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桃川のおたきさま|村上市にある神秘の滝!畏敬と親しみの込められた「おたきさま」とは?

故郷の新発田市を訪れた7月、この日は時間に余裕があったので、村上市へドライブに出かけ、気になるスポット巡りをしました。

その中で一押しなのが”桃川のおたきさま”と言う、古くから篤い崇敬を受けられ、国道から眺める事も、更に徒歩数分でたどり着く事のできる滝です。

以前新潟の知る人ぞ知るおすすめスポットという記事を拝見し、「おたきさま」の何とも幻想的な雰囲気と、一般的な滝とは少し違う独特な構造が興味深かったので、村上市へ観光をする際に立ち寄ってみました。

今回は村上市の桃川という地区で古くから”おたきさま”の名で親しまれ、まるで洞窟の入口を塞ぐように流れ落ちる滝を紹介したいと思います。

桃川のおたきさまとは?

「おたきさま」と、古くから呼ばれるこの滝は新潟県村上市桃川地区の集落に位置し、山塊から流れ下ったこの場所で滝の景観を成し、「男滝」と「女滝」の二段の滝から成り立っています。この滝は二段目の滝となり、一段目の滝は更に山奥に存在しています。

滝の正面には現在、石祠が安置されていますが、かつてはこの場所に立派な社殿(多岐神社)が建立されていたらしく、その証拠に多岐神社の扁額が現存しています。

歴史を遡る事、平安時代には「延喜式神名帳」に「磐船群八座」の箇所に多岐神社と記載され、その多岐神社は桃川地区の多岐神社であるという伝承や確信が伝わっているそうです。つまり、この多岐神社こそ式内社であり、由緒あるお社という事になります。

また、中世には修験道の発展により、多岐神社も神仏習合思想の影響を受け、多くの山岳修験者たちの修行の場であった可能性も十分に考えられたそうです。

現在の「おたきさま」は社殿や石仏等は存在せず、石祠だけが残されていますが、岩壁の奥に豪快で美しい滝の姿は歴史を越え、今でも神々しさを保ち、神秘的な存在である事に変わりは無く、今でも「おたきさま」の名前として末永く親しまれている滝です。

また、新潟の名水にも指定され、村上市の観光スポットとして観光客を招いています。

おたきさまへの道のり

「おたきさま」へ向かう入口は国道290号沿いにあります。

何故だか分かりませんが、この駐車場、異様に大きく車は停め放題です。

入口の隣には木でできた鳥居が建てられ、中を覗くと目的の「おたきさま」を眺める事ができます。

どうやらここは遥拝所のようですね。

鳥居の先にはご覧の通り、「おたきさま」の全貌がはっきりと見えます。

鬱蒼とした木々の中からひっそりと流れ落ちるその姿に、この場所からでも神々しさを感じます。

さて、ここから歩いて数分なので、早速参りましょう。

ご覧の通り看板も綺麗で、しっかりと管理されている様子が分かります。

いきなり下りですが、階段状になっているので下りやすい道になっています。

下り終えると平らな道になり、川沿いを歩きます。

一箇所注意しなければならないのはここで、なぜか木が一本横たわっています。

が、特に危険を有する場所ではないので、ここは慎重に進みましょう。

ふと気づいたのですが、入口を下りこの道に差し掛かった瞬間、ヒヤッと肌で感じ、気温が一気に下がった気がしました。

駐車場辺りは蒸し暑かったのに、ここを歩いている時は一切の蒸し暑さを感じません。

不思議ですね…

川沿いを進むと、人工の滝が見えてきました。

人工滝の手前にはコンクリートの橋があり、そこを渡る必要があります。

真ん中に板の橋が架けられていますね…

少し怖そう。

横を見ると人工滝が豪快に流れ落ちています。

さて、この橋を渡ると目的の滝が見えてきます。

神秘の滝、おたきさまの全貌

そして遂に「おたきさま」と呼ばれる滝に到着しました。

由緒の通り、滝の手前には石祠が置かれ、奥の岩壁には滝が豪快に流れ落ちています。

滝の前方は広いスペースになっています。

入口からここまで大体5分程度で到着できます。

祠の周辺は平らで、確かにこの場所に何か建てられていた感じはあります。

現在はこの祠のみで、これが多岐神社との事です。

それでは改めて滝をじっくり眺めてみよう!

滝は高さが大体4、5mくらいでしょうか?そこまで大きくありませんが、水量と滝幅がそこそこあり、豪快さも感じます。

この滝の特徴はU字の岩壁の中心から流れ落ち、一般的に見られる滝とは違う構造になっています。

大体滝って平面の壁に沿って流れ落ちるものを想像しますね?

岩壁はびっしりと苔で覆われ、常に湿った状態になっています。

また、洞窟の入口のような構造にもなっていて、実は滝の奥に道が続いているのではないかと想像してしまいます。

滝壺にも近くに行こうと思えば行けますが、やはり豪快に流れ落ちる滝を前にすると近づくのは困難です。

というか怖いです…

下から見上げるとこんな感じ。

両サイドが壁になり、奥に行くにつれ狭くなっているので、圧迫感も感じ更に迫力さが伝わると思います。

手を出せば滝に触れることも可能なくらい近いです。

ふと右の壁を見ると…

おや?なぜかここにぽっかりと穴が開いていますね!

よく見るとこれはどうやら人為的に掘られた穴だと思います。

先ほどお話しした通り、この多岐神社は中世に修験道の影響も受けていたと考えられます。ひょっとしたらこの空洞にはかつて不動明王や石仏が安置され、滝周辺には修行に励む修験者たちの姿も見られたかもしれませんね。

ただ、桃川地区も周囲を見渡すと一面田んぼで、古くから今に至るまで稲作が盛んである事は一目瞭然です。

この滝も「おたきさま」と呼ばれている事から、やはり農業用水の恵みとしての感謝の方が強いのではないかと個人的に感じます。

岩壁の穴の斜め前には現在の多岐神社である祠が置かれています。

祠は苔に覆われていますが、お供え物があるので今でも参拝が続いていると思います。

しかし、ここに社殿が建てられていたという事は、かつてはこの場所で素朴な水源祭祀や雨乞いなどが行われていたのではないかと想像してしまいます。

ちなみに、豪快に流れ落ちた水は先ほど歩いた遊歩道沿いに流れて行く様子が分かります。

水の流れは穏やかでした。

「おたきさま」は大きさ自体はそれほどでもない滝ですが、あまり類を見ない構造となっているので、見れば見るほど不思議に思え、それ故に神秘さも増し、見る人を感動させる滝ではないかと思います。

桃川のおたきさまのアクセス、駐車場

アクセス

 

日本海東北自動車道「神林岩船港IC」から車で約10分。

国道290号沿いに駐車場有り。

駐車場

駐車場はかなり大きく、大型バスも余裕で停められる広さです。

村上市のおすすめ秘境神社

もう一つの多岐神社

実は岩船郡にはもう一つの多岐神社があり、しかもその神社にも豪快に流れ落ちる滝が存在しています。

その神社は村上市の中心部から国道345号沿いを笹川流れ方面に向かう途中にあり、ある意味この神社も、なんでここに神社が!?という秘境感溢れる神社です。

また、看板の通り源義経がこの神社に立ち寄り、神社から眺める景色に感銘を受けたと伝わっています。

神社名が多岐神社となっているのは、実は滝ではなく、宗像三女の一柱である多岐都比売命を祭っているからだそうで、宗像三女は海の神である事からこの地に鎮座しているのも納得できると思います。

つまり、多岐神社は滝があるから多岐神社ではないという事も分かりますね。

そして、この神社に到達するまでの参道が意外にスリルで、ご覧の通りわずかな幅の道を通って行きます。

すぐ横が海になっているので、渡るときは注意しながら進みましょう。

こちらの多岐神社にもこのような豪快に流れ落ちる滝があります。

滝の横には不動明王も安置され、こちらの滝はかつて修験道による影響を受けていたのかもしれませんね。

しかし、由緒にはなんと、延喜式に載っている多岐神社はここだ!と書かれ、先ほど紹介した桃川の多岐神社と同じことが書かれていました…

果たしてどちらが延喜式に載っている多岐神社なのかは分かりませんが、いずれにせよどちらかが先に鎮座し、後に分霊を勧請された事に間違いないと思います。

ちなみに桃川の多岐神社の御祭神もこの多岐都比売命です。

漆山神社(矢葺明神)

最後にもう一つ村上市にある秘境感たっぷりの神社を紹介します。

村上市の北部に位置する漆山神社、またの名を矢葺明神と呼ばれるこの神社は、国道7号の朝日トンネル手前から細い山道を登っていくとたどり着きます。

旧出羽街道という芭蕉が歩いた歴史ある街道沿いにある漆山神社は背後に巨大な岩をご神体とする、まさに磐座信仰そのものを感じる事のできる神社で、見る人を圧倒する景観を成しています。

創建は和同五年と、村上の中でも羽黒神社に次いで最古の神社として鎮座し、古来から周辺には漆樹の自生が多い事から漆山神社と名付けられたそうです。

矢葺明神と称されるこの磐座はカメラに収まらないほど巨大で、このまま飲み込まれてしまうのではないか?と思うほど畏れを感じます…

また、磐座の前にはこぢんまりとした社殿と、鳥居、石灯籠がありますが、どれも苔に覆われ日中にもかかわらず、辺りはうす暗く、神聖さと畏怖の念が同時に感じ、まさに神の宿る地であります。

神社の入口には旧出羽街道の詳しいルートマップが立てられています。

漆山神社から先も道は続いているので、興味のある方は芭蕉も歩いた歴史ある街道を歩いてみてはいかがでしょうか。

ちなみにマップを見ると、最後の方に日本国と言う山がありますね。

こちらは以前に登った事のある山なので、興味のある方はこちらの記事をご覧ください↓

www.narisuba.com

最後に

「おたきさま」は、村上市の桃川地区で古くから稲作における命の水として篤く崇敬され、親しみを込めて「おたきさま」と呼ばれるようになり、日本を代表する滝ではありませんが、地元で愛されるローカルな滝です。

滝そのものはそこまで大きくはないものの、洞窟の入口を塞ぐような景観を成し、一般的な滝とは違う独特な雰囲気を漂わせる滝の姿が非常に魅力的なので、ぜひ間近で眺める事をおすすめします。

また、国道沿いの駐車場から歩いて5,6分でたどり着けるので、気軽に立ち寄る事も、駐車場の遥拝所から眺める事も可能です。

今回は村上市の秘境の滝である「おたきさま」を紹介しましたが、最後の方に紹介した村上市の秘境神社も素晴らしい史跡なので、同時に立ち寄ってみてはいかがでしょうか。