりこのお社には龍神様が祀られているのでしょうか?
お社の隣には八大龍王大権現?のような文字が彫られた石碑があり、八大龍王はその名の通り龍神であり、龍神は水を司る神であります。
竜という字にさんずいが付いて滝という字になる事から理解できると思います。
その石碑のすぐ隣からはコンコンと水が溢れている様子が分かり、どうやらここが龍ヶ窪の水源地みたいですね。
湧き出る所は小さく、迫力のあるものではありませんが、ここからやがて大きな池を作り出すとなるとやはりこの場所が尊く、龍神を祀るのも納得いきます。
お社からは先程眺めた龍ヶ窪を再び眺める事ができますが、ここから見ると緑色ではなく、普通の池に見えます。
しかし、相変わらず波打つことも無く、鏡のような水面です。
ちなみに、ここからは池の中の様子がよく分かり、苔類がよく見えました。
しかしまぁ水が綺麗なことで、底まではっきり見えます。
龍ヶ窪神社
観覧所と水源地、龍田宮の後は再び分岐点に戻り、最後に龍ヶ窪神社へ行きましょう。
飲用水と書かれていますが、水場もあるそうです。
歩いて1分で水場に到着。
ここが水飲み場でしょうか?
水飲み場というより神社にある手水のように見えますね。
水飲み場の正面には御札処があり、中に神棚が設置され、手前には御札が頒布されています。
神棚が設置されているのは御札をこのように祀ってくださいという意味でしょうか?
そして、御札処の横の階段を上がると龍ヶ窪神社に到着します。
社殿は先ほどの龍田宮より大きく、こちらは正面の扉が開いていました。
社殿も一つで、拝殿は無く本殿のみの神社です。
ちなみに社殿の正面の先に池がありますが、ここからは見えません。
由緒を読むと、どうやらここに祀られているのは龍王大権現で、権現号が使われている事から神仏習合の神社です。
また、別当寺もあったそうで、現在は地図を見てもそのような寺は見当たらないので、廃寺か?或いは神仏分離令で取り壊されたかもしれませんが、実際はよく分かりません。
しかし、現在でも龍王大権現として祀られているので、神仏習合思想の根強い神社である事は分かりますね。
ひょっとしたら昔はこの一帯は禁足地だったかもしれません。
最後に
龍ヶ窪はその名の通り、龍が潜んでいそうな幻想的な池の窪みで、その淡い緑色は美しいよりも何か出てきそうな、少し恐怖を感じる不思議な池でした。
池の周囲には二つのお社があり、どちらも大切に祀られている様子が分かり、周辺の集落の人々が水を汲みに来る様子も見られ、龍ヶ窪は無くてはならない存在である事もよく分かります。
また、龍ヶ窪には数多くの伝説も語られ、その内容には考えさせる事もあり、これからの旅の教訓にもなりました。
今回の旅はまさかの雨により急遽登山を断念し、たまたま訪れた所になりましたが、雨によってこの場所を訪れた事は何だか龍神様に呼ばれたような不思議な感覚でした。
訪れる際にはぜひ龍ヶ窪の幻想的な淡い緑を間近で感じてみてはいかがでしょうか。