戸隠山は長野市の北部に位置し、独立峰ではなく北に高妻山、乙妻山と続くために、総じて戸隠連峰とも言われています。
鋸の歯のような荒々しい山容はかつて修験者達の修行の場であり、戸隠山三千坊と言われるほど霊験あらたかな聖地として発展しました。
現在は一般に開放された登山道もかつては命がけで入峰する程の危険を有する特徴を持っています。
今回はそんな歴史と伝統を兼ね備えた戸隠神社参道から奥社にかけて、戸隠山、九頭龍山、戸隠牧場経由で登りました。
八方睨までは鎖場の連続で、特に核心部の蟻の塔渡りは毎年滑落事故が発生するほどの危険地帯なので、渡る際の注意点や山頂からの素晴らしい大展望をお伝えしたいと思います。
- 戸隠山のアクセス、駐車場
- コースの紹介
- 奥社参道入口~随神門~戸隠神社奥社
- 戸隠神社奥社~蟻の塔渡り
- 核心部、蟻の塔渡りの注意事項
- 八方睨からの絶景
- 八方睨~不動避難小屋
- 不動避難小屋~戸隠キャンプ場
- ささやきの小径
- 戸隠山周辺の観光スポット
- まとめ
戸隠山のアクセス、駐車場
最寄りのインターは信濃町IC、須坂長野東IC、長野IC、更埴IC
一番近くておすすめは信濃町ICでインターから約30分。
その他のインターは約60分程度
電車の場合は長野駅から路線バスが出ています。
詳しくはアルピコ交通株式会社をご参考下さい。
駐車場
駐車場は正面の大鳥居横と大鳥居の向かいに有ります。
どちらも有料駐車場です。(平成30年10月現在)
駐車料金は一般車(普通・軽)は3時間まで600円、追加1時間毎に100円、1日最大1000円
バスその他は1日2200円
コースの紹介
奥社参道入口の大鳥居から奥社、八方睨を通り九頭龍山、戸隠牧場からはささやきの小径を経由し、奥社に戻るルートです。
歩行時間は7時間半くらいかかるので、早朝出発する事が望ましいです。
奥社参道入口~随神門~戸隠神社奥社
駐車場のすぐ隣に大鳥居が聳えています。
入り口が鳥居だと登山というより登拝のようです。
随神門まではひたすら一直線で、平坦な道のりです。
大鳥居から約20分で随神門に到着します。
茅葺屋根の随神門は神仏習合時代には仁王門と呼ばれ、かつては仁王像が安置されていたそうです。
ここからの杉並木が特に素晴らしいです。
随神門を通るとご覧のように、戸隠神社の見どころである杉並木が参道沿いに続いています。
荘厳な雰囲気を醸し出す杉並木は奥社手前まで続き、神域を歩いているという実感が湧いてきます。
随神門から20分で奥社に到着します。
秋にはこのように境内一面紅葉で彩られています。
奥社を参拝した後、いよいよ本格的な登山道に差し掛かります。
入り口は先ほどの大鳥居のような感じではなく、ごく普通の登山口ですが、
危険を知らせる文言が多く、緊張感が高まります。
気を引き締めて行きましょう!
戸隠神社奥社~蟻の塔渡り
入り口には注連縄が張られ、いかにも信仰の山だと感じます。
岩山でも、最初はこのように地味な登山道を登らなくてはなりません。
日帰りのため、急ぐ登山ですが、素晴らしい紅葉に何度も写真を撮ってしまいました。
しばらく進むと、何やら大きな岩が見えてきました。
鎖場の始まる余興でしょうか、岩が大きく削られた五十軒長屋を通り、
これまた大きく削られた百間長屋に到着します。
百間長屋を越えると、いよいよ鎖場に到着します。
ここからは容赦なく鎖場が連続するので、注意が必要です。
ここのトラバースが少し厄介でしたが、後は比較的楽しめる鎖場です。
その後もちょくちょく鎖場は続き…
恐らく鎖場の中では一番の難所だと思われる蟻の塔渡り直前の胸突岩に到着します。
ほぼ垂直で10mくらいの鎖です。
ホールドは豊富で比較的登りやすいのですが、次はどこに足をかけようか迷うと恐怖心が湧いてきますので、ここは迷わず自信を持って登った方が良いと思います。
核心部、蟻の塔渡りの注意事項
全ての鎖場を無事登り終えると、遂に核心部である蟻の塔渡りに到着します。
蟻の塔渡りは幅約50センチほどの岩稜が20m続くナイフリッジで、両側はスパッと300m切れている、戸隠山の最も有名な登山コースです。
かつては修験者のみが渡っていてであろうこの恐怖の塔渡りの注意点を写真と共に説明します。
最初の20mは幅50センチですが、実際はもっと長いように感じます。
道も特に滑りやすい箇所は無く、神経を集中していれば問題なく渡れるでしょう。
実はこの塔渡りにエスケープルートが存在していました!
開始直後に右側を見下ろすと、このような鎖がぶら下がり、崖に沿って鎖が繋がっているのが確認出来ます。
どうしても塔渡りが怖くて行けない人にはこちらのルートを使わざるを得ないようですが、実際にこの鎖を見ると道幅も狭く、見ての通り断崖絶壁をトラバースするような形であり、以前に登った石鎚山のエスケープとは違い、どう考えてもこれ、本当にエスケープ?って感じでした。
しかもこのエスケープでも滑落事故があったようで、個人的にあまりおすすめではないと思います。(あくまでも個人的です…)
さて、20mのナイフリッジを終え一安心もつかの間、すぐに超難関の刃渡りが待っています。
幅約20センチ(もっと細く感じました!)、距離3、4mくらいが救いですが、
直立で渡るのは余りにも危険な為、渡る際は”またいで渡る”、若しくは左側に若干石が飛び出ているのでそれを伝って、”トラバースで渡る”の2種類がベストだと思います。(右側はシャレにならないほど絶壁です)
私は“またいで渡る”を選択しました。
当り前ですが、何らかの物理攻撃が無い限り、この方法で行えば滑落する事は無いと思います。(最終的には恐怖心に勝てるかどうかです…)
刃渡りを終え、振り向いて写真を撮りました。
写真向かって右側の様子が分かります。
このコブ石を伝ってトラバースすると思いますが、やはり怖いです…
結局私には、またいで渡るしかなかったようです。
蟻の塔渡りの全体です。
とんでもない所を歩いてきた事が分かると思います。
恐怖の蟻の塔渡りを過ぎ、一安心したいところですが、すぐにチムニーが待ち構えています。
が、ここは特に危険な鎖ではないのでサクッと登れます。
八方睨からの絶景
核心部の蟻の塔渡りを終え、ここまで来れば一安心です。
八方睨は読んで字の如く四方八方見渡す事の出来るという意味で、北アルプスから中央、南アルプスまで素晴らしい絶景を仰ぐ事が出来ます。
北は戸隠連峰である高妻山が雄大に聳えています。
それにしても美しい山容ですね。
西側は北アルプスの山々がずらりと並んでいます。
アルプスマニアにはたまらない光景です。
肉眼でも確認できる槍ヶ岳をアップで!
拡大すると小槍もよく見えます。
北アルプスの白馬岳もよく見えます。
すぐ隣には熟達者向けの西岳が聳えています。
見るからに難易度の高そうな雰囲気を醸し出しています。
雲海も綺麗に眺める事が出来ます。
薄くて見えずらいですが、左奥には八ヶ岳?らしき姿が見えます。(自信ないです)
正面には飯縄山が聳えています。
標高は飯縄山の方が高いのですが、何故か低く見えます。
蟻の塔渡りの奥には戸隠の観光名所である鏡池が見えます。
麓では大きく見える池も山から見下ろせば小さく見えますね。
八方睨~不動避難小屋
今までの緊張感から解き放たれ、ここからは絶景を楽しみながら稜線を歩きましょう。
登山道も特に危険箇所は無く、軽いアップダウンが続くだけなので、気軽に歩く事が出来ますが、東側は断崖絶壁なのでそこだけ注意すればこれから先は問題ないです。
戸隠山に向かう途中、ここからも蟻の塔渡りの全貌が確認出来ます。
本当に人が蟻のように見えますね。
戸隠山に到着
相変わらず高妻山が目立ちます。
先ほどの八方睨と後ろには北アルプスの山々が整列しています。
八方睨は台形になっています。
途中にはちょっとヒヤッとする場面も登場します。
よそ見をせずに進みましょう。
何となく下を眺めると、何やら建物らしき建造物が見えました。
写真中央に写るのは恐らく奥社だと思われます。
今ここで手を振ったら下から見えるのでしょうか?
九頭龍山に近づいたのでしょうか、何やら巨大な岩が見えてきました。
そして九頭龍山に到着します。
ここまで意外に時間がかかりました。
標識の周辺は何人か座れるスペースがあり、ここでお昼を食べるのも良いかもしれません。
九頭龍山を越えると、先ほどまで見えなかった黒姫山の姿が現れます。
なだらかな山容に目を奪われます。
途中、ふと見たら、何と剣岳と立山も確認出来ました。
そしてついに、不動避難小屋に到着しました。
地図上ではそれほど距離はありませんが、ここまで長く感じました。
ここは戸隠牧場方面と高妻山方面の分岐点となり、戸隠牧場方面はひたすら下りになります。
不動避難小屋~戸隠キャンプ場
下りですが、ここからは川沿いを歩くコースになっているので、増水時は注意が必要です。
また、鎖場も登場するのでここから先も注意が必要です。
下ってすぐに帯岩という難所が待ち構えています。
鎖を伝い斜め左に下っていきますが、岩から水が流れ、天気が良くても常に濡れているので、しかも幅も狭く、意外に怖かったです。
トラバース中にふと下を覗きましたが、下が見えないくらい怖いです。
暫く進むとまた鎖場に出くわします。
難易度はそこまで高くないですが、沢沿いのため、慎重に渡りたいところです。
鎖場を終えるとここからは安心した道のりになります。
秋はご覧の通り、紅葉が素晴らしいです。
下りを終えると、広い戸隠牧場が見えてきます。
振り返ると勇敢に聳える戸隠山が姿を現します。
先ほどまであのてっぺんにいたんだなとしみじみ感じてしまいます。
ささやきの小径
車で訪れたために、駐車場まで戻らなければなりません。
道路沿いを歩くのが最短ですが、せっかくなのでささやきの小径を歩いてみました。
アップダウンも無く、ハイキング感覚で歩けるコースになっています。
尚、ささやきの小径は随神門まで繋がっているので、奥社に行きたい方はこの道を通る事をおすすめします。
戸隠山周辺の観光スポット
戸隠山周辺は登山の他、様々な観光スポットが点在しています。
その中でおすすめな箇所を紹介します。
鏡池
鏡池は雄大な戸隠山を鏡のように映し出す事からこのように名付けられ、多くの観光客で賑わっています。
荒々しい岩山と穏やかな池とのコントラストが美しく、特に秋は紅葉とのコラボが素晴らしいです。
奥社の駐車場から車で約15分くらいです。
また、紅葉シーズンの土日は交通規制があるので注意が必要です。
戸隠神社
戸隠神社は、奥社、九頭龍社、中社、宝光社、火之御子社の5社から成り立っています。
登山口には奥社、九頭龍社が鎮座しているので、登山前に訪れる事が可能です。
他も奥社から少し距離はありますが、各お社を巡り、御神威をお受けになってみてはいかがでしょうか。
とんくるりん(そば博物館)
戸隠といえば、日本三大そばの一つである戸隠そばが有名で、周辺にはあちこち戸隠そばの看板が見受けられ、何処に入ろうか迷うほど蕎麦屋が多いです。
こことんくるりんは、そば博物館として営業していますが、中ではそばを食べる事もでき、更に蕎麦打ち体験も出来るようになっています。
周辺の蕎麦屋はそば粉が無くなり次第店が閉まるそうですが、とんくるりんは午後5時まで営業しているので、戸隠そばを食べそびれた方にはおすすめのスポットです。
【公式サイト】戸隠そば博物館 とんくるりん
まとめ
戸隠山は修験者の修行の場として開かれた山なので、登山道は鎖場や刃渡りなど危険を有するところが多く、困難を生じますが、蟻の塔渡りという最大の難所を乗り越えた後に眺める大パノラマは誰もが心を洗われるに違いありません。
また、奥社から周回で登る際は思った以上に時間がかかるので、時間に余裕を持って登られた方が良いかと思います。
戸隠山周辺には観光スポットや見どころが多数ありますので、登山と合わせて行かれてみてはいかがでしょうか。